逆転のトライアングル
豪華客船の旅に出たインフルエンサーとモデルのカップルや富豪や客室乗務員らがふざけた人間性をあらわにしつつ、ジタバタを繰り広げるコメディドラマ。期待通りの展開かと思いきや、後半は少し物足りなさもある、普通作品。ネタバレあり。
―2023年公開 瑞=独=仏=英 147分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:スウェーデンのリューベン・オストルンド監督が「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(17)に続き、カンヌ国際映画祭史上3人目の2作品連続パルムドールを受賞した逆転劇。2億5000 万ドルの豪華客船が沈没、乗り合わせた様々な立場の人々は、流れ着いた無人島でゼロからのサバイバルを繰り広げる。ファッション業界の光と影、ルッキズムや現代階級社会の問題を驚くべき人間観察眼とブラックユーモアで痛烈に炙り出す監督の手腕が光る。主演は「キングスマン:ファースト・エージェント」のハリス・ディキンソン、本作が遺作となってしまったモデル出身のチャールビ・ディーン。フィリピンのベテラン女優ドリー・デ・レオンや名優ウディ・ハレルソンらも参加。第95回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞の3部門でノミネートされている。(KINENOTE)
あらすじ:人気インフルエンサーのヤヤ(チャールビ・ディーン)と男性モデル・カール(ハリス・ディキンソン)のカップルは、招待を受けて豪華客船の旅に出る。そこはロシアの大富豪、英国の武器商人、アル中の船長(ウディ・ハレルソン)、高額チップのためならどんな観客の望みでも叶える客室乗務員など、クセモノの巣窟だった。しかし、ある夜、嵐に巻き込まれ船が難破する。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態で、ヒエラルキーの頂点に立ったのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃婦(ドリー・デ・レオン)だった――。(KINENOTE)
監督・脚本:リューベン・オストルンド
出演:ハリス・ディキンソン/チャールビ・ディーン/ドリー・デ・レオン/ウディ・ハレルソン
ネタバレ感想
レンタル配信で鑑賞。この監督の作品は『フレンチアルプスで起きたこと』『ザ・スクエア 思いやりの聖域』などを鑑賞済み。特に後者は結構好きで、本作にも似たようなテイストを感じた。でも、冒頭に書いた通り、なんか物足りないんだよなぁ。
最初は、人気モデル兼インフルエンサーのヤヤと、売り出し中のモデル、カールのカップルがご飯の料金について払うの払わないだのでゴチャゴチャやっているシーンからスタート。このくだりがけっこう長く続く。
ヤヤは美人だけど、どうにも魅力のある性格には思えなくて、なんでカールが彼女に対して「愛してる」とか言えるのかがまずようわからん。ヤヤはカールとの付き合いを割り切ってて、もっと金持ちがいればそっちになびいちゃいたいと思っているような奴。一方のカールはイケメンではあるものの、作品を最後まで見通しても、魅力に感じるような言動が一つもないという始末。
まぁ要するに、どっちもお近づきになりたくないウンコ人間ってな感じ。とは言っても、ウンコ野郎はこの二人に限らず、出てくる登場人物のほぼ全員がウンコなのだ。要するに人間はウンコ野郎しかいないのだと監督が言っているように見えるのは、前作と同じ。
その中で、今回はいろいろな富豪が出てきて、しつこいけどもみんなウンコ野郎。で、こいつらのウンコっぷりを見て笑わせてもらえるのが、2幕目の船上のシーンだ。
個人的にはここが今作のもっとも楽しめる部分。偉そうに客室乗務員に、自分の要望どおりのことをやらせようとするババアとか、その他いろいろ、どいつもこいつもイケ好かない感じの人間のオンパレード。
俺みたいな貧乏人はこいつらの言動の何を見ても気に入らないことばっかりなので、ともかくこいつらが早く無人島に送り込まれちゃって、自分たちが自分たちのウンコさに気付くような展開になればいいのにと期待しているんだが、なかなかそうはならない。
それでも楽しませてもらったのは、船長が出席するディナーがゲロ吐きパーティになるくだりだ。これはよろしい。
みんなが荒れる海に船酔いしたのか、食事に何かが入ってたのか、その両方か、ともかく気分悪くなってゲロ吐きまくるのだ。あるババぁなんて、トイレの中で自分のゲロにまみれながら右往左往する船に翻弄されて吐きまくってて、本当笑わせてくれる。
しかも、この便器から水が逆流して、クソまみれの汚水が船内に流れ出しちゃう。マジきたねぇが、みんな汚物まみれになっちまいな! と思うくらいには溜飲が下がるシーンであった。
このめちゃくちゃなパーティが終わって後、船は難破しちまったのか、そして唐突に海賊に襲われることになり、気付いたらヤヤとカール以下数名が、無人島らしき島に流されているシーンに切り替わり、第3幕が始まる。ここからが、この作品の核心部分なんだろうなぁと思ってたんだが、この後の展開は実につまらない。
セレブたちとトイレの清掃係のオバサンの立場が逆転するんだけども、はっきり言って、セレブたちがそんなにひどい扱いを受けるわけではないので、俺にとっては何もおもしろくなかったのである。
ラスト、無人島が実はリゾート地だったことに気付いたヤヤが、自分の立場を取り戻し、島での権力者の立場にいた清掃係のオバサンを下に扱い出すセリフを言う。オバサンはあの後、怒ってヤヤを殺したのかどうかは定かではない。
あと、その二人の元にカールが走っていくシーンで物語は終わるが、カールが何を思って走っていたのかも、俺にはようわからんかったし、正直それは俺にとってどうでもいいことになっていた。もちろん、3幕目が全然面白くなかったからである。
こんな展開になるなら、船上で嵐を受けてセレブどもが死ぬほど大変な思いをするとか、あの海賊たちが襲ってきたシーンをきちんと映し、船内でセレブどもが虐殺されてく描写などがあったほうが全然面白かったのになぁと思ってしまった。
ということで、2幕目まではそこそこ楽しめたんだが、3幕目以降が何とも残念な感じ。個人的には『ザ・スクエア 思いやりの聖域』のほうが全然よかったなぁ。
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