激突!(1971)
解説:ごく普通の男が車で走行中ただ追い越したことだけをきっかけに、殺意に満ちた見知らぬ大型タンク・ローリーに追いかけ回されるさまをスリリングに描いたサスペンス。
監督:スティーヴン・スピルバーグ
以下、ネタバレあり。この記事は2004年に書かれたものです。
他人も怖がらせたい!
以前見たテレビ番組かなんかで、スピルバーグが『ジョーズ』を撮った意図についてインタビューされていました。曰く、「自分が怖いことは、人にも怖がってもらわなきゃ癪じゃないか」だそうです。なるほど。と思いました。あのコメントはこの作品にも当てはまると思いますね。
不気味なトラック野郎
主人公が姿の見えぬトラック野郎に延々と嫌がらせされるという、ただそれだけの話です。それだけなんですが、このトラック野郎、本当に不気味。主人公以外の人間には親切なこともするんですね。そこが怖いですな。エンストだか、ガス欠した幼稚園バスは、助けていました。
しかし、主人公には執拗な嫌がらせをします。たった一回、追い抜かれただけなのに。不気味なのは、トラック野郎の顔が作品を通して一度も確認できないことです。足と手だけしか映されません。顔の見えない他者です。
他人は怖い
この映画、自分に理解できない「顔の見えない他者」、その恐ろしさが表現されていると思います。他者は怖いです。その辺を歩いている人、ただすれ違うだけの人、自分とは関わりのないところで生きている人、考えてみると恐ろしいです。怖いです。他者は怖いのです。
トラック野郎の恐ろしさは他者の恐ろしさです。他者に話し合いは通じません。他者は話し合う余地すら与えてくれません。話せば分かるというのは、嘘です。他者は分かりません。分かり合うことができません。
怖いものと向き合うか否か、どっちにする!?
そうした恐怖、他者というものの根源的な恐怖を描いたのが『激突!』だと思いました。わからないものは怖いのであります。しかし困ったことに、他者は分かりすぎても怖いのです。どちらにしても怖いなら、それと向き合うか否か、どっちを選ぶかは自分次第ですな。
そういえば、「ジョジョの奇妙な冒険」第三部でこの作品に似た話があります。敵スタンドはホイール・オブ・フォーチューンという名で、ガソリンを武器にする車のスタンドでしたね。荒木飛呂彦は映画の設定とか、映画のワンシーンを作品に活かしていること、けっこうあります。この映画もその内の1つってことですね。
他者は怖い↓
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