追撃者(2000)
故郷で死んだ弟が事故ではなく殺人なのではないかと勘繰った兄貴(スタローン)が、故郷に戻り弟の死の原因を探ってみると、そこには黒社会の影が…。低迷期のスタローンがスーツを着てハードボイルドな男を演じているが、何とも中途半端にな感じのするスタローン好きじゃなければ観なくていい作品。ネタバレあり。
―2000年製作 米 103分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:裏社会の過激な抗争を描くハードボイルド・アクション。71年のイギリス映画「狙撃者」のリメイク。監督は「死にたいほどの夜」のスティーヴン・ケイ。製作は「恋愛小説家」のマーク・カントンほか。脚本は「ボディ・ショット」のデイヴィッド・マッケンナ。原作はテッド・ルイスの小説。撮影は「シンドラーのリスト」のマウロ・フィオレ。音楽は「最終絶叫計画」のタイラー・ベイツ。出演は「コップランド」のシルヴェスター・スタローン、「スリーピー・ホロウ」のミランダ・リチャードソン、「シーズ・オール・ザット」のレイチェル・リー・クック、「バッファロー’66」のミッキー・ローク、「 狙撃者」の主役でもあった「サイダーハウ ス・ルール」のマイケル・ケイン、「フリントストーン2/ビバ・ロック・ベガス」のアラン・カミング、「セレブリティ」のグレッチェン・モルほか。(KINENOTE)
あらすじ:ジャック・カーター(シルヴェスター・スタローン)は、ラスベガスの裏社会で、悪党から借金を回収する闇組織の取立屋として君臨する男。ある時、彼はシアトルに住む弟が死んだことを知り、葬儀に出席するためにシアトルへと急行する。何年も音沙汰がなく、久々に姿を見せたジャックに、弟の妻グロリア(ミランダ・リチャードソン)は良い顔をしない。やがて、ジャックは弟とバーを共同経営していた英国人ブランビー(マイケル・ケイン)、弟の浮気相手であったジェラルディン(ローナ・ミトラ)、そして彼女の愛人サイラス(ミッキー・ローク)らの存在を知る。弟は、サイラスの組織の陰謀によって殺害されたようだ。弟の娘ドリーン(レイチェル・リー・クック)が組織の連中にレイプされており、その映像が収められたディスクを明るみに出そうとしたのが原因であった。復讐を誓うカーターは、闇組織の関係者を一人、また一人と追い詰めていき、サイラスとの対決に向かうのだった。(KINENOTE)
監督:スティーヴン・ケイ
出演:シルベスター・スタローン/ミランダ・リチャードソン/レイチェル・リー・クック/ミッキー・ローク/マイケル・ケイン/アラン・カミング/ローナ・ミトラ/グレッチェン・モル
ネタバレ感想
スタローンとミッキーローク
ネットフリックスて見つけて鑑賞。スタローンの数ある作品の中で、存在を知らないまま未見で放置してた。2000年代初期のスタローンは低迷してたような印象があって、あんまりパッとした作品はないんだけども、けっこう有名なキャストがそろう、本作を見逃していたのはなぜなのか謎。まぁその辺は個人的な話なのでどうでもいいことではあるが。
てなことで、スタローンの他にミッキーローク、マイケルケイン、ローナミトラ、ジョンCマッギンリーとか知った顔がけっこう出ている。ミッキーロークもこの当時は(最近もそんな感じだが)低迷してて、本作はスタローンが声をかけたことで出演が決まったとかいう話もあるみたい。
ついでに調べたところ、本作はマイケルケイン主演で過去に撮られているようで、そのリメイクらしい。どうもそれと比べると、ストーリーがぶっ壊れてるっぽいなぁ。
カーターの過去が謎過ぎ
まず、ハードボイルドタッチで描かれるのは良いとして、あまりにも人物描写が適当すぎて萎える。スタローンはベガスでギャングのボスに雇われて取り立て屋をやってるみたい。それはいいんだが、ボスや同僚に対して終始偉そう。
戦闘力に自信があるにしたって、雇い主の組織のボスにまで居丈高な態度で、しかもボスの愛人を寝取っちゃっててるとか、その豪胆さはすごいんだけども、じゃあその寝取ったボスの愛人とうまくいってるかというとそうでもなくて、結局は振られちゃってるぽいからね。なんなん、あの展開?
しかもスタローン扮するカーターはその女性に作中だけでも2度振られてて、そんな女性と組織を捨てて高飛びしようとしてたってんだから、どんだけコミュ障なんだよ。二人のこれまでの関係性や組織でのカーターの立ち位置をもう少し説明してくれないと、作中での描写だけでは意味のないエピソードにしか見えない。
にもかかわらず、大筋となる弟殺しの真相究明に並行して、ボスの派遣したカーターの元相棒らが襲い掛かってくる。話の本筋とは別の展開がまったく効果的でなくて、めちゃくちゃ。
じゃあ本筋はどうかというと、カーターは弟のいる故郷をなんらかの犯罪、暴力沙汰で去ることになったらしいが、過去がまったく語られることがない。ミッキーローク扮するサイラスとも過去に因縁がありそうな会話があるのに、その因縁もなんなんだかわからん。
ハードボイルというより説明不足
ハードボイルドタッチなのはわかるんだけど、語らずとも主人公の背景なりなんなりを描写で説明したりするからこそ、作風がハードボイルドに感じられるわけで、今作のスタローン=カーターはタダのダンマリ野郎にしか見えない。
語らないと言えば、それは他の登場人物も一緒で、カーターの弟の妻も、カーターが事件に介入してくるのを嫌がるだけで、何で嫌なのかを「嫌だ」というだけできちんと説明しない。どいつもこいつも説明しない。
唯一、カーターの姪っ子だけはこの事件の発端となるレイプ事件の被害者であることを暴露するわけで、一番重たい話を一番若い人にさせておいて、大人であるカーターは自分の過去をはぐらかして話さない割には、この姪っ子がカーターに心を開いている謎展開。
さらに、ローナミトラ扮する娼婦は序盤から情報持ってる癖にカーターに語らずにいて、でも結局は何かに怯えてカーターに情報を与えて、自分は自殺しちゃうというトンマさ。
カーターVSサイラス(笑)
その他にもダメなところが満載で、例えば見せ場となるカーターとサイラスの2度にわたる喧嘩シーンも堂々とタイマン張っているわけでもなく、サイラスが背中を見せた瞬間にカーターが攻撃しかける、でも失敗してボコられる。2戦目はまたも背中を見せてスキをつくっといて、今度は自分から攻撃するサイラス。それを見切ってサイラスをボコるカーター。何なんだよ、この茶番。戦い方がダサすぎる。
さらに、この事件の黒幕はサイラスってことになってるみたいだが、IT長者の青年がカーターのボスと関わっているような描写もあり、サイラス自身も別のボスの存在を匂わせ、マイケルケイン扮するオッサンも黒幕の存在を示唆してて、それはおそらくカーターのボスなんだろうなと想像し得るんだが、そこについても説明が適当すぎて支離滅裂。
でも、たぶんボスが黒幕なんだろうからカーターはボスも殺しに行くんだろうなと期待してたら、カーターがラスベガスに戻ることを示唆する描写があるだけで、ボスを殺す結末は見せない。なんだよそれ、絶頂に達する前にお預けされて我慢汁で満足しろと? あほか。
スタローンが好きなら見てもいいのでは
とかとか、思い返すに酷い作品なんだけど、実は個人的にはけっこう楽しんでしまったのだ。何でかって、スタローンが出ているからね。しかも、常にスーツを着てる姿ってのがなかなか新鮮に感じられて、かっこよろしい。あと、カーターが姪っ子がレイプされてたことを知った時の動揺ぶりは、なかなか迫真に迫ってて、必死こいて姪っ子を慰めるシーンは必見。姪っ子の女優さんもけっこう美人で良かった。しかしそのくらいで、他にいい所はない。だから、スタローンが好きじゃなければ観なくていいんじゃあないかね。
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