ザ・バニシング 消失
―1988年製作 蘭=仏 106分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:1988年オランダ映画祭で最優秀作品賞を受賞したサイコ・サスペンスが劇場初公開。休暇でフランスへ向かうカップルのレックスとサスキア。途中、忽然とサスキアが姿を消し、以来3年間彼女の行方を捜し続けているレックスのもとに犯人らしき人物から手紙が届く。出演は「幸せはシャンソニア劇場から」のベルナール・ピエール・ドナデュー、「ロフト.」のジーン・ベルヴォーツ、「サージェント・ペッパー ぼくの友だち」のヨハンナ・テア・ステーゲ。監督は「マイセン幻影」「ダーク・ブラッド」のジョルジュ・シュルイツァー。1993年に公開された「失踪」は本作のハリウッド・リメイク。(KINENOTE)
あらすじ:オランダからフランスへ車で小旅行に出かけた若いカップル、レックス(ジーン・ベルヴォーツ)とサスキア(ヨハンナ・テア・ステーゲ)。だが立ち寄ったドライブインで、サスキアは忽然と姿を消してしまう。レックスは必死に彼女を捜すが手掛かりは得られず、3年の月日が経過、レックスは依然として捜索を続けていた。そんななか、犯人らしき人物から手紙が何通も届き始めたレックスは徐々に精神を蝕まれていく……。(KINENOTE)
監督・脚本:ジョルジュ・シュルイツァー
出演:ベルナール・ピエール・ドナデュー/ジーン・ベルヴォーツ/ヨハンナ・テア・ステーゲ
ネタバレ感想
キューブリックが震撼(笑)
1988年作品で、公式サイトによると、「ラストへの戦慄が『サイコ』(60)、『羊たちの沈黙』(91)、『セブン』(95)、『ゴーン・ガール』(14)を超えると言われる、サイコロジカル・サスペンスの傑作」らしい。
しかも、あの、キューブリック監督がこの作品に「震撼」したんだとか。ほんとかよ、すごいじゃん。他にも著名な人から一般の人まで、映画好きを称する人たちがこの作品をスゴイと称賛しているので、それなら俺もそのスゴさを味わいたいと、鑑賞してみた。
で、その感想なんですけど、…普通だったなぁ(笑)。ラストにもさほどの驚きはなかったし、そこに至る過程にもサスペンスフルなドキドキワクワク感はなかった。きっと、前評判に期待しすぎたんだろうと思われる。やっぱり、いろいろ情報入れて期待値爆上げしすぎるのはよくないのだ。
真相を知ると死んじゃう
まぁでも、そこを差し引いても、主人公のレックスの行動にイマイチ感情移入できないというか、納得がいかないんだよなぁ。どうしても真相を知りたいという気持ちはわかるし、その謎に執着しすぎて彼自身が変人になっていっているような感じの演出もわかる。そうなっても仕方ないと思うから。
でも、「自分が犯人」と名乗って現れた人間に対して、警戒心がなさすぎのような。一緒に車乗るとか、俺だったら絶対にしたくない。もちろん、乗らないと真相を教えてもらえないんなら、仕方ないかと思わぬでもない。だけど、犯人を自称している奴に真相を教えるからと言われて、そのままホイホイ従えるかね? 自分も殺されるかもしれないんだよ、相手が本当に犯人だったら。
で、多少の葛藤はあったのかもしれんけども、彼は結局、真相を知るほうを選択して、睡眠薬入りドリンクを飲んじゃってブラックアウト。気付いたら地中に棺桶詰めされちゃってて劇終。彼女も同じ目に遭ったのだと真相を知ったときには逃れようのない死が待っていたという…。
計画通りに犯行できてる?
つまりこの映画って、真相を知りたい! という鑑賞者の心情をそのままレックスに演じさせているんだろうけど、その展開にさほど驚けなかったら、面白かったとは言えない作品になっちゃっているような気が。
もちろん、あんな殺され方は絶対にやだし、その辺は背筋が凍るけども、「反社会性パーソナリティー障害」というのを患った犯人の思惑通りに事が動きすぎちゃって(偶然も働いているとはいえ)、そこも何か興醒め。犯人がどれだけ用意周到に準備と練習を重ねてきたかってのをこれでもかと描写しているけど、けっきょくレックスの恋人を拉致できたのって、偶然じゃん。
つまり、この犯人って慎重にいろいろ考えて計画立ててるんだけど、計画通りに犯行できてないんだよ。そんな奴が、3年も警察に捕まらずにいられるもんかいね?
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