シルミド
金日成暗殺のために集められた31人の死刑囚らが、シルミドと呼ばれる地で特殊訓練を受け、兵士として育てられる。地獄の訓練を経てついに作戦遂行かと思われたが、南北融和の機運が高まったことで作戦は中止。部隊の存在は宙に浮くことになり…。韓国で起きた事件を基にした物語。男汁全開の暑苦しい内容で、突っ込みどころも多い。ネタバレあり。
―2004年公開 韓 135分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:韓国で実際に起こった”実尾島(シルミド)事件“をベースに、政治に翻弄された特殊部隊兵士たちの運命を描いた社会派エンタテインメント。監督は「トゥー・カップス」シリーズのカン・ウソク。原作はペク・ドンホのノンフィクション小説。出演は「オアシス」のソル・ギョング、「MUSA/武士」のアン・ソンギ、「火山高」のホ・ジュノ、「ガン&トークス」のチョン・ジェヨンほか。(KINENOTE)
あらすじ:1968年4月、インチョン沖に浮かぶ無人島シルミドに、死刑囚など重罪を犯した31人の男たちが極秘に集められた。彼らは韓国政府により684部隊の訓練兵という身分を与えられ、北朝鮮の金日成暗殺のための特殊部隊に仕立て上げられることに。隊長のチェ・ジェヒョン(アン・ソンギ)の指導の下、壮絶な特訓を課せられる31人。苛酷な日々の中、第3班班長となったインチャン(ソル・ギョング)は、第1班班長のサンピル(チョン・ジェヨン)とボクシングの試合で対戦、激しい打ち合いの末、勝利する。負けを認めないサンピルはインチャンにさらに喧嘩を吹っかけるが、これをきっかけに二人の間に信頼関係が生まれていく。一方、訓練は日ごとに厳しさを増し、インチャンの班員が転落死するにも至った。かくして3年以上が経過。いよいよ実行の時が近づくが、しかし直前になって、南北融和の気運が高まり外交路線を急遽変更した韓国政府は、中止命令を下した。今や国にとって邪魔になった684部隊の存在を隠蔽しようと、政府はジェヒョンに訓練兵の抹殺を命じる。悩んだ彼は、抹殺に反対する部下チョ(ホ・ジュノ)の出張中に粛正を行なおうとする。しかしジェヒョンの特別な計らいで抹殺計画を知ったインチャンは、サンピルたちと相談し、一致団結。訓練兵たちは銃を手に取り蜂起して、指揮官たちと激しい銃撃戦を繰り広げ、ジェヒョンはすべての責任をとって自殺する。激戦の末に島を脱出した彼らはバスを乗っ取り、ソウルの中心の青瓦台へと向かう。そして手榴弾で全員、バスごと自爆するのだった。(KINENOTE)
監督:カン・ウソク
出演:ソル・ギョング/アン・ソンギ/ホ・ジュノ/チョン・ジェヨン
ネタバレ感想
存在は知っていたが観たことなくて、今回、アマゾンプライムで見つけたので鑑賞した。2000年代の作品で、本作あたりから、韓国映画の実力が日本にも知られるようになってきた印象。つまり、この作品は名作と言われてもいいもので、実際にヒットもしたみたい。
使われている題材は実際に起きた事件のようだが、本作がどこまで史実に基づいた話なのかはわからん。いずれにせよ、国家の思惑に翻弄された兵士たちが、自分たちの存在を誇示するために反乱を起こしたってのは本当みたい。
最後まで観てみると、まぁ何とも酷い話で、権力者たちが兵士をチェスの駒程度にしか考えていないことがよくわかる内容。しかも、反乱を生き残った兵士たちも処刑されちゃって、真相は闇の中。ラスト、お偉いさんが事件の報告書を読んで、それにハンコを押したら書類棚的ロッカーに封印。次第にロッカーの表面が色あせていくのは、それだけ長きにわたって事件が闇に葬られ続けていたってことのわかる演出になっている。
そういうシリアスかつ社会派なお話なわけだが、基本的には死に場所を求めて生きる男たちの暑苦しさが全開かつ全面に押し出されつつ娯楽映画としても観られる感じなので、この汗臭さになじめない人は、あんまりのめり込めないかもしれない。
実際に集められた兵士たちは、全員が死刑囚らなどの囚人だったかどうかはわかんないけども、そういう輩を兵士にしちゃおうってな荒唐無稽な作戦を立てちゃうところがぶっ飛んでますな。作中では、どうせムショで人生終わっちゃうような糞人生を生きている輩が、金日成暗殺という大義を得たことで、死をも恐れぬ人間兵器として成長していくわけだが、ともかくこの訓練が過酷で、死んじゃっている奴らいるからね。
長い訓練を経て、ようやく任務遂行かと思いきや、作戦は中止されることになり、兵士たちはモチベーションだだ下がりしちゃったあとのシーンなどは、なかなかリアリティを感じた。で、脱走兵が出ちゃって、そいつらは何と、民間の女性を襲ってレイプしちゃう。この猿っぷりはひどすぎる。このシーンの女性の扱いがほぼモノみたいで、かなり胸糞が悪い。当時の歴史的背景などを考えると、女性の扱いがこんな感じだったんだろうなと思わせるんだが、にしてもよろしくないシーンであったなぁ。
あとは、行き場をなくした兵士たちが反乱を起こし、バスジャックしてソウルへ向かうくだり。これも酷い。人質いるのにこいつら躊躇なく敵陣に突っ込んでるし、一方の迎え撃つ軍隊のほうも、人質いるのわかってんのに、発砲しまくってるからね。
ちなみに、このバスで特攻するシーンは何となく、クリントイーストウッドの『ガントレット』を思わせた。
ということで、一回は観ても損はない作品ではあったが、内容的にはさほど感銘は受けなかったなぁ。20年以上前のソルギョングが見れたのはよかったが。
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