ザ・ディープ
実話をもとにした物語。海難パニックものというよりは、ヒューマンドラマ的な感じ。なかなか過酷な事件を描いているけども、淡々としすぎているし、けっきょく何をどう表現したかったのかよくわからない残念な作品。ネタバレあり。
―2013年公開 氷 95分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:1984年に実際に起きた海難事故を基に、生存者の苦悩と葛藤を描いたヒューマンドラマ。監督は、「7デイズ」のバルタザール・コルマウクル。出演は、「コントラバンド」のオラフル・ダッリ・オラフソン、「氷の国のノイ」のスロストゥル・レオ・グンナルソン。第85回アカデミー賞外国語映画賞アイスランド代表作品。(KINENOTE)
あらすじ:1984年3月、地元の漁師たちはいつものように、アイスランド沖から数マイルの海上で漁をしていた。しかし、思わぬアクシデントで漁船が沈没し、漁師たちは極寒の北海に投げ出される。寒さで意識を失い、仲間が次々と海の中へと沈んでいくなか、若手漁師のグリ(オラフル・ダッリ・オラフソン)は必死に耐え、夜明けごろに陸に辿りつく。身も心もボロボロになりながら1日かけて町に帰ってきたグリだったが、唯一の生存者である彼には、賞賛と同時に過酷な試練が待っていた……。(KINENOTE)
監督・脚本:バルタザール・コルマウクル
出演:オラフル・ダッリ・オラフソン/ヨハン・G・ヨハンソン/スロストゥル・レオ・グンナルソン/テオドール・ユーリウスソン
ネタバレ感想
救助されてからラストまでのネタバレ
引用したあらすじの後の話をざっと紹介しておく。
主人公のグッリが生き残ったのはかなり奇跡的なことらしく、研究者が「ほかの漁師たちのためにも」と説得して彼の体質を検査することになる。ただ、国内のレイキャビクでは解明できなかったので、彼はイングランドのロンドン(確か)に移され、そこでも検査をされた。
それによると、彼の脂肪はアザラシのそれに似ているらしい。だからこそ生き残れたのだと。どうしてアザラシに似ているのかはよくわからない。それに、通常だったら冷たい水にさらされ続けると、思考が混乱するそうだが、彼はほぼ平常心でいられる。それもなぜかわからない。
そうこうしているうちに、奇跡の生還者としてマスコミに取り上げられ、時代の寵児扱いされるグッリだが、一人生き残った彼は仲間に対して負い目があり、人気者になることが後ろめたい。そのうち嫌になってきたので、研究半ばで彼は故郷に帰る。
帰ってからは、亡くした仲間の家を訪問した。一番仲の良かったパッリには奥さんと2人の息子がいた。奥さんに「パッリは安らかに死んだ」と告げるグッリ。そして息子たちにも声をかける。それがパッリの家族には少しだけ救いになったようだったーーおしまい。
過酷で悲惨な体験を描いた実話なんだが…
という内容の、実話をもとにした物語。けっこう過酷で悲惨な体験をした男の話なんだけど、だいぶ物足りない印象の残念作品だった。
まず、冒頭から事故に遭うまでの間に、船員たちの人となりなどが説明はされるものの、主人公とパッリ以外の見分けがつかないままに事故ってしまうので、誰が死んだのかよくわからないところ。そもそも、グッリ以外にあの船には4人が乗っていたそうだが、俺は上記のような体たらくでいたので、グッリ含めて乗組員は4人かと思っていた(笑)。
で、みんなあっさり死んでしまうので、そこからグッリが自力で生還するまでのシーンは、グッリが一人でジタバタする姿が描かれる。これがまた、なかなか退屈だ。起こっていることは深刻だし、頑張ってほしいのに、なんかそういう気持ちにならない。画面から必死さや悲壮感が伝わってこないのである。
ということで、繰り返しになっちゃうけども、題材はとても深刻な話なのに、それを作品として活かしきれていないように感じた。特に、グッリたちの町は過去に、火山の噴火があったらしい。その過去の出来事が何回かエピソードとして挿入されるんだけども、その噴火騒ぎが、グッリの心にどういう影響を与えたのかなどが、さっぱり伝わってこないのである。
海難事故から生還した男の話の中から、何を伝えたかったのか、いまいちよくわからない作品であった。
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