映画『ポセイドン・アドベンチャー』
危機的状況に陥った人間たちが生き残りをかけて右往左往するパニック系の名作。ネタバレ少し! ―1972年公開 アメリカ 117分―
解説:1400名の乗客を乗せてニューヨークからギリシャに向かう豪華客船ポセイドン号が32メートルの大津波に襲われ転覆爆破し、生き残った船客が超人的な勇気で脱出をこころみる姿を描く。製作は「海底探検」のアーウィン・アレン、監督は「クリスマス・キャロル(1970)」のロナルド・ニーム、ポール・ギャリコのベスト・セラー小説を「夜の大走査線」のスターリング・シリファントと「脱走特急」のウェンデル・メイズが共同脚色。撮影はハロルド・E・スタイン、特撮は「トラ・トラ・トラ!」でアカデミー特撮賞を獲得したL・B・アボット、音楽はジョン・ウィリアムズ、美術はウィリアム・クリーバー、、セットデザインはラファエル・ブレットン、編集はハロルド・F・クレスが各々担当。出演はジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレイ、ロディ・マクドウォール、ステラ・スティーヴンス、シェリー・ウィンタース、ジャック・アルバートソン、パメラ・スー・マーティン、エリック・シーア、フレッド・サドフ、レスリー・ニールセン、シーラ・マシューズ、ジャン・アーバンなど。(KINENOTE)
あらすじ:81000トンの豪華客船ポセイドン号が、ギリシャに向かうためにニューヨーク港をでたのは12月末だった。船長(レスリー・ニールセン)は最初から船の重心が高いことに気づいていた。バラスト(底荷)をしていないので、船体の上部が重く、大波を喰うと転覆する恐れもあり、スピードを出すことも危険だったが、船主の代表はそれを認めなかった。ポセイドン号が地中海に入ったとき、地震観測所から、クレタ島南西130マイル沖合いで海底地震があったという電報が入った。それから間もなく大津波がおしよせポセイドン号は一瞬にして転覆した。船体の上部が海底に没し、船底が海面に現われたのである。(以下略 KINENOTE)
監督:ロナルド・ニーム
出演:ジーン・ハックマン/アーネスト・ボーグナイン
いきなり別作品の話(笑)
パニック系の作品だと、個人的には本作の数年後に撮られた『タワーリング・インフェルノ』のほうが好き。あの作品はポール・ニューマンとスティーブ・マックィーンがかっこいいし、終始ハラハラさせられるから。
マッチョ牧師の独壇場です
対して本作は、登場人物たちがどう生き残るかというよりジーン・ハックマン演じる牧師が中心となって、頼りがいのある彼に運命を託した人間たちの選択にまつわる話とでもいう感じで、彼の存在感がでかすぎて、群像劇っぽさがないというか(この手の映画が必ずしも群像劇である必要はないのだが)、それぞれの背景も描かれるものの、牧師と比べると刺身のツマ程度の存在感しか感じられない。
牧師の選択が常に正しいのはなぜか
てなことで、面白いは面白いんだけど、なんかねぇ。あの牧師のマッチョぶりはなんなんだろう。なんであんなに、「俺について来い、俺の選ぶ道が正しい」と断言できるのか。でも、作品中では彼の選択する道は正しいのであり、彼自身は途中で脱落してしまうものの、彼について行った人間の大半は助かるのである。
そういう意味では生き残るために頭をフル回転させつつ、脱出路を探るための周囲を観察する力と、観察により集めた情報を処理する能力が、とても高い人間が彼なのだ。そこはすごい。すごいし、自分の選択により犠牲になる人間に対して悔恨の思いで打ちひしがれる場面もあって、イイ人だなって思うんだけど、でもなんか鼻につくんだな。
どっちかというと、アーネスト・ボーグナイン扮するおっさんのほうが、男気もあるし、弱さも見せるし、人間的で好感度が高いのである。この作品が創られた当時の時代背景はよくわからんが、なんか、牧師に対して「ザ・アメリカ」っぽく感じちゃうんだね(笑)。映画の中で描かれる牧師で、あんなに迷いがない真っ直ぐな奴ってあんまいないような気もする。
まぁしかし、神のしもべでありつつも神に頼らずに己の道を切り開き、さらに他者をも助けようとする心意気はいいのではないか。そういう意味では、まさに主人公的なキャラではある。そこはカッコいいのである。でも、なぜか俺にとってはあまり楽しめない映画であった。
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