返校 言葉が消えた日
1962年の台湾、国民党による戒厳令下の学校では、反体制的な教師や生徒を密告することが奨励されていた。ある学校の男女の生徒が、校内で目覚めてみると、校舎の雰囲気が一変しており、しかもそこには誰もいない。いったい何が起こったのか。台湾でヒットしたゲームを基にした作品。ネタバレあり。
―2019年製作 台 103分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:台湾の大ヒットホラー・ゲームを実写化し、第56回金馬奨で最優秀新人監督賞を含む5部門を受賞したダークミステリー。女子高生ファンが教室で目を覚ますと周囲は無人。校内をさ迷う彼女は、政府から禁じられた本を読む読書会メンバーの男子学生ウェイと出会う。主演はドラマ『あすなろ白書~Brave to Love~』のワン・ジン。ジョン・スー監督による長編デビュー作。(KINENOTE)
あらすじ:1962年、蒋介石率いる国民党の独裁政権下の台湾。市民は、相互監視と密告が強制されていた……。翠華高校に通う女子高生ファン・レイシン(ワン・ジン)が放課後の教室で眠りから目を覚ますと、何故か学校には誰もいない。校内を一人さ迷うファンは、政府から禁じられた本を読む読書会メンバーで、秘かに彼女を慕う男子学生ウェイ・ジョンティン(ツォン・ジンファ)と出会う。ふたりは協力して学校からの脱出を試みるが、どうしても外に出ることができない。それでも、消えた同級生や先生を探し続けるファンとウェイ。やがて、悪夢のような恐怖がふたりに迫るなか、学校で起こった政府による暴力的な迫害事件とその原因を作った密告者の哀しい真相に近づいていく……。(KINENOTE)
監督・脚本:ジョン・スー
出演:ワン・ジン/ツォン・ジンファ
ネタバレ感想
全然存在を知らなかったのを、レンタルで鑑賞。権力によって自由が奪われた若者たちの学校生活を描きつつ、それにホラーと青春要素を詰め込んだみたいな内容だった。
何でもこの作品は台湾でヒットしたホラーゲームが原作らしい。で、この映画も出来がよろしかったようで、けっこうな話題になったみたいですな。
その辺の前知識をまったくもたずに鑑賞してみたら、なかなか窮屈そうな学校生活だなーと思わせる冒頭から、主人公2名が悪夢のような世界に迷い込んでしまい、ジタバタするホラー展開に。
なんなんだ、この映画は、ちゃんと謎を解消して終わってくれるんだろうかと不安になりながら鑑賞を続けていたら、それら異世界の出来事を通じて、登場人物たちが現実世界でどのようなことをしたかが明かされていく。
舞台となる1960年代の台湾の学校では、言論統制がされていて、発禁されてる書物を隠れて読んでいる教師や生徒たちは、摘発の対象になっている。んで、この映画の現実世界では、そうした書物を読書会と称して隠れて読んでいた教師や生徒が当局にとらえられ、拷問の末に処刑されていく。
一方、その夢の中にいる男女の生徒は、校舎の中を彷徨い歩く中で、自分たちがそれぞれ何をしたのかを知っていくことになるという展開。
最終的に、生徒たちを告発したのは主人公の女性とのほうだったというオチ。彼女は反体制側の男性教師と恋仲にあったらしく、その仲を引き裂こうとした女性教師が邪魔だったみたい。
で、その女性教師も反体制側の人だったので、彼女を告発して男性教師とハッピーになりたかったんだけど、その行為によって、意中の男性教師も、彼を慕う生徒たちも全員が摘発されてしまう。その中で、主人公だった男子生徒だけを夢の世界の中で救うことで、生きながらえさせることに成功。しかし、現実の自分は罪の意識に苛まれて自死していたーーという内容だったようだ。
おそらく、女生徒は自死したことで無間地獄のような夢の世界で罰を受けていて、男子生徒はそこに迷い込んでしまっていたーーというような構造のように思われた。
ということで、全編通して重苦しい雰囲気の内容で、ラストはそれなりに救いがあるとはいえ、生き残った男子生徒は同志を失って自分だけが生きながらえているわけで、ある意味では気の毒。
ただまぁ、どんな状況下でも生きていることに希望があるーーという作品のテーマを考えれば、やっぱりハッピーエンドなんかな。
女生徒のしでかしたことは、かなりクズ。ではあるが、彼女がそういう行為をしてしまうのは、家庭内の問題なども影響しておるわけだし、意中の教師が反体制側の人間だったことを知らなったということもある。
単に、自分の恋心を満たしたいがためにやったことだったのだ。彼女が自由な時代に生きている人であれば、ここまで人が死ぬ事態にはならなかったであろうという意味で、戒厳令下における若者の青春がいかに暗く、抑圧されていたかがうかがい知れるのである。
権力によって自由を奪われている時代に生きるのって、本当にディストピア過ぎて嫌だなってのがよくわかる映画ではあった。じゃあその内容が面白かったかと言われると、個人的にはそんなに楽しめはしなかったかな。
しかし、この作品を観て、今の日本も着実に権力によって自由を奪われていきつつあるんじゃないかなぁと思ってしまった。嫌だなぁ。
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