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映画 あるいは裏切りという名の犬 ネタバレ感想 実話をベースにした警察の話

あるいは裏切りという名の犬
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あるいは裏切りという名の犬

かつて親友同士だったが今は不仲になっている警官2名が、ある強盗事件の捜査を巡って対立し、グチャグチャな人間関係になっていく話。インパクトはあるが大仰な邦題はようわからんが、ハードボイルドなフレンチノワール作品。ネタバレあり。

―2006年公開 仏 110分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:実際に警察官だった経歴を持つオリヴィエ・マルシャル監督が、当時の事件や実在の人物に基づいて警察内部の暗部をあばくフレンチ・ノワール。フランスを代表する二大男優、ダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデューが主演する。(KINENOTE)

あらすじ:パリ警視庁のレオ・ヴリンクス警視(ダニエル・オートゥイユ)とドニ・クラン警視(ジェラール・ドパルデュー)は、かつて親友であり、同じ女性カミーユ(ヴァレリア・ゴリノ)を愛した。しかし彼女はレオと結婚、以来二人の友人関係は崩れ、互いが従える部署も対立していた。パリでは現金輸送車強奪事件が多発し、その指揮官にレオが任命される。事件をずっと追ってきたドニは、ライバルに手柄をさらわれることが面白くない。そんな中、レオに情報屋シリアンから連絡が入り、大きな情報と引き換えに30分だけ行動を共にして欲しいと告げられる。そしてシリアンは、自分を刑務所に送った男をレオの目の前で殺害する。自分をアリバイに利用したことに激怒するレオだが、シリアンは、アリバイを証明するなら強奪犯を教えると言う。主犯格は、フランシス・オルンとロベール・“ボブ”・ブーランジェだ。レオの指揮下、犯人グループのアジトを取り囲むが、突然ドニが単独でアジトへ近づき、激しい銃撃戦に発展。定年間近だったレオの相棒エディが殉職する。失態の責任を問われ調査委員会にかけられるドニと、オルンを追いつめ逮捕するレオ。事件解決と出世への道を祝福されるレオを憎悪するドニは、シリアンの起こした殺人事件にレオが絡んでいることを突き止める。ドニの密告によりレオは共犯容疑で逮捕され、カミーユは良心の呵責に駆られたシリアンから連絡を受ける。二人が会っているところへドニのチームが待ち構え、逃亡劇の末にカミーユとレオは死ぬ。牢獄で妻の訃報を聞いたレオは、悔恨と悲しみに明け暮れる。7年後、刑期を終え出所したレオはカミーユの死の真相を探り始める。全てを失ったレオと、パリ警視庁長官に就任したドニ。ドニの就任パーティー会場へ向かったレオはドニと対面し、銃口を向けるが、復讐を思いとどまる。去ってゆくレオを追うドニは、かつて自分が痛めつけた男によって背後から撃たれた。その後、レオは成長した愛娘ローラと再会し、親子二人で旅へ出るのだった。(KINENOTE)

監督:オリヴィエ・マルシャル
出演:ダニエル・オートゥイユ/ジェラール・ドパルデュー

ネタバレ感想

『あるいは裏切りという名の犬って』なんだよ

初見はレンタルが始まってすぐに借りて観て、今回けっこう久しぶりに鑑賞。オリヴィエマルシャル監督の他の作品紹介にて述べたことをこの記事でも書いたことの繰り返しになるけども、同監督は本作の他にも『そして友よ、静かに死ね』とか、男の生きざまを描いたハードボイルドチックな作風の物語を撮る監督って印象。他にも『やがて復讐という名の雨』があったな。

本作は公開当時そこそこそこ評価が高かったような気がする。俺はこういうバイオレンス系というか犯罪映画が好きなので、面白く鑑賞した。で、その今作がヒットしてからは、フランスでこうしたバイオレンス系な映画、特にオリヴィエマルシャル作品となると、この大仰な邦題がつくようになった記憶があるのだ。

この邦題、詩的かつハードボイルドな印象を与えたいんだろうってのはわかるんだけど、カッコつけてるだけで、何言ってるのかよくわかんなくね? なんだよ、『あるいは裏切りという名の犬』って…。犬は比喩的に、権力の犬とかいう意味や、回し者とかスパイ的な意味で使われるけど、邦題を邦訳して『もしかすると裏切りという名前の権力の犬』なんて言ってみても、結局なんだかよくわからない。単に響きというか語感に頼った邦題なんだろうか。別作品の、『やがて復讐という名の雨』ってのもね…、復讐が雨のように降ってくるということだろうか…。狙いすぎちゃっててダサくないっすか?

で、この訳し方の割を食った感があるのが、ジョニートー大先生の『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』だろうな。あの作品は香港映画だけど、主演がフランス人だったし、製作にもフランス人関わってたので、だからあの邦題になったんだろう…おそらく。

とか邦題にケチつけてしまったが、原題は『36 Quai des Orfèvres(オルフェーヴル河岸36番地)』てな意味で、どうもパリの警察の住所のことを指すみたい。それはそれで、興味を惹かれるタイトルではないわな…。

レオとドニの確執

タイトルの話はもうおしまい。今作は監督が元警官だったこともあってか、実話を基にしている部分がそれなりにあるみたい。じゃあどっからどこまでかってのはわからんけども、おそらく、暴力的な捜査が容認されちゃってるところなんかは、そうなんだろうなと思われる。あと、同僚を出し抜いてでも、出世のために動いちゃう人間なんてのは、どこの世界にもいそうではあるわな。

主人公のレオは部下や同僚、上司からも信頼されている人物だからそれなりに有能なんだろうなって思うけども、序盤のほうで、知り合いの女性を暴行した相手に対しては報復のために拉致して丸裸にして脅迫とかしちゃってるわけで、暴力刑事であることは間違いない。

一方、彼の敵対者たるドニは、出世のために命令を無視した行動をして同僚が死ぬきっかけをつくっちゃってるわ、元親友のレオをムショにぶち込むために動いちゃうわ、元恋人かつレオの奥さんのカミーユを死なせることもしちゃうという冷徹な奴。

犯罪者はそれなりに摘発できているから、市民にとっては良い警官と言えなくもないかもしれんが、さすがに彼の言動はどれもこれもウザいしムカつくし、絶対に上司にしたくないタイプ。であるから、レオを慕ってたティティからは、昇進パーティでションベンかけられちゃう嫌われっぷり(笑)。しかも、目をかけてた女性警官にも軽蔑されてるし、彼についていくのは、出世に目がくらんだ犬野郎だけという、なんとも寂しい男でありますな。

どうしてレオとドニはここまで冷えた仲になっちゃったかというと、カミーユを巡ってということらしい。物語内ではその三角関係についてほぼ言及がないので推測でしかないけど、おそらく先にカミーユと付き合ってたのはドニだったんだろうなと、そこにレオが入ってきて、横恋慕しちゃったのかなぁというのは俺の想像。

でもラスト。自分に情けをかけたのか、殺さずに去っていくレオに向かってドニが吐くセリフから推測するに、カミーユを取られたことをメチャクチャ恨んでたんだなぁということはわかる。女性が原因で友情に亀裂が入っちゃうってのは何とも悲しく、女を親友に取られちゃったドニに対して、そこは同情の余地はなくもないものの、しかし、その後の物語内での彼の器のせまーい言動を見てると、そりゃ、カミーユがレオを選んじゃうのも、仲間がいないのも、そりゃぁそうだよなぁと思っちゃうくらいに嫌な奴なのだ。

であるからむしろ、どうしてレオはこんなんと親友だったのかと感じちゃって、要するに、説得力がないのである。

ハードボイルドに生きるか、犬になって生きるか

まぁいずれにしても、レオは昔気質の警官で、上司に後釜になることを期待されながらも、時代の変化に対応した仕事をすべきなんてたしなめられてもいて、しかし、昔気質なやり方から抜けられずにいるうちに、ドニの策略にハマって痛い目を見ることに。

ついでに、彼を慕ってた同僚たちも痛い目を見ることに。この辺はなかなかに悲しいが、けっきょくは保身に走る人間のほうが世渡りはうまくできるってことではありますな。とくに、レオの上司なんて、そこそこ有能かついい人間ではありながら、自分の立場を超えて何かをできるような根性のある人間ではなかったことが、最後のほうで判明するわけだし。

しかし、強盗に眉間を撃ち抜かれちゃったレオの同僚や、若手のティティなんかは悲惨なもんで、後者はレオに協力してチンピラを暴行したことがきっかけで、ラストのほうで伏線回収のために脳死状態になっちゃうという。だがしかし、彼は転んでもただでは起きぬ精神の持ち主。にっくきドニを間接的に葬ることに成功しているところがなかなかに渋い。

で、肝心のレオは情報屋を売ることなくムショでお勤めを終えて、その辺はハードボイルドではあるが、そのせいで奥さん死んじゃってるとも言えるわけだから、筋を通す生き方ってのは損ではありますなぁ。ただ、その生きざまに魅力があるからハードボイルドなわけだが。

しかしこの作品、初見だとけっこう話を理解するのがキツイよね。冒頭の女性に暴力をふるうチンピラのエピソードとか、顔を覚える前に話が展開してっちゃうので、その後の強盗野郎たちとの判別がつかなかったりするし、その強盗野郎どもも、一人は捕まえたけども、もう一人はセリフだけで片付けられちゃったりしてて、物語がサクサク進んでっちゃうので、置いてけぼりになっちゃう人もいるかも。

いるかもというより、初見の頃の俺がそうだったのだ。とはいえ、そういう細部があやふやなままでも、二人の男の対立と、その顛末という軸の部分で何があったのかは大体わかるし、その描写に込めたものに力があるので、楽しんで見られるとは思うのだが。

似たような作品を今でも世に出している同監督の中で、俺の中ではいまんところこれが一番いい作品だと思いますん。

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