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映画 ランダム存在の確率 ネタバレ感想 隣の芝生は青いラスト

映画 ランダム存在の確率
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ランダム 存在の確率

―2013年製作 米 88分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:彗星が接近した夜、自分と全く同じ姿をした人間に遭遇した男女の運命を描いたSFスリラー。出演はテレビ『レジェンド・オブ・ザ・シーカー』などで活躍するエミリー・バルドーニ、「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」のモーリー・スターリング。監督・脚本は「ランゴ」の原案を手掛けたジェームズ・ウォード・バーキット。(KINENOTE)

あらすじ:ミラー彗星が地球に最接近する夜。エム(エミリー・バルドーニ)は恋人のケヴィン(モーリー・スターリング)とともに、友人主催のホームパーティーに訪れる。だが、男女8人で楽しく過ごそうとしていた矢先に突然の停電。暗闇の中でパニック状態に陥ったエムたちは、外の様子を確認に出るが、そこにいたのは、全く同じ家に住み、全く同じ姿をした自分たち。別世界の自分たちが、同じ空間に同時に存在するという驚愕の事実を目の当たりにした一行の運命は……?(KINENOTE)

監督:ジェームズ・ウォード・バーキット
出演:エミリー・バルドーニ

ネタバレ感想

超適当なネタバレあらすじ

彗星が地球に接近してきた夜、なぜか主人公のエムたちが滞在する友人宅周辺は別次元の自分たちが生存する世界と接続する。最初は別次元は一つしかないのかと思っていたら、実は無数の別次元の世界を互いに行き来できるようになっていた。

エムは元通り、自分の存在したオリジナルの世界に戻りたい――と思っていたが、それが不可能であることを悟り、むしろ今の自分の境遇よりも幸せそうに暮らしている別のエムがいる世界に遭遇したことをいいことに、その世界のエムの殺害を試みてその次元に住み着くことを考えた。

しかし、その次元のエムを完全に抹殺することができず、他の次元との接続が閉じてしまい、その世界には二人のエムが存在することになった――というのが超適当なネタバレあらすじ。

別次元の可能世界がシャッフル

これ、何度か鑑賞するとより理解が深まると思われる作品だ。おそらく冒頭シーンから間もない間に、エムは別次元の世界に入り込んでいると思われる。じゃあ入り込んだ先の世界のエム2はどこにいるんだよっていうと、おそらくエム2は例えばエム3のいる世界に迷い込んでいるのかもしれない。

要するに、無限にいるエムたちは相互に自分たちの存在した世界をシャッフルされていて、元の世界には戻りようがなくなっているのである。であるから、エムの友だちたちもシャッフルしているわけで、元の8人が次元が複数現れる前の状態のままで共存できている可能性はほぼゼロに近くなっているはず。そして、作品内ではそれが実現せずに幕を閉じる。

隣の芝生は青く見える

何というか、非常に説明の難しい作品だし、地味なので改めて鑑賞する機会は俺にはないだろうと思うものの、その内容自体は非常に興味深く、うまくストーリーもまとまっている佳作だと思った。出てくる登場人物たちもそれなりにクズ人間で、自分で自分を殺す発言しちゃう奴もいれば、実際にやってのけるエムみたいな人もいる。

彗星が近づくことで別次元の世界とオリジナル世界がシャッフルされるという設定そのものに説得力はないものの、ラストのオチというかエムの選択についてはなかなか納得できるものであり、まさしく隣の芝生は青く見える――しかも自分の芝生(厳密に言うと存在的には赤の他人だが)を探したいと思う気持ちは誰にでも起こるものだろう。

永井均先生の哲学

劇中、メガネの女性が自分の旦那(オリジナルでない可能性が高いが)に対して、「この世界のあなたは、どの世界のあなたよりも私に愛されているもの(字幕)」というシーンがある。ここで彼女がいう「この世界」というのは彼女の主観から見た世界のことであり、エムがしたラストの殺人行為は、メガネ女性が言った「この」を放棄して、「その」や「あの」世界を自分のものとして「この世界」に変換しようとする行為で、それは他者の魂(殺される対象のほうのエム)に対する冒とくとも言える行為だ。

ここでいう魂とは、エムと恋人のケヴィンの関係でいうなら、オリジナルのケヴィンとケヴィン2は、エムにとってはどちらもケヴィンであって、どっちと付き合っても大して変わらないという他者に対しての区別の中にこそ現れる。本来はどちらも変えの利かない別の存在であるのに、エムはその存在の差異を感知してはいない。それが俺が言う魂に対する冒とくである。

いっぽう、メガネの女性は自覚的ではないにしても、それを知っている。それが、「この世界のあなた」と「どの世界のあなた」という言葉の使い分けの中に隠されている。この問題については独在性という言葉で哲学者の永井均先生が論じ続けている一連の哲学があり、それこそがまさに哲学で、それ以外に哲学なんてないのではないかと思ってしまうくらい哲学的なので、興味がある方は永井先生の著書を読むことをおススメする。

ちなみに、俺は永井先生の言っていることをほとんど理解できていない類の人間だが、そのテーマとしている内容については、俺と同じことを考えている人がこの世にいて、それを他人に解説できるように学問として追究している人がいることに、非常に感動を覚えた。

ーーという全然関係ない話になったが、本作は地味な感じだけどけっこう面白いです。

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