オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
トム・ハーディが車の中で電話応対するシーンだけで劇終を迎えるワンシチュエーションムービー。撮影の仕方とか脚本を練りこんでいるからか、飽きずに最後まで鑑賞できるところはすごい。ネタバレあり。
―2015年公開 英=米 86分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:夜のハイウェイを舞台に、一人の男の86分間の出来事を車中で交わされる電話の会話だけで描くワンシチュエーション・サスペンス。監督・脚本は「ハミングバード」のスティーヴン・ナイト。出演は「ダークナイト ライジング」のトム・ハーディ。電話の声を「ローン・レンジャー」のルース・ウィルソン、「思秋期」のオリヴィア・コールマンらが担当する。(KINENOTE)
あらすじ:その夜、建築現場監督としてキャリアを積み上げてきた建設会社のエリート社員、アイヴァン・ロック(トム・ハーディ)は、妻カトリーナ(声:ルース・ウィルソン)と二人の息子たちが待つ自宅へと愛車BMWを走らせていた。翌朝は現場で重要な作業を控え、キャリアの中でも最高の瞬間になるはずだった。だが、一本の電話が彼に人生の全てを賭ける決断を迫る。しばらく考えを巡らせたアイヴァンは、自宅から遠く離れたロンドンへと連なるハイウェイにハンドルを切った……。そんな中、アイヴァンのもとにはひっきりなしに電話がかかってくる。上司のガレス、現場作業員のドナル、カトリーナ、子供たち、そして過去にアイヴァンと関係を持ったベッサン(声:オリヴィア・コールマン)……。ロンドンが近づくにつれ、アイヴァンを取り巻く状況は公私共に悪化の一途を辿っていくが……。(KINENOTE)
監督・脚本:スティーブン・ナイト
出演:トム・ハーディ
ネタバレ感想
飽きずに最後まで観られるけども、トムハーディ扮するロック氏の人間性について嫌悪を感じちゃうとつまらないと思っちゃうかも。
一回の浮気が身の破滅を呼んだ点については同情しなくもないが、そもそも何でああいう結末に至ったかと言えば、それは彼の性分によるところが大きいわけで、そんな彼の決断に理解ができない人もいるかも。だって、浮気した相手の出産に立ち会おうとしなければよかっただけなので。
でも、彼はそれをするのだ。なぜそんなことするかというと、親父のような人間になりたくないから。どうやら彼は、自分の父に子ども扱いされてなかったようだ。だから、非常に恨みに思っていて、物語中で何度も独り言で今は亡き父を詰っている。
彼は親父のようなロクデナシにならないと決めて、幼い頃から生きてきたのだろう。で、建設会社のエリート会社員になって、BMWを買えるくらいの収入があり、妻と息子2人を育てている。そういう生き方は、親父を反面教師にしてきたからこそ実現できたことらしいのが、劇中の彼のセリフから何となく伝わってくる。
ところが彼はたった一度、出来心で浮気してまうのだ。そして、その愛人との間に子どもをもうけてしまう。それを知ったときに彼は、帰るはずだった妻子の待つ家に帰らず、出産間近の愛人がいる病院に向かう。彼は自分の罪を認め、バカ正直に妻にその件について告白し、バカ正直に愛人に「君を愛してはいないが、子どもは認知する。責任も持つ」というようなことを言う。バカ正直だ。筋が通った男だなと感心した。俺はこういう人はけっこう好きだ。
でも、よくよく考えてみると、独善的という言い方もできる。
そうなのだ。彼は独善的なのだ。仕事はできる。現場仕事を安全に終わらせるための気配りができ、下請けの人間たちからも信頼されているのがわかる。ところが、出産の件にあたり、自分は現場にいないくせに上司からの命令は突っぱねる。
そして、クビにされたにも関わらず、元部下を電話で操って仕事を完遂しようとするのである。その間に妻を説得しようとし、愛人をめんどうだと思いつつも励ます。彼はそれがすべて、自分の思い通りにこなせると思っていたのである。だが、そうはならない。
何でも誠実に、正直に言えばいいってもんでもないのだ。それは結局、他人からしてみれば単なる独りよがりな奴で、自分のために自分の正しさで筋を通したいだけで、相手の気持ちを考えているようでいて、自分のやり方を押し通そうとしているだけなのである。
てなことで、自分を顧みるに反省すべき部分があることに気付いたので、見てよかった(笑)。
ちなみ、どうしても突っ込みたいところとしては、ロックは上司も認めてるようにとても仕事ができる人間なのに、どうしてあの晩だけはあんなに仕事を残してしまったのか。家族との約束があったから帰らなければならなかったのはわかるんだけども、本当に仕事できるんなら、あんな頼りにならない部下に任せることになる以前に、自分が帰るまえに終えておくべき仕事(通行許可取るくだりとか)がたくさんあったと思うんだけど(笑)。
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