ロードキラー
車で帰省中の兄弟2人が、無線を使ってトラックの運転手をからかったことで、恐ろしい目に遭うスリラー。最後まで面白く観られるものの、何か物足りなさも感じるもったいない作品。ネタバレあり。
―2001年公開 米 97分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:恐怖のドライヴ・ツアーを描くロード・スリラー。監督は「ラウンダーズ」のジョン・ダール。製作・脚本は「アルマゲドン」などの脚本家J・J・エイブラムズ。撮影は「アンフォゲタブル」のジェフリー・ジュア。音楽は「ザ・ウォッチャー」のマルコ・ベルトラミ。出演は「ハムレット」(00年)のスティーヴ・ザーン、「ワイルド・スピード」のポール・ウォーカー、「愛ここにありて」のリリー・ソビエスキーほか。(KINENOTE)
あらすじ:ボストンを出たルイス(ポール・ウォーカー)は、ソルトレイクシティで釈放されたばかりの兄フラー(スティーヴ・ザーン)を乗せ、コロラドへ向かっていた。その途中、市民無線で交信したラスティ・ネイルという不気味な男が、巨大トラックで彼らを尾行しているのに気づく。そしてそのトラックは彼らの車を追い詰め、押しつぶそうとした。命乞いをしてなんとか見逃してもらった兄弟は、ルイスの憧れの女性ヴェナ(リリー・ソビエスキー)をピックアップし、ネブラスカ州へ向かう。しかしまたラスティ・ネイルの執拗な攻撃が始まり、やがて3人の車は炎上。足で逃げることになった彼らだが、とりあえず助かった。しかしたまたま聞いた市民無線からは、またもやラスティ・ネイルの声が聞こえてくるのだった。(KINENOTE)
監督:ジョン・ダール
出演:スティーヴ・ザーン/ポール・ウォーカー/リリー・ソビエスキー/ジェシカ・ボウマン/スチュアート・ストーン
適当なネタバレあらすじ
女のために車を買った!
大学生のルイス(ポール・ウォーカー)は、幼馴染のヴェナ(リリー・ソビエスキー)に片思いしている。ある日、彼女が高校時代から付き合ってた彼氏と別れたことを聞く。これはチャンスと、故郷に帰省する際に、彼女も誘うことに。「迎えにきてくれるなら」というヴェナの言葉に、これは脈ありと感じたルイスは、ウキウキしながらその要求を快諾。航空券をキャンセルして中古車を購入し、故郷に向かう途上でヴェナを拾う約束をした。
保釈金払って兄貴を助けた
その途上、ルイスは家族との電話で、兄貴のフラー(スティーヴ・ザーン)が刑務所に送られたことを知る。ルイスは兄貴を助けるために、刑務所に寄り道してフラーの保釈金を払うことにした。フラーは定職につかずに警察沙汰になるようなことをしているチンピラだが、ルイスにとっては兄。それなりに仲はいい。いろいろ話をしているうちに、特に行くあてもないフラーは、しばらくドライブに同行することにした。
兄弟の悪ふざけ
ヴェナとの集合場所に向かう途中、フラーは無線機を車に設置して遊び始めた。最初は警察無線などを傍受していたが、近くを走行中のラスティ・ネイルと名乗るトラックドライバーとの交信をきっかけに、悪ふざけを始める。
フラーは、声変わり前、女性の声色を真似るのが上手だったルイスに、キャンディ・ケーンという女性の名前を騙らせ、ネイルに対してテレフォンセックスまがいの対応をするよう迫る。最初は渋々だったルイスも、興がのってきて調子をこき始めた。その、ちょっとした悪ノリが恐怖の始まりになることを、2人は知らない。
モーテルでネイルをはめた
モーテルで休憩することにした2人、フラーが受付に向かうと、従業員に怒鳴りつけている男がいた。自分もその男に横柄な態度をとられたことに腹を立てたフラーは、男が17号室に入っていくのを見て、妙案を思いつく。キャンディケーン(ルイス)にネイルを誘惑させて、17号室で逢引する約束を取り付けることにしたのだ。それが見事成功。
約束の時間、18号室の壁に耳を当て、今後の展開をワクワクしながら待つ2人。そしたら隣室では揉み合う音が。翌朝、外には警察が群がっていた。なんと、17号室の男が死体で見つかったのである。事情聴取をされる2人。ルイスは恐ろしくなってオシッコ漏れそうになり(嘘)、昨晩のできごとを全てゲロッてしまう。その後、保安官にこってり説教をくらった2人は、一目散に目的地に向かって車を走らせた。
ラスティの復讐がはじまる
しかし、しばらくすると無線から声が。ラスティ・ネイルだ。びびりまくったルイスは女を騙っていたことをバラし、謝罪をしようとするものの、無線を奪ったフラーがネイルを罵倒。しかしそれを聞いたネイルは、「車のテールランプを直したほうがいいぞ」と告げる。この台詞が意味することは、ネイルが彼らの乗る車を特定しているということに他ならない。
なぜネイルにそんなことがわかるのか。ルイスとフラーはネイルの姿どころか、彼のトラックすら見たこともないのに。その恐怖に兄弟はそろってオシッコちびりそうなぐらいに震え上がって(誇張あり)、何とか逃げようと思ったが、ガソリンがあとわずか。ということで給油スタンドによることに。
フラーが給油中、氷を運ぶトラックがスタンドにやってくる。運転手は鉄パイプみたいなものを持っていた。それをネイルだと思ったフラーは飛び上がって恐れおののき、再び車を走らせるのであった。すると、そのトラックが追ってくるではないか! しかも、道はどん詰まりになってしまい、万事休す。
運転手がルイスの座る運転席の窓をたたく。もはやここまでーーと思わせておいて、実はその男、ルイスがスタンドで落としたクレジットカードを、親切にも追いかけてきて渡してくれたのだ。フラーをびびらせた鉄パイプはタイヤの空気圧を調べる道具だったのである。ホッとする2人。アイストラックの男は去っていく。
ところがその瞬間、アイストラックの側面に大型トラックが衝突してきた! 今度こそネイルだ! 逃げようとしたがネイルがトラックで体当たりしてきた、彼らの車は木に押し付けられて動けなくなった。このままだと車ごと圧殺されてまうから、フラーは謝罪をし、命乞いをする。「悪ふざけしただけなんだ、勘弁してくれ」するとネイルは言った。「俺も悪ふざけしただけだ」。
ネイルの悪ふざけは終わらない
翌日、2人はヴェナと再会する。車がボロボロだが、ヴェナには事件のことは黙っておいた。夜、3人はバーで酒を飲んだ。酒を注文しようとカウンターに向かったヴェナがチンピラにナンパされた。マゴマゴして彼女を助けられないルイスに代わって、フラーが気転を利かせて彼女を助けた。ルイスは酒が弱く、2人よりも先に潰れたので寝室に戻った。フラーは予想よりかわいくなっていたヴェナにムラムラしていたので、彼女を籠絡するべく、飲みなおそうと彼女を誘った。まんざらでもないヴェナは、フラーを自室に招き入れてやった。
その頃、一人で寝ているルイスの部屋に電話がかかってきた。「女がいるじゃないか」ネイルからだった。驚愕したルイスはフラーにネイルがまだ追ってきていることを告げた。フラーも恐ろしくなり、さっさとモーテルを出ることに。2人はヴェナを連れて先を急ぐことにした。
しかし、途上、過ぎ行く道路標識にメッセージがあることにフラーが気付く。どうやらネイルは、車のトランクを開けろと指示しているらしい。そこでトランクを開けると、そこには昨日捨てたはずの、無線機が入っていたのだ!
無線で交信してきたネイルの話によると、彼はヴェナの友だちを人質に取っているらしい。無線の向こうからは、その友だちの悲鳴が聞こえるから本当のようだ。ルイスとフラーは彼女を救うために、ネイルの指示に従うことになった。
ファストフード店で裸になって、チーズバーガーを12個頼むというネイルのミッションに挑戦する2人。そのグダグダチャレンジの最中に、今度はとうもろこし畑に来いという指令を受け、3人はそちらに向かう。命令で車から降りた3人はネイルのトラックに襲われ、ルイスの買った車は購入から数日で炎上・大破したうえに、ヴェナはネイルに拉致された。
ラストはありがちな、続編匂わせるアレです
途方にくれる2人。次の指令はピンクシャンパンを持って、モーテルへ来いというものだった。おそらくそこには、拉致されたヴェナがいるはず。フラーは途中で捕まったが、ルイスはネイルの仕掛けた罠をなんとかしつつ、ヴェナを助けようとする。現場には通報しておいた警察が駆けつけてきて、モーテルを包囲し始めている。ルイスがなんとかヴェナを助けると、トラックが部屋に飛び込んできた。
突っ込んできたトラックからヴェナの友だちが無事発見される。そして、運転手は死亡していた。警察の話で死体の身元がわかる。その男は氷を運んでいたらしい。それを耳にした2人は、ルイスにカードを届けてくれた親切な男のことを思い出した。ラスティはまだ生きていることを確信する2人。復讐はまだ終わっていないのかもしれないーー。
というところで物語は終わる。
見どころと突っ込みどころ紹介
『激突!』の影響を受けていると思われる
まったく存在を知らなかった作品だが、アマゾンプライムで見つけて鑑賞した。大筋はスティーブン・スピルバーグの『激突!』に影響されていると思われる。あちらの作品も執拗に主人公を追っかけてくるし、最後まで相手の顔は見えない。その筋を基本に、ロードムービー的要素などを詰め込んだスリラー作品だ。
ということで、全体的には大味にできているし、細部の設定に突っ込みたい部分はあるものの、80年代、90年代に地上波の洋画劇場を楽しみに観ていた俺みたいな人間としては、あの当時によく放映されていたB級作品に似た雰囲気を感じる本作を、なかなか好意的に鑑賞できた。
見どころ
と、言ってはみたものの、見どころとして推したい部分がどこにあるかというと、なかなか返答に困る。故人となってしまったポール・ウォーカーのファンなら観たことある作品だろうし、フラーを演じるスティーブ・ザーンはいろいろな映画に脇役で出ているので観たことある人は多いだろうけど、特筆したい何かがあるわけでもない(笑)。同じくヴェナを演じるリリー・ソビエスキーもいろいろな映画に出てるけども、個人的に好みではないこともあって、さして印象にも残らない。
ということで、この映画の見どころは、ストーリーを追っているだけで、それなりに最後まで楽しめる作品に仕上がっているということだろうか。他はーー、やっぱ思いつかない。
突っ込みどころ
突っ込みどころをいくつか。ラスティ・ネイルの神出鬼没ぶり、例えばあんな用意周到に看板に指示を書く暇がどこにあったのかーー的な部分で気になる箇所はけっこうある。
あと、ルイスとヴェナの関係性が生かされているのって、車でルイスが彼女を迎えに行くことを決意したこと以外にあまりないような。旅の途中でヴェナは兄貴のフラーに声かけられてまんざらでもなさそうだし、ルイスはへたれ野郎で彼女にさほどカッコいいところ見せられてないので、たぶん彼女にとってのルイスは、幼馴染以上の存在には見えない。強いていうなら、自分が話したいときに自分の話を聞いてくれる都合のいい男(笑)。だから、ルイスがあの後、彼女にアプローチしたとしても、きっとふられるだろうなと思われる(余計なお世話)。
てな風に書いてみると、ヴェナが嫌な女にも思えなくもないが、兄弟の悪ふざけでトンデモないとばっちりを受けているわけで、その辺は気の毒でもある。
いろいろこうやって感想を書きながら考えてみるに、兄弟のうち、兄は酒場でのシーンが見せ場であるほかは、ただのイキがり野郎でいざというときは単なるヘタレ。
一方の弟はイケメンではあるものの臆病者だし、幼馴染の女性に長いこと告白することすらできないこれまたヘタレ。で、こいつの好きな女性は性格が悪い(勝手な解釈)。――と、登場人物に魅力がないのが、この映画の面白味を薄くしているように思わなくもない。
どうやらシリーズ化しているらしい
とはいえ『ロードキラー マッドチェイス』『ロードキラー デッド・スピード』と、続編もあってシリーズ化されているみたいだから、それなりの需要はあるんだと思われる。確かに、それなりに楽しめるからね。
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