アルピニスト
若き無名の天才アルピニストのマーク・アンドレ・ルクレールに密着したドキュメンタリー。世界有数の断崖絶壁を命綱も使わずに登攀するクレイジーかつ超人的な男は、常人とは異なる次元を生きている。ネタバレあり。
―2021年公開 米 93分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:世界でも有数の岩壁や氷壁、断崖絶壁を、たった独りで命綱もつけずに自らの手と足だけで登る「フリーソロ」のスタイルを貫く若き天才アルピニスト、マーク・アンドレ・ルクレールに密着したドキュメンタリー映画。米国アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を獲得した映画「フリーソロ」主演のアレックス・オノルドが「彼はクレイジーだ!」と語るなど、世界的なアルピニストたちから一目置かれているマーク。彼は2016年にロッキー山脈の最高峰ロブソン山(標高3954メートル)に単独登頂するなど、次々と新たな記録を打ち立てる。だが、そんな偉業を成し遂げながらも、SNSに背を向け名声を求めない性格から、世間的な知名度はほぼ皆無。知られざる若き天才にカメラを向けたのは、これまで数多くの登山にまつわるドキュメンタリー映画を製作してきたピーター・モーティマーとニック・ローゼン。登山経験も豊富な二人が、圧倒的な臨場感と迫力の映像で、究極のクライミングと謎に包まれた登山家の素顔を記録した。(KINENOTE)
あらすじ:たった一人で名だたる山に挑み、断崖絶壁を命綱もつけずに登る登山家がいた。カナダ生まれの23歳の青年マーク・アンドレ・ルクレール。彼は子供の頃から独学で登山を学び、その才能を開花させた。だがSNSはおろか携帯さえ持っていないマークのことを知っているのは仲間だけ。彼は無名の天才だった。その噂を聞きつけたドキュメンタリー映画監督、ピーター・モーティマーは、マークの不思議な魅力に惹かれて彼の映画を撮ることを決意。マークのクライミングを至近距離でカメラに収めていく。それは驚異的な光景だった。マークがクライミングを続ける理由は記録のためではなく、単に楽しみたいから。天才ゆえの無邪気さと、クライミングを愛する純粋さ。しかし、ひとりでクライミングをするのが喜びだったマークは、次第に撮影をプレッシャーに感じるようになり、突然姿をくらましてしまう。撮影スタッフがようやく見つけ出した時、彼は登山の歴史を変える驚くべき告白をする。(KINENOTE)
監督:ピーター・モーティマー/ニック・ローゼン
出演:マーク・アンドレ・ルクレール/ブレッド・ハリントン/アレックス・ホノルド/ラインホルト・メスナー/バリー・ブランチャード
ネタバレ感想
登山ってのは面白いし俺も好きなんだが、クライミングはおろか雪山も経験したことがない。というか、どちらも恐ろしすぎて、今のところ体験したいとも思わない。後者についてはいずれ挑戦したくなるかもしらぬが、とりあえずは少しずつ標高をあげて春~秋の登山を楽しむだけで十分。
それでも遭難とか滑落とか命の危険がともなうのが登山。であるから今作のようなプロたちの挑戦は死ぬ確率はググンとあがるわけだ。日本にも有名な登山家はいろいろいて、YouTubeとかでそうした人たちの活躍を紹介した動画はたくさんある。
あるんだけども、挑戦半ばで命を落とした人たちも驚くほどの数に上るし、というか、そうしたプロたちの半分は天寿を全うできずに亡くなっちまってるんじゃないかと思わされる。
で、今作の主人公たるマーク氏は、子どもの頃から変わった子で、みんなと同じような生活をすることが苦手だったみたい。ただ母親が寛容な人だったようで、世の中の常識や一般的な教育にとらわれない育て方をしてあげたことで、彼のアルピニストとしての才能が開花。自然と共に生き、山に挑む生活が彼の生きがいになり、すべてになっていったのだ。
それにしても、命綱もつけずに氷壁や岩壁を登攀するとか凡人の俺からしたら人間技とは思えない。だって、ほぼ垂直の壁を登ってるわけだからね。どんだけ筋力と体力と気力と判断力と登攀技術とそれを助ける装備が必要なのか、想像もできませんな。
それを飄々として楽しみながら、涼しい顔して登っている(ように見える)これらのアルピニストたちは、常軌を逸した別次元の人間であることがわかる。
でも、彼のように、自分のやりたいことのために人生を捧げる生き方には憧れを感じちゃう。憧れだけで、実践できないのが彼との埋めがたい差というか人生観の違いで、であるからこそ憧れちゃうわけだが、彼にとってはそうでなくては生きられないやり方で生きているだけで、凡人の俺もそうでなくては生きられないやり方で生きているに過ぎないーーという見方もできる。
何においても自由に生きるためには何かを捨てる必要はあるわけで、彼は何かを捨てるなんて意識はなく、ただ山のために生きていたんだろうけども、俺みたいな人間は、何かを捨てて挑戦することが自由に生きるためには大事なんだろうなと思わされる。
にしても、まだまだ挑戦したい山がたくさんあっただろうに、彼が死んじまったのは気の毒で、しかし、それほどに過酷な挑戦をしていたからこそ、人生が輝いて見えるんでしょうな。
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