アイム・ノット・シリアルキラー
ソシオパスの主人公がシリアルキラーと対決する話。シリアルキラーの殺人現場を目撃したことで彼に興味を持ち、相手の生活に入り込んで少しずつ追い詰めていき、クライマックスのあの展開。あれは何だったんだろうか。よくわからん(笑)。ネタバレあり。
―2017年公開 愛=英 104分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:死体や殺人に異常な関心を示す少年と連続猟奇殺人犯の老人、2人の狂気を描いたサイコホラー。アメリカ中西部の町にある葬儀屋。16歳になる息子のジョンは、遺体の防腐処理を手伝う影響からか、死体や殺人に異常な関心を示し、ソシオパス(社会病質者)と診断される。ある日、町で連続殺人事件が発生した。無惨にも切り裂かれ、内臓の一部が持ち去られた死体を目にしたジョンは、殺人鬼が近くに潜んでいることを実感し、その存在に強く惹かれていく。自ら周辺の調査を開始したジョンは、殺人現場を偶然に目撃してしまうが、猟奇殺人犯(シリアルキラー)の正体はジョンの隣に住む老人だった。ソシオパスの少年ジョン役に「かいじゅうたちのいるところ」のマックス・レコーズ。シリアルキラーの老人役に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのクリストファー・ロイド。(映画.com)
あらすじ:小さな田舎町クレイトンに住む16歳のジョン・ウェイン・クリーヴァー(マックス・レコーズ)。学校では、カッとなってランチタイムに同級生たちをフォークでめった刺しにして殺してしまうことを恐れ、孤独に過ごしていた。友達は少なく、人の気持ちも分からず、教師の言うことも聞かない。寝ても覚めても頭の中はシリアルキラーのことでいっぱいだった。家では母親(ローラ・フレイザー)と叔母の葬儀店を手伝って遺体の防腐処理を行なう日々。だが、この仕事は大好きだ。やがてジョンは、”反社会的傾向あり”のソシオパスと診断されてしまう。そして、誰かを傷つけることを望まないジョンは、一線を越えてしまわないよう、自分自身にルールを設ける。追い撃ちをかけるように、連続殺人事件が発生。それは、被害者の体を切り裂いてその一部を持ち去るという小さな田舎町を震撼させる残忍な事件だった。葬儀店でバラバラ死体を洗浄することになったジョンは、本物のシリアルキラーがこの町に潜んでいることを察知。気持ちを昂ぶらせつつ精力的に調査を開始する。しかし、調査が追跡へ、追跡が執着に変わり、凍てつく冬が町を覆い始めると、自分と人々を守るためにジョンが自らに課したルールが崩れ始める。連続殺人鬼の正体とその異様な性質を突き止めたジョンは、自らの手でこのモンスターを阻止しなければならないと覚悟を決める。そしてジョンは、殺人鬼に接近し、彼の日常と家族に溶け込んでいく。殺人鬼に必要とされるほどに関わりを深めていくジョン。自分を頼り、気にかけてくれるジョンがその正体に気づいているとは露ほども疑わない殺人鬼。しかし、ジョンは本当に彼を止められるのか?そのために殺人鬼を殺すことになるのか?ジョンは自分が追っている殺人鬼よりも邪悪な人間になってしまうのか……?(KINENOTE)
監督・脚本:ビリー・オブライエン
出演:マックス・レコーズ/クリストファー・ロイド
ネタバレ感想
設定には新鮮さを感じた
劇場で観たかったのだが、機会が得られなかった作品。レンタルが出てたので早速鑑賞。
表面的には常識的な暮らしをしている2人が、ちょっとしたきっかけでお互いの存在を知り、それぞれの暗い内面を共有しながら、人を殺す側と殺すのを止めたい側の主張がぶつかり合いつつ、血みどろの戦いが行われる内容を期待していた。
しかし、思ったよりも2人の絡みは少なく、あっても主人公が一方的にシリアルキラーに探りを入れているような内容だったので、残念な感じ。とはいえ、ソシオパスとシリアルキラーが戦うという設定には新鮮さがあって、なかなか楽しめた。
不満なところ
ただ、主人公のジョンと少しいい仲になる少女って、あんま物語に関わってこないし必要あったのかなぁとか、ジョンの人格形成にかなり影響を及ぼしたと思われる彼の父親は、母親と現在どういう関係にあるのかがよくわからないとか、不満な点もある。
あと、ジョンと対決することになるシリアルキラーの殺人行為が適当すぎるところが萎える。こいつは長きに渡り人を殺し続け、捕まらずにいるわけだが、あんな大っぴらに人を殺してたら、どう考えたって目撃者が出てくると思う。年齢を重ねたことで用意周到さが失われていったという見方もできるけど、ちょっと無理があると思った。特に、ジョンの友だちのマイク? の親父を殺すシーン。あれはバレちゃうだろ、絶対。
ラスト近くの超展開(笑)
で、この作品で驚いたというか呆気にとられたのは、クライマックスのシーンだ。ジョンの活躍により、葬儀屋の遺体処理場? で防腐処理をすることで始末されることになったシリアルキラー。その処理を施されると、彼の体からドロドロした泥みたいなのが大量に出てきて(殺人現場にあった黒い泥と同じものらしい)。そいつが合体して奇妙な怪物になるのだ。
オイオイオイオイ
そういう映画かよ。そういう作品だったのかよ。と呆気にとられました。で、その怪物は、自分の体に鉄の棒みたいなのを突き刺して、自殺してしまうのである。あれはなんだったんだ!?
結局、なぜ怪物が現れたのかなどの説明はなく、物語は終わってしまう。俺には何だかさっぱりわからなかったのだが、でもまぁいいか。と思えた。特に怒りを感じることもなく、それなりの満足感を得てエンドロールを眺めることができた。何でなのかはわからない。
ジョンは普通の人間だ
死体好きな殺人研究家
主人公は感情表現が苦手で、他人にはあまり理解されないタイプのよう。そして、実家が葬儀屋で遺体の防腐などを手伝っているせいか、死体そのものに異常な興味を持ち、実在したシリアルキラーの研究を個人的に進めている。
そのせいなのか、元来そういう人なのかわからないが、彼は自分自身も殺人を犯したいという衝動を抱えており、それが現実のものとならないよう、自己を抑える努力をしている。しかし、隣人の老人がシリアルキラーであることを知り、彼の身辺を探っていくうちに、自分の中の殺人衝動がムクムクと芽を出し始めていることを感じるのだ。
しかし彼は、自分がそうなることを望んでいない。その意味では社会的常識になじめず、他人の言動の意味を理解できない部分はあるものの、根っこの部分ではまともな人間であり、善悪の判断ができる、普通の人間なのである。
みんな心を病んでいる
実は彼のように病気としてのレッテルを張られなくても、多くの人間が彼のように、病的な何かを内面に抱えているもんではなかろうか。彼のように自覚しているほうがまだマシで、自分の中にある狂気を認めようとしない人間のほうが、実は常軌を逸した行動に走りがちなんではないかと考えられなくもない。
要するに何がいいたいかというと、主人公のジョンが病的でかなりヤバいやつだというのは認めるものの、彼は作品全体を通して、何の罪も犯していないのである。だから、普通の少年なのだ。そしてそれが、社会に生きる普通の人間の姿なのではあるまいか。つまり、程度の差こそあれ、人間はみんな病的な動物なんである――ということだ。
そして、そういうもんだと思って生きたほうが、他人にも自分にも、寛容な心で生きられるのではないか。
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