ザ・レポート
日本未公開Amazonプライム配信作。9.11以降のCIAが取り入れた尋問プログラムを調査した男が、その尋問が拷問に近いことを突き止め、しかもそれに効果がなかったことを公にしたろうとするんだけども、その事実を隠蔽しにかかってくるCIAなどと悶着する話。ネタバレあり。
―2019年製作 米 120分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:2019年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画である。監督はスコット・Z・バーンズ、主演はアダム・ドライヴァーが務めた。本作は日本国内で劇場公開されなかったが、Amazonプライム・ビデオでの配信が行われている(wikipedia)
あらすじ:ダニエル・J・ジョーンズはアメリカ合衆国上院で調査スタッフとして働いていた。そんなある日、ジョーンズはCIAの勾留及び尋問に関するプログラムを調査するチームのリーダーに任命された。各種データを収集・分析した結果、アメリカ同時多発テロ以降、CIAは強化尋問技術と称して容疑者に対して拷問を行ってきたことが判明した。ジョーンズたちが判明した事実を公にしようとしたところ、CIAと大統領府はあらゆる手段を使って妨害を試みてきた。 (wikipedia)
監督・脚本:スコット・Z・バーンズ
出演:アダム・ドライヴァー/アネット・ベニング/マイケル・C・ホール/ジョン・ハム
ネタバレ感想
実話を基にした物語。劇中で主人公のダンが『ゼロダークサーティ』を眺めるシーンがあるけども、なかなか示唆的な場面であった。あの映画でも確か、CIAがけっこうな尋問をしてたような覚えがあるので。あと、スノーデンにも言及されるシーンがある。『スノーデン』は未見なので、今作を経て鑑賞してみたくなった。
で、この物語は冒頭に書いたとおりの内容なわけだが、劇中にもあるように、「CIAは国民を守るためなら何でもする」というその何でも感が出ている。でも、その何でもは、どうも国民のためには思えないんだよなぁ。
事あるごとに、テロが起こらないよう、犠牲者が出ないようにーーというんだけども、それが国民を守るって意味ならそうなのかもだが、何か権力者どもの思惑というか、要するにビンラディン殺す口実づくりをしてたような感もあって、大義名分を裏側で捏造しているような印象もあって、まぁそんなことが本作からは感じられるのだ。
そもそも、心理学者がいう効果的な尋問方法とか、どれもまったく新しさのない内容で、あれは確かに尋問というより限りなく拷問なのである。学者が聞いてあきれるわけだが、それが実際に行われてて、エリートしか入れないような組織のCIAで、何であんな頭の悪そうな奴らがいっぱいいるのか意味がわからんのである。
ともかく、組織に染まった人間って外側から第三者目線で判断できなくなるんだなって感じる。それは、普通の企業に勤めていてもそうだ。大企業にいる人とかなんか特にそうなっちゃうのかも。CIAの奴らは、局員にも家族がいる云々言って、事実の公表を避ける口実をいろいろ言うけども、あの拷問に反対していた局員もいるわけで、そっちには目が向いているのか背けているのか。
アダムドライヴァー扮する主人公は、なかなか自分の仕事が公表されない苛立ちと、なぜか自分がハッキングの罪で逆に陥れられようとしていることを回避するため、一時はマスコミに情報をリークすることも考えるが、最後まで自分のやり方を貫く道を選ぶ。彼の内面はさほど描写されないので分からないようでいて、感情的に喋るときは常に正論を言っているのであり、気骨のある若者だったということでしょうな。
でまぁ、報告書はけっきょく明るみに出ることになる。そこに至るまでにいろいろあるし、その駆け引きというか、それぞれの立場の思惑みたいのがバカな俺には理解できない部分もあった。でも、アメリカという国は、自国の汚点を認める自浄作用を働かすことができる程度には優れた国であることは見て取れた。そう考えると、今の日本って本当にどうしようもない国だ。
ぜんぜん存在を知らなかった映画だが、鑑賞してよかった。正直、アメリカの政治制度とかのことよくわからないので、展開についていけない部分もけっこうあったんだけども、それでも楽しめた。骨太なサスペンスです。
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