ギヴァー 記憶を注ぐ者
―2015年公開 米 97分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ロイス・ローリーによる同名児童文学小説を「ソルト」のフィリップ・ノイス監督が映画化。近未来の完全に平等なコミュニティで、記憶を受け継ぐという仕事を与えられた少年の運命を描く。出演は「クレイジー・ハート」のジェフ・ブリッジス、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のメリル・ストリープ、「シグナル」のブレントン・スウェイツ、「バットマン ビギンズ」のケイティ・ホームズ、「バレンタインデー」のテイラー・スウィフト。(KINENOTE)
あらすじ:近未来、人々は新しい社会を作り上げることに成功。ここでは誰も過去の記憶を持たず、完全に平等で、争いもなく、“恐れ”や“苦痛”“憎悪”はもはや死語と化し、人々の記憶から消し去られていた。そんな中、このコミュニティで育ったジョナス(ブレントン・スウェイツ)は、「記憶を注ぐ者」(ジェフ・ブリッジス)というすべてのコミュニティの記憶を保持する唯一の人物と過ごし始める。「記憶を注ぐ者」はジョナスに、これまで人間が為してきたことを伝えようとしていた。それは人間が本来持つ感情、すなわち“恐れ”や“苦痛”“憎悪”をも伝えることとなり、やがてジョナスはこの場所に隠された過去の暗く最悪な真実を見つけ出していくのだった……。一方、コミュニティの平和を維持する使命を担う主席長老(メリル・ストリープ)は、彼女自身がジョナスを次世代に記憶を伝える役割である「記憶の器」に任命したにも関わらず、彼が「記憶を注ぐ者」と接触することでコミュニティを破壊するのではないかと危惧し始める……。(KINENOTE)
監督:フィリップ・ノイス
出演:ジェフ・ブリッジス/メリル・ストリープ/ブレントン・スウェイツ/ケイティ・ホームズ/テイラー・スウィフト/アレキサンダー・スカルスガルド/エマ・トレンブレイ
ネタバレ感想
児童文学小説が原作らしい。もちろん未読で鑑賞。なんというか、突っ込みたい部分はある。あるけども、なかなか楽しめた。
良かったのが、最初はモノクロ映像なのに主人公のジョナスが人類の記憶を体験するごとに、色を獲得し、獲得した色は、画面上でもその色になって映るようになるところ。観てない人にはよくわからん説明だと思うけど、これは粋な演出だと思った。
そして、ジョナスが記憶に触れる時の描写がいい。キレイだ。そして、幸福感を味わっている人たちの記憶に触れているときの、それぞれの情景は美しく、感動的である。当たり前な日常風景ばかりなのに、とても多幸感を得られる。人との触れ合いや、音楽から得られる豊穣な胸の高まり、リアルの世の中に生きていることを、ありがたく思えるほどに。少なくとも、俺はそういう感情を味わった。
ジョナスが人類の記憶に触れれば触れるほど、彼の視覚が映し出す世界は彩り豊かになっていく。でもそれは、彼だけだ。物語の閉鎖空間のなかに生きる住民たちには、色彩感覚がないのである。それは、封印された記憶に触れないと、取り戻せないものなのだ。
さらに、閉鎖空間に生きる人間たちは、感情を抑制する薬を服用するように強制されている。感情を抑制されているので、怒りなどの負の感情は湧かないが、愛などの感情もない。要するに、閉鎖空間で生きている人は、政府に完全に管理されたロボットのような存在なのだ。つまり、ディストピアである。ところがこのディストピア、今の世の中とあまり大差がないようにも見える。リアルの世界も、デジタル化が進み、こうした感情のない世界になりつつあるように見える。
まぁともかく、物語内の世界に住む人たちは、完全に管理され、将来の人生をどう生きるかまで選択させてもらえない世界に生きているーーというよりは、生かされているのである。そのぶん、争いはなく、ほぼ平等と思われる人生を営んでいるのだ。そういう意味では、ユートピア的だ。ただし、そこまで管理しないと、人類はユートピアに生きられないのかと考えると、それなら現実のディストピアに生きるほうがマシともいえるわけで、あの閉鎖空間は、表裏一体な世界なのである。
結末部分とかその他、説明不足感のあるところに多少の不満はあるものの、いいもん見たなと思える作品であった。
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