弾丸ランナー
うだつの上がらない3人の男が、あることをきっかけに、追いつ追われつ、デッドヒートのランニングをする話。走って走って走りぬいて、ランナーズハイになってまで走りぬいた先にある3人の結末は――。ネタバレあり。
―1996年公開 日 82分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ひょんなことから追いつ追われつのランニング・デッドヒートを繰り広げることになった、3人の男たちの奇妙な関係を描いたコメディ。監督・脚本は「ワールド・アパートメント・ホラー」などで知られる俳優のサブで、この作品で監督デビューを果たした。主演には「ガメラ2レギオン襲来」の田口トモロヲと、「TOKYO POP」のDIAMOND☆YUKAI、そして「シークレットワルツ」の堤真一があたっている。(KINENOTE)
あらすじ:職場でのストレスに加え、ただひとつの心の拠り所にしていた女に裏切られた安田新吉は、みんなが驚くような大きなことをしてやろうと銀行強盗を計画する。入念な下調べを繰り返し、いよいよ本番を迎えようとしたその時、安田はマスクをかけ忘れていたことに気づいた。近くのコンビニへ走った安田はマスクを万引きしようとしたが、店員の相沢健二に見つかってしまい、追われることになってしまった。実はヤク中の相沢は、異常なほど執拗に安田を追い回し、街の中をグルグルグルグルと走り回る。そのころ、山根組のチンピラ・武田一男は、組長の命を刺客から守れなかったことを悔やんで、ひとり街をさまよっていた。安田と相沢の追いかけっこにたまたま遭遇した武田は、シャブの代金が未払いだった相沢の姿を見つけて逆上し、その追いかけっこに参加することになってしまう。3人がひたすら走っている最中、組長を殺された山根組の連中は、刺客を放った鬼戸組に殴り込みをかけようとしていた。一方、その情報を入手した警察は、この機会にヤクザを一斉検挙しようとチャンスを伺っており、こちらでも三つ巴の戦いが展開されているところだった。ところが、その現場にすっかりランニング・ハイ状態となった安田、相沢、武田の3人がなだれ込んできて、現場は大混乱でパニック状態となった。激しい銃撃戦が展開された結果、相沢だけが助かったほかは、みんな命を落としてしまっていた。(KINENOTE)
監督・脚本:サブ
出演:田口トモロヲ/DIAMOND☆YUKAI/堤真一/麿赤児/大杉漣/堀部圭亮/清水宏/渡辺哲
ネタバレ感想
タケダ(堤真一)以外の登場人物の名前を忘れたので、役者の名前で感想を書きます。
街を激走する3人
田口トモロヲは何をやってもダメな奴で、惚れてた女は去り、勤め先もクビになり、何とか世間を見返してやりたいと銀行強盗を計画するが、小心者過ぎて失敗。いろいろあって、街を激走する羽目になる。
ダイヤモンドユカイはビッグになる夢を持つが、売れないミュージシャン。しかもシャブ中だ。ヤクザの堤真一からシャブを買っていて、借金がある。自分の働くコンビニで田口がマスクを万引きしようとしたので、止めたら拳銃で撃たれた。ラりっていた彼は痛みも感じずに、逃げ出した田口を追って、街を激走する羽目になる。
ヤクザの堤真一は兄貴分の大杉漣と街を歩いていた。大杉から彼の死生観などについて話を聞いていた。彼らは喫茶店で待ち合わせていた田口に拳銃を売った。その後、親分のところへ出向いたら、鉄砲玉が現れて、親分と大杉は殺されてしまった。堤は鉄砲玉の攻撃を臆病にも避けてしまい、二人を殺されてしまった。自分の臆病にうちひしがれていたら、そこを田口とダイアモンドが走っていた。堤はダイアモンドを追いかけて、街を激走する羽目になる。
妄想する男たち 死に方というのは生き方だ
物語で激走するのはこの3人。こいつらには妄想癖があって、走りながらも妄想をする。ちなみに、妄想をするのはこいつらだけでなく、親分と大杉をやられ、仇をとりにいこうとするヤクザの奴らも、自分の死にざまを妄想する。
他に出てくるのは、警察で、こいつらも全然まともではないクズ人間だ。堀部演じる刑事は一見まともそうに見えるがそんなことはなく、おかしい。
ということで、この作品に出てくる登場人物は、ほとんどマトモな奴がいない。唯一、大杉漣だけがまともな人間に見える。それ以外の人間はどこかおかしい。
しかし、そのおかしさが何なのか、よくわからんと言えばわからん。みんな、自分の成功とかを妄想することはあるだろう。俺もよく妄想する(笑)。それはある意味で、理想とする生き方を妄想しているとも言える。
大杉のセリフに、「死に方というのは生き方だ」というセリフがある。そう考えるに、妄想は生き方を妄想しているわけで、それが実現するなら、理想の死に方でもあるのかもしれぬ。
人生は、走って走って走り抜け
もう一つ、この作品で考えさせられるのは、ランナーズハイになった3人が、走りぬいたことに満足感を覚えているところだ。今まであれだけの距離を走ったことのなかった彼らは、その走りの中で多幸感を得て、満たされたような境地に陥る。
走るのだ。人生は走らなければならない。走って走って走りぬくしかないのだ。そこに多幸感がある。おそらくそういうことだ。では鑑賞者たちにとって「走ること」とは何か。何によって走りぬくことができるか。それは各々の妄想の中にこそ、ヒントがあるのかもしれない。
正直言って、コメディというジャンルに括るほどには笑えないし、突っ込みどころ山ほどあるんだけど、ある種のパワーを感じる作品であった。なので、鑑賞してよかった。
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