ミッドナイト・ガイズ
アルパチーノとクリストファーウォーケンが共演した、老境友情犯罪映画。役者に存在感があるので、細かいところは目をつむって楽しめる佳作。ネタバレあり。
―2013年公開 米 95分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:かつての仲間たちの生き様が詰まった一夜を描くギャング映画。監督は「酔いどれ詩人になるまえに」に出演する一方「はじまりはキッスから」などでメガホンを取るフィッシャー・スティーヴンス。28年ぶりに出所しかつての仕事仲間と羽目をはずす男を「ゴッドファーザー」で世界的な人気を集め「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」で第65回アカデミー賞主演男優賞を受賞したアル・パチーノが、仲間への思いとボスからの指示の間で葛藤する男を「ディア・ハンター」で第51回同助演男優賞を受賞したクリストファー・ウォーケンが、もう一人の仲間を「リトル・ミス・サンシャイン」で第79回同助演男優賞を受賞したアラン・アーキンが演じている。(KINENOTE)
あらすじ:28年もの長きにわたる刑期を終えたギャングのヴァル(アル・パチーノ)は、出所してまず仕事仲間のドク(クリストファー・ウォーケン)と再会。親友との再会を喜び合い、盛り場へ繰り出して28年分の鬱憤を晴らすべく羽目をはずす。一方ドクは、ボスのクラップハンド(マーク・マーゴリス)から翌朝10時までにヴァルを抹殺するよう指令が下されており、親友を前に葛藤していた。ついには指令についてヴァルに告白してしまう。二人はその問題から目を背けるかのように盗んだスポーツカーで3人目の仲間ハーシュ(アラン・アーキン)に会いに行く。スポーツカーに若い女が監禁されているのに気付いた彼らは、女を連れて首謀者のアジトへ乗り込む。人助けや警察とのカーチェイスなど、娑婆の空気を味わうヴァル。約束の時間は、刻一刻と迫っていた……。(KINENOTE)
監督:フィッシャー・スティーヴンス
出演:アル・パチーノ/クリストファー・ウォーケン/アラン・アーキン
ネタバレ感想
冒頭の画像だけ見ると、非常にバイオレンス色の強い作品と思われるかもしれないが、ああいうシーンは中盤とラストに少しあるくらいで、あとはヴァル(アルパチーノ)とドク(ウォーケン)が過去の友情を確かめ合うような交流シーンが続く、どちらかというと静かな作品。
最近の作品としては、冒頭でド派手な打ち合いやカーチェイスがあるわけでもないので、アクションを主眼としてつくられていないのが分かる。どちらかと言えばヒューマンドラマという感じの作品だ。そこに、老人ならではのギャグがところどこに挟み込まれ、軽く笑わせてもらえる。
ということで、最初から最後まで楽しめる佳作だ。単純に見れば、どこにでもあるマフィアの友情物語とでも言える本作だが、主要人物を務める役者がパチーノとウォーケン、すぐに退場してしまうが、アラン・アーキンというところがいい。役者歴の長い各人が、こうした老境の人物を演じることで、それぞれの人物に深みが出ている感じがするのだ。
特に、3人が絡むシーンはとてもいい。娼婦の小屋でのアーキンのモテぶりはかなりの笑いどころだ。どうすれば、プロをあそこまでメロメロにできるのか、非常に興味深いのである(笑)。また、夜中のドライブおよび警察とのカーチェイスなどは、この3人が昔、チームを組んで銀行強盗などをしていたんだろうなと思わせる。
で、俺はアルパチーノが好きなので、28年の服役期間を経て娑婆に出てきたヴァルのキャラが一番良いと思った。彼は普段はノラクラした感じで女好きの不真面目な人間に見える。しかし、仁義のある男だ。
だから、ボスの息子を撃って服役してからも、組織の内情を警察にチクらなかった。過失とはいえ、息子が死んでしまい、ボスに目をつけられてしまったことで、彼は28年もの間、臭い飯を食うことになるのだ。そして、出所してみたら、友人=ドクに命を狙われることになるのである。そんな彼が、最後の一日を楽しみ、最後に教会で懺悔をするシーンはとてもいい。ハードボイルドな男だ。
ということで、ドクやハーシュもヴァルがいなかった28年間は、腑抜けのようにしか生きられなかったのである。ヴァルが戻ってきたことで、彼らは再び人生を楽しめるようになるのだ。そういう影響力と人間的魅力がヴァルにあるからこその、ラストの展開なのである。
しかし、ドクの孫は大丈夫なんかね。作品では描かれないが、2人がボスを倒せなかったら、彼女にも害が及ぶと思うんだが。というか、あの終わり方だと、おそらく2人は死んだだろうなと思える。大丈夫か? そこだけは気になった。
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