黒の教育 ディレクターズカット
高校卒業を記念して酒宴を開いてた3人の男子が、酒の勢いで調子こいてたらエライ目に遭う話。とはいえ別に同情の余地はない。ネタバレあり。
―2023年配信 台 83分―
あらすじ・スタッフとキャスト
あらすじ:高校最後の夜を記念して、3人の男子たちは危険なゲームをすることに。やがてゲームは思わぬ事態へと発展し、3人は悪夢のような大混乱にのみ込まれてゆく。(Netflix)
監督:クー・チェンドン
出演:ベラント・チュウケント・ツァイエディソン・ソンレオン・ダイ
ネタバレ感想
ネットフリックスで見つけて鑑賞。タイトル通りの話で、高校卒業した3人の男子が人間関係（友情と言うべきか）のクソさ加減を知って大人への階段を上る話ってな印象を受けた。その、大人の階段上るための教育を施してくれたのが、ヤクザや汚職警官（それともヤクザの犬？）、および、友人たちだったってな感じ。
冒頭の善人1割、悪人1割、どっちにも転がる人が8割ってなことをのたまうのは、先述の汚職警官で、この警官がヤクザをからかって追われる身となった男子3人組をヤクザに引き渡す役目を果たす。その過程の中で彼が新米の女性警官に開陳するのが、善人と悪人の比率の話なんである。
鑑賞後、この映画が言っているのは、8割、つまり人間の大部分は状況によって悪にも善にも転ぶってことなんかなと思った。だが、よう考えてみれば、どっちにも転ぶというよりは、悪のほうに転んでる人しか出てこないように思える本作においては、悪人が9割と言っていいんではないかと思うのである。
新米の女性警官も志は高そうだったが、上司の不正を容認しちゃってるし、男子3人組は表向きは仲良さそうだったけども、酒が入って本性が出てからは嘘つきまくり、お互いを信用してないのがよくわかるし、であるから、ヤクザに捕まって指詰めゲームに参加せざるを得なくなる。
そのほか、タクシーの運ちゃんもクソ人間だし、売春婦の人もクスリ漬けだし、およそ普通ーーと言ってもいいような人間は出てこない。むしろ、ヤクザは悪であることを自覚して悪行を重ねているわけで、こいつらのほうが潔いと言えば潔い。
ともかく、そのろくでもない人間たちの中で、もっとも未来があるのはやっぱり男子3人組。彼らは虚栄心や将来の不安やら嫉妬やら、10代の頃にはありがちな男子のダメさ加減をこれでもかと体現してくれて、自分もあんなしょうもない奴だったなぁ（今もしょうもないけど）とオッサンの心をえぐってきやがる。
彼らの嘘とか虚勢を張って悪ぶる姿、男だったら誰でも身につまされるところはあるんではなかろうか。もちろん、レイプや殺人をしたことなんて、嘘にしても話を盛りすぎだろって感じだが、彼らのハリボテみたいな友情は、ラストに向かって破局を迎えることになる。
自分を振り返るに、当時の友人たちとはもう少しマシな関係性を築けていたとは自負するものの、何か身に危険の迫る大事や、自身の将来に影を落としかねない出来事が身に降りかかったとしたら、本作の3人組のように自己保身に走っちゃっていたかもしれない。
そんなわけで、登場人物たちをクズでカスでどうしようもない奴らだなぁと思いはすれども、やはり自分の中にあるキズをえぐられているような痛みはある。
そんな彼ら、お互いに指を詰めあうことになって（あんな簡単に素人が指を落とせるのか。そして、その後、あれだけの長時間痛みに耐え続けられるのかという疑問はあるものの）、ヤクザのアジトを退去してのちは、それぞれが別の方向へと歩き出して物語は終わる。卒業を機に彼らはまさに訣別を果たし、二度と会うことはないそれぞれの道へ進んでいくのだ。
将来的に旧交を温める仲として関係性を継続できそうになくなったのは気の毒といえば気の毒だが、それも身から出た錆。もともと彼らの間にはハリボテの絆しかなかったと解釈するならば、それぞれが何かを学んで新たな道へ進むことになったあの結末。つまり彼らは大人の階段を上ったのだなぁと思うのである。
短くまとまってるのもなかなかよく、昔の自分を思い出したい人にはオススメ。
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