テイカーズ
忘れた頃に鑑賞すると、それなりに楽しめる作品。人物描写的には物足りなさがあるが、みどころもそこそこあるので悪くはないクライム・サスペンス。ネタバレあり。
―2011年公開 米 107分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ゴージャスな若き犯罪者グループの姿を描くサスペンス・アクション。監督は『ロックダウン』のジョン・ラッセンホップ。出演は「ストンプ・ザ・ヤード」のクリス・ブラウン、「リセット」のヘイデン・クリステンセン、「アーマード 武装地帯」のマット・ディロン、「セントアンナの奇跡」のマイケル・イーリー、「マイティ・ソー」のイドリス・エルバ。(KINENOTE)
あらすじ:ゴードン・ジェニングス(イドリス・エルバ)、ジョン・ラーウェイ(ポール・ウォーカー)、A.J.(ヘイデン・クリステンセン)、アッティカ兄弟のジェイク(マイケル・イーリー)とジェス(クリス・ブラウン)のメンバー5人は、銀行強盗で奪った大金で豪勢なライフスタイルを享受している。彼らは詳細なプランを立てて手がかりを残さず、年に一度だけ大仕事をこなしてきた。最近成功させた犯罪は200万ドルの銀行強盗。犯行後、テレビクルーのヘリコプターを奪って脱出するという思い切った計画で現場から立ち去った。だがこれはロス警察の刑事ジャック・ウェルズ(マット・ディロン)の注意をひく。彼は昔ながらの刑事で、結婚も子供もおよそプライベートライフは総て捨てて仕事にのめりこんでいた。そして警察署の援助も受けずに、自らの手で次の犯罪が起る前に突き止めようとしていた。そんなテイカーズの前にかつての仲間、ゴースト(T.I.)が姿を現す。刑務所から出所してきたばかりの彼は、今度のヤマがうまくいけばもう全員がスキーマスクをかぶって強盗をしなくてもいいほどの大金強奪だと提案。それは3000万ドルを積んだ現金輸送車を襲うという計画だった。しかし5日以内に現金輸送車がくるので、その機会を逃せば計画は消滅だという。前の仕事が終わってすぐに次の強盗にとりかかるのはメンバーの厳格な作戦ルールに反するが、金額の大きさに釣られ、ロスの人通りの多い場所で爆薬を使用して道路に穴を開け、真っ昼間に強盗をやってのけるという大胆な計画を実行することに。わずか数日で準備、メンバーは込み入ったプランをスタートさせたが、それが残酷なロシアギャンググループとの抗争に巻き込まれることになるとはつゆも知らなかった。その頃、ジャックは絡み合った証拠の一つ一つを解きほぐし、ついにチームリーダーのゴードンにたどりつく。だがテイカーズが計画を実行するまでの時間は刻々と迫っていた……。(KINENOTE)
監督:ジョン・ラッセンホップ
出演:マット・ディロン/ポール・ウォーカー/イドリス・エルバ/ティップ・ハリス/ヘイデン・クリステンセン/ゾーイ・サルダナ
ネタバレ感想
冒頭の銀行強盗シーンはみどころの一つ
よいところを先に挙げておくと、まずは冒頭のシーン。ゴードン(イドリス・エルバ)、ジョン(ポール・ウォーカー)、A.J.(ヘイデン・クリステンセン)、ジェイク(マイケル・イーリー)とジェス(クリス・ブラウン)のメンバー5人が手際よく銀行強盗を成功させるところ。このくだりから、彼らが夜のクラブで豪遊する描写までで、こいつらがプロの強盗であることと、かなりのセレブな生活をしていることがわかる。
強盗団と警察が対照的
いっぽう、そのシーンにクロスしながら、警察官のジャック(マット・ディロン)とその相棒が、犯罪者の家に突入して、一人を取り逃してしまう描写が入る。この対比ですでに、後に対決する彼らが対照的な存在であることが見て取れる。強盗団はスタイリッシュで頭脳派、警官たちは泥臭く、私生活でもいろいろ問題を抱えているのだ。
で、警官2人のほうが、テイカーズたちの存在に気付き、執拗かつ暴力的な捜査を続けながら彼らの叩こうとするヤマを防ぐためにジタバタする。その中で、テイカーズと警官たちの人間模様がそれぞれ描かれる。
『ヒート』に似た感じがある
というふうに観ると、この映画はマイケル・マン監督の名作、『ヒート』と似たような作風の作品だと言えそうだ。実際に、強盗団とそれを摘発する側の対立構造が同じだし。しかし、『ヒート』と少し違うのは、そこに第三者勢力としてロシア系のギャングがからんでくるところ。
このギャングたちは警官側と絡むわけではないので、三つ巴になるわけではないが、終盤のほうのアクションシーンで、大きな役割を果たす。そのホテルでの銃撃戦は、『トゥルーロマンス』を想起させるようなシーンで、なかなか面白い。
パルクール逃亡もみどころ
あと、この作品でのもう一つの面白ポイントは、テイカーズの一員であるジェスが、ジャックとその相棒から逃げ続けるシーンだ。けっこう長い描写なんだけども、なかなか飽きずに観られるのは、ジェスのパルクールが見事だから。
ラストがあっさりし過ぎてて…
てなわけで、アクションパートが結構楽しめるんだけども、もったいないのは先にも述べたように、人物描写に物足りなさがあるところ。テイカーズ側の人間関係とかはそれなりによいんだけども、警察側のそれがなんか深刻な割りにあっさりしていて、ジャックも相棒も、それなりの理由がありつつも仕事を頑張っているのはわかるんだけど、そもそも描く必要があったんだろうかと思わなくもない。
どうしてそうなのかというと、ラストのせいだと思われる。どうせポールウォーカーは生き残るんだろうなと思ってたので、それはいいんだけども、ゴードンやジャックは生死不明のまま、いきなり物語が終了してまう。あの余韻も糞もない引き際がなんとも物語の興をそいでしまっているような気がしてならぬのだ。
ここまで人物描写に物足りなさ云々といっていたが、俺は強盗団側と警察側、どちらにも感情移入して鑑賞していたのである。であるからこそ、結末がどういうことになるのか気になって楽しめていたのに、なんだか両者が痛み分けしたみたいな、作り手側がどうすればよいかわからなくなって逃げてしまったような印象を受けたのである。
例えば、『ヒート』のような終わり方のほうが、よっぽど物語的に余韻が残るいいラストなのである。別に比べても仕方ないんだけども、どうしてこの映画のラストが物足りなくて、『ヒート』はいいのかと考えるに、死ぬべき人間は死んでいるし、勝敗がはっきりついているからなんではないか。
犯罪するなら一人でやるべき
ちなみに、この強盗団がどうしてああした結末を迎えたかというと、欲に目がくらんだのと、ゴーストに引け目でもあるのか、彼のもってきたヤマを受けてしまったからである。あとは、ゴードンが姉のコントロールをしっかりできていなかったから。
と考えるに、彼らもプロではあるものの、プロに徹しきれなかった中途半端な強盗団だったと言えなくもない。ともかく、彼らが身を滅ぼすことになるきっかけは、血縁者など、人間関係によるものなのである。
このブログでこの手の映画の感想でことあるごとに言及しているように、犯罪者が捕まらずにい続けるには、群れずに一匹狼でいることが、最良の選択なのだ。そんなことしてたら映画作品にならんのだけど(笑)。
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