アンコントロール
―2021年公開 丁 108分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:2020年ヴェネチア国際映画祭国際批評家週間に出品されたデンマーク発の犯罪アクション。若者タリブが嫌疑不十分のまま警察に拘束されゲットーの間に不満がくすぶる。やがてタリブが死亡。警官イェンスとマイクは怒り狂ったゲットーの住人らにたちまち囲まれる。監督は、本作が初長編のフレデリック・ルーイー・ウイーと、「アントボーイ」などの脚本を手がけたアンデルス・オルホルム。出演は「ヴァルハラ 神々の戦い」のヤコブ・ローマン、「ウィンター・ブラザーズ」(トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2019にて上映)のサイモン・シアーズ他。特集『未体験ゾーンの映画たち2021』にて上映。(KINENOTE)
あらすじ:タリブという若者が嫌疑不十分のまま警察に拘束され、デンマークのゲットーの間で不満がくすぶっていた。巡回していた警官のジェンス(サイモン・シアーズ)とマイク(ヤコブ・ローマン)が反抗的な態度を取った少年アモス(タレク・ザヤット)を連行中にタリブが死亡したというニュースが流れ、抑制できないほど怒りに火が付いたゲットーの住人たちにたちまち囲まれてしまう。迷路のような建物に逃げ込むが、銃弾と罵声が飛び交い、動画撮影により行動が筒抜けのゲットーで二人は追われる。出口を見つけるためには、たとえ法に背いてでもあらゆる手段を取らなければならなかった……。(KINENOTE)
監督:フレデリック・ルーイー・ウイー
出演:ヤコブ・ローマン/サイモン・シアーズ/ウズレム・サグランマク/タレク・ザヤット/アイサ・カタブ
ネタバレ感想
デンマーク警察VSアラブ系のゲットーの人々。デンマークも移民がけっこう多いんだね。ぜんぜん知らんかった。ただ、アメリカのゲットーと比べるとデンマークのそれは街並みもそこそこ綺麗。昼間のシーンなんかは普通の住宅街って感じがして、そこがバイオレンスの舞台になるそのギャップが恐ろしい。
最初のほうが白人警官2名のうち、デブのほうが嫌な奴で、こいつが事件の火種にもなっている。一方の痩せているほうの警官は、それなりに正義感の強い奴だ。物語が進むにつれてわかってくるのは、タリブという若者を警官が不当に逮捕した事件の現場にいたらしく、内部調査室から証言を求められている立場にあるということ。しかも彼は、警官側を告発するような証言をするつもりだったらしい。
デブのほうは移民が嫌いらしく、タリブの逮捕も不当ではないと思っているようで、たまたま上の命令で組むことになったこの二人は、表向きは対立していないが、警官としての立場が逆なのである。そんな男たちがゲットーの住民たちに襲われて命を守っているうちに、それぞれの思惑が表出してきて対立を深めていく。
ところが、デブのほうは彼がいいがかりをつけて逮捕した少年のアモスの母親に図らずも命を救われたことや、知り合いの、あるアラブ系の少年の助けを得て窮地を脱したことなどを通じて、自分自身を見つめなおして行動を変えていくのである。そして、痩せているほうの警官はデブと別行動をしていて、デブを先導してくれていたアラブ系少年を過失で撃ち殺してしまう。
デブはその過失をなかったことにして痩せを助けてやると約束するのだが、痩せは罪の意識に苛まれて、自らを裁くべくゲットーの住人たちの軍門に下ることを決めるのだ。
てなことで、細部が全然ないつまらん感想になってしまったが、物語自体はとてもハードな内容で楽しめた。単なるアクション作品ではなく非常に社会派でリアリティのある内容。世界各地で繰り広げあれる移民問題の根深さがよく伝わってくる良作であった。
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