葛城事件
2016年、劇場で見たなかで、強く心に残った作品。
劇団THE SHAMPOO HATの旗揚げメンバーで劇作家にして、『その夜の侍』で監督も務めた赤堀雅秋がメガホンを取ったヒューマンドラマ。次男が無差別殺人を起こして死刑囚となってしまったことで運命が狂い出した、ある家族の行く末を見つめる。『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』などの三浦友和、『さよなら歌舞伎町』などの南果歩をはじめ、新井浩文、若葉竜也らが出演。家族、死刑、贖罪(しょくざい)などさまざまなテーマをはらんだ物語に圧倒される。(シネマトゥデイ )
人の話を聞け!
登場人物のほとんどがどうしようもない人間で、他人の話を聞いていない(聞こうとしていない)。
そのとろろソバ、うまいのか?
中でも三浦友和扮する父親の、笑いすら誘うクズ人間っぷり。
ラスト、庭から戻り、あらためてコンビニのとろろソバを食す姿には神々しさすら感じた次第です。(あのあと数日間、コンビニに行くたびにとろろソバを買って食べたくなりました。買わなかったけど)
セブンイレブン 冷やしとろろそば 1つあたりの栄養成分 カロリー 384kcal 蛋白質 15.8g 脂質 1.9g 炭水化物 76.1g Na 863mg
幸福な人生の過ごし方
それぞれの人物が日常的に行っている言動が各人のその後を決定付け、ラストにつながっていくわけですが、作品を鑑賞した後、それぞれの人物の言動と逆のことをするよう心がければ、一般的に言われる 幸せ(よき家庭をつくるとか)は得られるのかもしれない――と思わされました。
以下、2017年2月12日に追記しました
最もよくわからん人は田中麗奈
DVDで2度目の鑑賞。やっぱすごいですな、この映画。そして、作中の名前がわからんのだけど、田中麗奈扮する死刑反対論者の女性が、やっぱり一番訳分からん。なんなんでしょう、あの人。三浦友和演じる清のほうがよっぽど分かりやすい人だよね。彼の次男も、田中に比べれば、考えていることとかはなんとなく分かる。
どう見たって清=糞親父の言動がこの家族の行く末に与えた影響が最も大きいというのはわかる。とはいえ、彼だけがこの結末を生んでいるのではないってのが、この映画の重要なところだと再認識。
自分はこいつとは違う。こいつらとは違う。みたいな考えをしちゃうのはとても危険で、誰もがここに出てくる登場人物らと同じく、人の話を聞かずに自分のことばっかり喋ってることはあると思う。そんで、どうしようもなくなってから愚痴だけを述べる。
ちょっとした瞬間、少しだけ相手のことを配慮するだけで、人間の関係って良好になるんだろうなと思うんです。俺だってそれが言うほどにできていないのは承知の上で、でもそう思う。
あの糞親父も実は、彼なりに家族を大事に思ってるんだよね。だからこそ余計にムカつきもするんだが。
とはいえ、あの昭和の生き残りみたいな親父は、金物店と家を行き来するくらいの生活しか送ってないせいか、ともかく自分の脳みそというか、価値観が更新されていなかいので、常に自分の考えが正しいと思い込んでいる頑固おやじなんである。
さして儲かってもいない金物屋の親父が、金物脳みたいなカチコチに凝り固まった価値観で親父としての権力を振りかざしているというその姿は滑稽であり、その様が、今の世の中についていけない感がありありで、気の毒でもある。
最後の晩餐、何がいいですか。
物語中、糞親父がいないことで平穏な空気が流れる時間がある。その時に母親は最後の晩餐があるとしたら何が食いたいかを息子らに問う。息子たちが「母さんのつくったご飯」て即答できるような家族だったらこの作品は成り立たないんだけども、そういう家族を作るにはどうすればいいんだろうかと考えさせられる。
簡単なことのようでいて、家族が普通でいるってのは結構難しい。「普通に生きてればこんなにはならないでしょ」とは思えない。そのくらい、この映画で描かれる家族は、誰もが他人事のようには見られない当たり前にある日常の延長なのだ。
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