リトル・シングス
連続殺人事件を捜査することになった保安官代理と刑事が、犯人と思われる男に振り回されてジタバタしつつ、保安官代理は自身の暗い過去に苛まれ、刑事は保安官と同じような道を進んでいっちゃいそうな感じ。二人はいったいどうなってまうのか、そして犯人は? ネタバレあり。
―2021年製作 米 128分―
解説とあらすじスタッフとキャスト
解説:デンゼル・ワシントン、ラミ・マレック、ジャレッド・レト共演によるクライムサスペンス。保安官代理のディークは、巡査部長・バクスターと共に連続殺人事件を捜査することに。だが、捜査を進める中でディークの暗い過去と不穏な秘密が明らかになり…。(KINENOTE)
あらすじ:“ディーク”ことカーン郡巡査ジョー・ディーコン(ワシントン)は事件の証拠集めのために、ロサンゼルスに行くことを命じられる。その任務はすぐに片付くはずだったが、彼は街を恐怖に陥れる連続殺人犯の捜索に巻き込まれてしまう。陣頭指揮をとるロサンゼルス郡保安局の刑事ジム・バクスター(マレック)はディークの経験と鋭い勘を認め、彼と組んで捜査を進めることにする。だがディークと共に容疑者(レト)を追っている間も、バクスターは気付かなかった。捜査がディークの暗い過去を掘り返し、不穏な秘密が暴かれていることに。そしてその余波はディークの事例だけに留まらないことにも。(Amazon)
監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:デンゼル・ワシントン/ラミ・マレック/ジャレッド・レト/クリス・バウアー/テリー・キニー
ネタバレ感想
キャストは豪華だが日本未公開
まったく存在を知らなかったんだが、ネットフリックスで配信されてたので鑑賞。2021年作品で、日本では未公開だったみたい。デンゼルワシントンにジャレッドレト、さらにラミマレック。ラミマレックは、『ボヘミアンラプソディー』に出てた人ってことで、なかなかキャストが豪華。
連続殺人事件を捜査するストーリーだから、けっこう興味持つ人いたんじゃないかなぁと思うが、どうして未公開だったんだろうか。俺はその辺の事情は詳しくないんで、何でかはわからん。
90年頃が舞台になっている
突然だが、俺は連続殺人を捜査する刑事の話の中でも、かなり有名で名作と言われる『セブン』をリアルタイムで劇場で鑑賞した。同作品が登場したのが1995年。それ以前にも猟奇殺人ものみたいな映画はもちろんたくさんあったけども、『セブン』以降、それに影響を受けたかのような『セブン』的作品がウヨウヨ撮られていた気がする。
この作品は、何となく紹介文などを読む限りそうしたテイストを感じさせたので、個人的に興味を惹かれて鑑賞して観たわけだ。
しかしまぁ、よく考えてみると、最近はこうした連続殺人ものの映画が大作として出てくることってなくなった感がある。俺が知らんのか、忘れてるだけかもしれないけど。
そういう話はおいといて、本作の感想を述べておくと、まずは物語の舞台が1990年頃の話だったようで、スマホどころか携帯電話がない時代。であるから、刑事が仕事で使うのは固定電話や公衆電話、ポケベルなどなど、なんとも懐かしい。
作品中では、連続殺人犯と思しき奴が出てくるのに、どうしても証拠が見つからなくて逮捕ができず、登場人物たちも鑑賞してるこっちもイライラやきもきさせられるんだけども、科学的捜査技術が今よりかなり劣ってたからこそなのかもとは思わせる。
特に個人的に面白味を感じたのは、FBIが介入することになったときに、捜査官が犯人像を述べているところ。あれってプロファイリングだよね。そう考えてみると、90年代はプロファイリングを使う犯罪捜査作品もけっこう出てきた頃だったような気がする。
「犯人は誰か」的展開を楽しむ作品ではない
まぁともかく、俺はこの作品は連続殺人事件の犯人を追い詰める過程で、コンビを組んだ男二人が人間的成長をしながら絆を深めていくような典型的ベタベタなミステリー刑事ものとして期待して鑑賞したのだ。
が、しかし、見始めたら全然そんな映画じゃないことがわかってきて、とは言えどういう結末を迎えるのか気になったので最後まで、そこそこは楽しく鑑賞しながらも、途中から「犯人が誰か」という展開を楽しませる作品でないことは覚悟してたので、ラストの結末についても納得ができた。
しかし、やっぱりそこに至る過程はもやもやイライラするシーンも多く、全体として楽しめたかというとまったくそんなことはなく、何とも地味な作品であったなぁというのが正直なところ。
俺が最初に感じたような期待をもってこの作品を鑑賞した人は、もしかしたらこの内容に納得がいかないどころか、怒りすら感じちゃうかも。だって、けっきょく犯人は誰だかわかんないからね。
ジャレッドレト扮するスパルマはかなり怪しい。ローストビーフの件や、警察しか情報を持ってないはずのある事件の死体遺棄の場所を知ってたりするから。
でも、それ以外に証拠がみつからないのだ。で、言動が何とも謎めいているし、刑事たちは彼に翻弄されっぱなし。そうした言動からは、警察をからかうのが趣味なだけのサイコ野郎に見えなくもない。つまり、犯人かそうでないのか、結末を迎えてもどっちだかわからんのである。
バクスターとジョーは似た者同士
結果的に、バクスター刑事(ラミマレック)が図らずもスパルマを殺しちゃうことになるんだが、あの行為はかなりバカすぎる。もう少し冷静になっとけや思わずにはいられないんだが、そこがジョー(デンゼルワシントン)と彼の似通ったところなわけで、要するにジョーが過去に味わったような体験を、似た者同士のバクスターも味わうことになるという話。
ハッキリ言うと、単にそれだけの話で、犯人なんてどうでもいいのである。つまり本作は、犯人が誰かというエンタメ的な面白さを楽しんでもらうのではなく、もう少し文芸的とでもいうか、ジョーとバクスターが事件を通じて味わった何ものかを感じ入るための作品というような印象であった。
ところが、その感じ入るところが、個人的には上記に書いたようなことしかなくて、なんとも物足りない。ジョーはバクスターに自分と似たようなところを感じてるのなら、もう少し何とかしてやれなかったんかいね。なんだか意味深なことばっか言ってるだけで、自分の過去は最後までジョーに隠しちゃってるからね。
んで、バクスターがスパルマを殺しちゃってからは、積極的に彼の殺人を隠蔽するための手助けをしてやってんだけども、そうなる前におまんが何とかできたんじゃないのかと思っちゃう。
しかもあの隠蔽行為だって、受け取り用によっては、過去に自分が被害者を過失とはいえ射殺しちゃったうえに上司らを巻き込んで隠蔽したことの正当化と見られなくもない。
まぁ、彼はすでにその過去の事件によって精神がぶっ壊れてるみたいなところがあるんで、彼と一緒に捜査を進め続けてるバクスターもどうかしてるのではあるが。
という感じに、ジョーのセリフにもあったように、二人はある意味で自分のために捜査を続けているのであり、そっちにばっかり気持ちがいってて、お互いの距離はさほど縮まってないし、バディ的な頼もしさは培えてないのである。その辺の関係性が、ああした結末を迎えることの要因になっているとは言えそうだが。
あと、事件の鍵となる行方不明女性の髪飾りの類似品をジョーがバクスターに送ってたが、送ったところで何の慰めにもならんと思うんだけどなぁ。仮にあれでバクスターが少しでも気持ちが和らぐんだとしたら、それはそれで、バクスターもやっぱりヤバい奴だと思うんだが。だって、あれが本物かどうかなんて、手にしただけじゃわからんわけだから。
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