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映画 ニューオーダー ネタバレ感想 胸糞悪い良作

ニューオーダー
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ニューオーダー

セレブな家庭の娘が幸せな結婚式を開いて浮かれてたら、街で暴動が起こって悲惨な目に遭う話。秩序が崩壊して新たに誕生する秩序。そのグロテスクな様と権力者たちの嫌さが身に染みる胸糞悪系の良作。ネタバレあり。

―2022年公開 墨=仏 86分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:「母という名の女」のミシェル・フランコ監督による第77回ヴェネツィア国際映画祭 審査員大賞受賞作。裕福な家庭に生まれ育ったマリアンの結婚式。着飾った政財界の名士たちが豪邸に集うなか、ほど近い通りでは貧富の格差に対する抗議運動が暴動と化していた……。出演は、メキシコで活躍する女優ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド、「モンスターハンター」のディエゴ・ボネータ。(KINENOTE)

あらすじ:夢に見た結婚パーティーを迎えたマリアン(ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド)。その日は、彼女にとって人生最良の一日になるはずだった。裕福な家庭に生まれ育った彼女を祝うため、着飾った政財界の名士たちが豪邸に集う。そんななか、マリアン宅からほど近い通りでは、広がり続ける貧富の格差に対する抗議運動が、今まさに暴動と化していた。その勢いは爆発的に広がり、遂にはマリアンの家にも暴徒が押し寄せてくる。華やかな宴は一転、殺戮と略奪の地獄絵図へと変容するが、マリアンは運良く難を逃れる。しかし、そこには軍部による武力鎮圧と戒厳令が待ち受けていた。電話や通信網は遮断され、ついさっきまで存在していたはずの法と秩序は崩壊、日常が悪夢へと変わってゆくのだった……。(KINENOTE)

監督・脚本:ミシェル・フランコ
出演:ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド/ディエゴ・ボネータ/モニカ・デル・カルメン/フェルナンド・クワウトレ/エリヒオ・メレンデス

ネタバレ感想

セレブが貧民層の襲撃に遭って地獄を見せられる話らしいと知り、Amazonのレンタルで鑑賞。でも鑑賞してみたら、格差社会で起こりうるであろう上級国民に対する妬みを暴力的に解消するという下層階級の人たちの話というだけのものではなく、権力者の持つ恐ろしい隠蔽体質や残虐性を見せつけてくるので、当初の想像以上に悲惨な話だったなぁと感じた。

簡単にどういう話だったかと説明すると、暴動によって世の秩序が乱れ、鎮圧のために軍隊が登場。治安を維持するために人々に高圧的な態度を取って、秩序を取り戻すために暴力を使用する。

その軍の中に欲に目がくらんだ兵士たちのグループがいて、こいつらが、拉致した上級国民を人質(マリアンとか)にしてその身内を脅し、金を巻き上げる。で、その事態が発覚したことで軍部はこの兵士たちを処刑(おそらく、巻き上げた金は上の奴らが着服)。

そして、その事件を隠蔽するため(軍に非難が集まらないために)、人質を救うべく奔走していた市民(マリアンの家の使用人=クリスチャン)に罪を着せるべく殺害。人質(マリアン)を殺したのは軍なのに、市民(クリスチャン)が犯人だということにしちゃうのである。死人に口なし。

最後に、誘拐事件に関与した人間の中で主犯格(クリスチャンの母)を絞首刑に処す(これもでっち上げの冤罪)。その刑を平然として見つめる軍の司令官と、新たな権力と癒着することになった上級国民たちの姿を描写して物語は終わるーーというマジに鬼畜な話。

軍部の権力者たちはセレブどもの身内である人質たちを助けるふりしながら最終的には助けてないわけで、その辺をどうするかの匙加減は自分たちで決めちゃってたのかもしれない。

つまり、袖の下の多寡や賄賂を渡してくる人間の利用価値とかで決めているのではないか。その辺の細かい説明はなかったのでよくわからんが、いずれにしても権力の持ち主ってのはそういう汚いことはやってそうで、二枚舌野郎がその座についてるんだろうなーなんて思っちゃう。

主人公のマリアンはかつての使用人に対する気遣いなどができる常識人であって、それがアダとなって悲惨な末路をたどることに。ともかく、倫理・常識的な判断で動いている人は、おしなべて悲惨な結果を迎えるところがこの作品の胸糞ポイント。

そうやって描写される権力者や人殺しや人をごみのように扱う人間どもの嫌さが、現実社会において日々起きている事件や出来事の延長にあることだと感じられるし、それらをより先鋭化して描写してるように感じられて、絶望的な気分にさせられるのだ。つまり、リアルな社会がこの作品と同じようにすでにディストピア化してるってこと。

暴動を起こす側は上級国民に対する妬みに対して暴力と略奪で怒りの感情を解消する。一方の上級はそうした人間たちを下僕として扱い道具のようにしかみておらず、いざそうした層の人間の反逆に遭うと、自身の人脈を利用して便宜を図ってもらえるよう働きかけ、命や地位を守るための保身に走る。

さらに恐ろしいのは、現状の社会情勢を打ち崩すことになる下層階級の動きによって、新たに権力を握る者たちがやることは、既存の権力と同じく臭いものにふたをする隠蔽体質の持ち主であり、隠蔽のために力のないものを利用して罪を着せ、利用価値が無くなればこの世から消していくのだ。

ニューオーダーな世の中になっても、結局、これまでの格差は是正されることもなく絶望的な状況が続くのである。それが現実なのだ。繰り返すけど、ディストピア。

何度も観られるような内容ではないし、説明が少ないので、不鮮明な部分もあるものの、なかなかの良作でありました。

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コメント

  1. いぬちゃん より:

    90万、100万と要求してきた、欲に目が眩んだグループと同じ軍の人間がマリアンを人質に2000万要求していましたよね。あそこが権力者の本線で、それを邪魔したから軍の小物が消されたのかと思ってました。

    • hanori より:

      コメントありがとうございます。確かに値上げされてくシーンがありましたね。記事内では言及してないですが、その解釈もあってると思います。全体的に説明不足な部分が多い作品なので、記事内の解釈もほぼ推測です。

  2. リリヲ より:

    はじめまして。Twitterフォローさせていただきたいのですが、クリックしてもhanori様のTwitterに飛べないです。ID教えていただけますか?

    • hanori より:

      はじめまして。動作確認したところ、右のツールバーにあるTwitterアイコンからリンクできましたが、どうしてでしょうね。Twitterは記事投稿時の宣伝にしか使ってないですが、@hanbunorita ←こちらでいいでしょうか? 

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