イーグル・アイ
謎の女によって自身の行動のすべてを制御されてしまったシャイア・ラブーフとミシェル・モナハンが、仕方なく謎の女の命令に従っていくうちに国家レベルの事件に巻き込まれていたことを知り、ジタバタもがくサスペンスアクション。ネタバレあり。
―2008年公開 米 117分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:現代のネットワーク社会から起こるサスペンスを描いた社会派アクション。製作総指揮を務めるスピルバーグが長年にわたって温めていたという企画が、D・J・カルーソー監督とシャイア・ラブーフという「ディスタービア」のコンビによって実現した。他の出演者には、「近距離恋愛」のミシュル・モナハン、「庭から昇ったロケット雲」のビリー・ボブ・ソーントンなど。全編にわたって、D・J・カルーソー監督によるヒッチコックへの21世紀バージョンのオマージュが横溢する。大型エンターテインメントでありながらテクノロジー社会と、アメリカ政府を批判するポリティカルさも内包している。(KINENOTE)
あらすじ:シカゴで働くジェリー(シャイア・ラブーフ)のもとに届いた連絡、それは空軍に勤める双子の兄の死を告げるものだった。優秀な兄へのコンプレックスから、大学卒業後も放浪生活を続けていたジェリーは大きなショックを受ける。葬儀に出席して帰宅する途中から、ジェリーの身辺には異変が起こる。銀行口座には75万ドルが振り込まれ、自室には組立式の軍事兵器が山のように届く。そして、携帯電話による謎の女の声から命令を受ける。事態を理解できないジェリーは、駆けつけたFBIによって逮捕された。取調室でジェリーは、テロ犯の容疑をかけるモーガン(ビリー・ボブ・ソーントン)に対して無罪を主張する。そこに、また例の女から電話があり、その指示に従うことで逃亡に成功する。彼を待っていたポルシェには、シングルマザーのレイチェル(ミシェル・モナハン)が乗っていた。彼女もまた息子の生命と引き換えに謎の女から脅迫され、操られていた。街中のあらゆるディスプレイ映像を使って、謎の女はジェリーとモーガンに指示を出してくる。そして、二人が導かれるようにたどり着いたのは、米国の国防総省だった。その地下の通称イーグル・アイには、あらゆるネットワークに通じたハイパー・コンピューター「アリア」があった。米軍によって開発されたアリアは自らの意志を持ち、不適切な判断によってアフガニスタンで爆撃を行った大統領らを抹殺する「ギロチン作戦」を企てていた。それを察知して音声ロックを掛けたのがジェリーの兄であり、彼に代わってロック解除のためジェリーを呼び寄せたのだ。兄を殺したのがアリアだと知ったジェリーは怒り、その本体を破壊する。アリアによって実行されようとしていた「ギロチン作戦」も未然に防ぐジェリー。それから半年後。数々の危機をともにしたジェリーとレイチェルの間では、新たな関係が始まっていた。(KINENOTE)
監督:D・J・カルーソ
出演:シャイア・ラブーフ/ミシェル・モナハン/ロザリオ・ドーソン/マイケル・チクリス/アンソニー・マッキー/ビリー・ボブ・ソーントン/ウィリアム・サドラー
ネタバレ感想
主人公視点の時系列を無視した適当なあらすじ
米国防総省のスーパーコンピューターのイーグルアイが、自らのプログラムに従い米国の上層部のお偉方を粛正して政権交代を図ろうと企む。
事の発端は、テロ組織との疑いがある人物を大統領権限で攻撃してみると、その相手がテロとは無関係の人間だったことが判明。それを知ったイーグルアイ=アリアは、お偉方を粛正にかかるのである。実にまじめだな。
シャイア・ラブーフ扮するジェリーは空軍に属していた双子の兄貴の死をきっかけに、そのコンピューターの命令に従って、上層部暗殺の計画に加担することに。彼とコンビを組むことになるミシェルモナハン扮するシングルマザーのレイチェルも、自分の息子を人質に取られてアリアの命に従い、ジタバタすることに。FBIに追われることになった二人はいったいどうなってしまうのかーーというのが適当すぎるあらすじ。
技術的特異点
ネットにつながる機器を自由に操れるコンピューターってのはなかなか今的ではある。とはいえ、この作品は2000年代の代物であるから、今はもっともっと技術が発展してて、仮にこうしたシステムがどっかで稼働してたとしたら、できることはもっといっぱいあるのかもしれない。
これよりも少し前に、ウィルスミスが出演してた『エネミーオブアメリカ』もコンピューターによってすべての動きが監視されてしまうことの恐ろしさを描いてたけども、今となっちゃ、あんなん可愛いもんだなぁって思っちゃう。
この作品のコンピューターは人類を滅ぼそうってわけではないからまだマシだけども、コンピューターが人間の制御を越えちゃって人類の脅威になることは当然ありうる。というか、こういう技術を生み出す人は、ある程度はそれを覚悟の上でやってんだろうし、もしかしたら、自分の研究欲とか出世欲とか名誉欲のためにやってる人もいるかもしらん。そうだとしたらはた迷惑この上ないわけだが、こうした技術を権力者は欲しがるだろうわけで、本当に救いがたい話である。
で、こうした技術文明について警鐘を鳴らす作品なんてのは、俺の知らん作品も含めて、もうずいぶん昔から存在してて、枚挙にいとまがない。それでも似たようなテーマで作品がつくられ続けるのは、人類が幾多の作品から学ぶことなく、同じことを続けているからだろう。そして、技術的特異点に到達する日は間近に迫っているのだ。本当にはた迷惑かつ、救いがたいアホですね、我々は。
コメント
この作品のAIって自我が目覚めてというより実は人間のために(さらにいうとアメリカ人のために)動いていますよね。
「彼女」の中で機械的に物事を考えて、ああするには最も効率が良いという結論に至っただけであって、別に人間を支配しようとしていない。ただ不要な者を「削除」し、「彼女」の思う大統領に相応しい者を「クリック」しただけ。やり方は人間の視点から見てひどいが、機械からすれば至極合理的です。
確かに合理的ですよね。彼女の考えるまともな「大統領候補」がそのまま大統領になったとしたら、それはそれでいい世界なのかもしれないなぁとは思いました。そういう結末にはもちろんならなかったですけど(笑)。