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映画 パリ、憎しみという名の罠 ネタバレ感想

映画 パリ、憎しみという名の罠
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パリ、憎しみという名の罠

―2017年公開 仏=白 104分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:『あるいは裏切りという名の犬』のオリヴィエ・マルシャル監督・脚本による実録クライムサスペンス。多額の負債を抱え、倒産の準備を進める会社経営者のアントワヌ。だが、温室効果ガスの排出枠に関する取引の中で金を稼ぐ闇ビジネスを思い付き…(KINENOTE)

あらすじ:会社経営者のアントワヌは、多額の借金を抱え倒産の準備を進めていた。ある時、友人の会計士から会社のCO2排出枠が売れたと連絡が入る。これを機に、排出枠を海外と取引すれば税金が免除される制度を悪用し、脱税で稼ぐ方法を思いついたアントワヌは、仲間とともに数々の取引を成功させ大金を儲けるようになる。しかし、取引の元手として金を借りた人物は裏社会を牛耳るボスで、稼いだ金額の半分をよこせと彼を脅迫。さらに、アントワヌを毛嫌いする権力者の義父の密告により、警察の捜査の手も迫ってくる。絶望的な状況を抜け出そうともがくアントワヌだったが、動き始めた憎悪の連鎖は止まることなく、さらなる悲劇を呼び寄せようとしていた…。 (Amazon)

監督・脚本:オリヴィエ・マルシャル
出演:ブノワ・マジメル/ジェラール・ドパルデュー

ネタバレ感想

オリヴィエマルシャル監督作って邦題がね…

オリヴィエマルシャル監督と言えば、『あるいは裏切りという名の犬』『そして友よ、静かに死ね』とか、男の生きざまを描いたハードボイルドチックな作風の物語を撮る監督って印象。他にも『やがて復讐という名の雨』があったな。

『あるいは~』は公開当時そこそこそこ評価が高かったような気がする。俺はこういうバイオレンス系というか犯罪映画が好きなので、面白く鑑賞した記憶がある。で、その作品がヒットしてからは、フランスでこうしたバイオレンス系な映画、特にオリヴィエマルシャル作品となると、この大仰な邦題がつくようになった記憶が。

詩的かつハードボイルドな印象を与えたいんだろうってのはわかるんだけど、カッコつけてるだけで、何言ってるのかよくわかんなくね? なんだよ、『あるいは裏切りという名の犬』って…。犬は比喩的に、回し者とかスパイ的な意味で使われるけど、『もしかすると「裏切りという名前のスパイ」かもしれない』なんて結局なんだかよくわからない。単に響きというか語感に頼った邦題なんだろうか。『やがて復讐という名の雨』ってのもね…、復讐が雨のように降ってくるということだろうか…。狙いすぎちゃっててダサくないっすか?

で、この訳し方の割を食った感があるのが、ジョニートー大先生の『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』だろうな。あの作品は香港映画だけど、主演がフランス人だったし、製作にもフランス人関わってたので、だからあの邦題になったんだろう…おそらく。

今作の主人公は有能ではない

ということで、ようやく本題。同監督作品、俺が鑑賞したことのある作品に限るけども、どの作品の主人公もけっこう仕事ができるタイプで、筋が通った漢気のある奴っだったてな記憶がある。ところが今作の場合は、筋は通ってなくもないし、漢気もなくはないだろうけど、けっこう癇癪持ちだし、警察に賄賂で頼っちゃうとか、義理の親父に貫録や実績で負けちゃってるとか、いろいろ小物感あふれるオッサンだったなぁ。しかも、堅気の仕事は失敗しちゃっているという。つまり、仕事でも有能ではない(笑)。

そんなオッサンが、大金持ちで権力もある義理の父に、会社が潰れそうなことをバカにされて、奥さんもそれを見て自分の肩を持ってくれなかったのでイジけて家出して、幼馴染と思われるチンピラ兄弟(特に弟のエリックは単なるチンピラ)と酒飲んで憂さを晴らしたり、実の父から承継した会社を破産申請する手続きしたり、その作業を手伝ってくれてる会計士に、二酸化炭素排出権売買のビジネスの話を聞いたりして、再起を図ることにするのだ。

で、その再起への道ってのは、京都議定書により決まった二酸化炭素排出枠の売買で得た利益で儲けようというもの。どうも国内の排出枠を海外で売買することで脱税するビジネスみたいだけど、細部はよくわからん。何でパソコン並べてトレーダーみたいなことやってたんかもよくわからん。

いずれにせよ、会計士に教えてもらった二酸化炭素排出枠の売買に目を付けた主人公のアントワヌは、そこにビジネスの匂いを嗅ぎつけるのだ。で、どっちかというとクリーンな稼ぎ方ではないことを、というか脱税だから犯罪だというのを承知の上で、資金集めに走るのである。彼の唯一有能だったことは、誰も手を付けてないブルーオーシャンを発見したことだろう。そして、そのビジネスを成功させたことだ。それだけでも俺と比べれば十分有能だが、だがしかし、俺は彼のことを小物かつバカな男だと、この感想では言いたいのである。つまり、有能な奴だとは思いたくないのである。

先が読めちゃうけど面白い

この映画は、冒頭、アントワヌが銃で撃たれるシーンから始まる。その直後の独白では死を悟ったようなことを言っているので、鑑賞者は、「こいつ、死ぬんだな」というのが分かる。ということは、この作品は彼の死ぬまでの過程を描いたものであって、「生き延びて幸せめでたしめでたし」な作品でないんだろうというのが容易に想像がつく。

今作のように、主人公の死ぬシーンから始まる映画ってのは、俺がすぐに思いつく限りでも2~3本はあるけども別段珍しいパターンではない。中には、冒頭で死んだと見せかけてどんでん返し、生きてました! みたいのもなくはないのだが、どっちのパターンの作品もここで紹介したらこの作品とは関係のないネタバレになってしまうので控える(笑)。

ともかく何が言いたいかというと、アントワヌは冒頭で死ぬわけで、そのセリフから読み取るに、この男がある程度は人生の絶頂をきわめて、その後、没落していく話なのだなというのは、冒頭で分かっちゃうのである。そして、この作品は、まったくその通りに進むのだ。別に捻りもどんでん返しもない。ラストはちょっと驚く人もいるかもだけど。

でも、それはそれでいいのだ。監督がオリヴィエマルシャルだし、どうせ内容は暗いだろうことはこっちも分かっている。であるから没落人生であるのはよろしい。作中でも触れられるように、この作品は『スカーフェイス』に似ている。パチーノ主演、ブライアンデパルマ監督の傑作の、あれである。内容はこれまたネタバレになるから控える。

ということで、繰り返しになるけども、内容的にも描いていることにも、この作品に新鮮さはない。そして、登場人物、特に主人公の生きざまがカッコよいわけでもない。

だけど、それにもかかわらず、この作品は結構面白いのである。なぜか、アントワヌがさして有能ではないからだ。その辺がフィクショナルではなくリアルだ。けっきょく、大物になれない小物臭が、彼には終始漂っているのである。

彼がブルーオーシャンを見つけたのはすごいことだが、それ以外の策はほぼほぼ、バカの取る行動である。その中で2点をあげるとしたら、おしゃべりで短気な友だちをパートナーにしたことと、評判のギャングから金を借りたこと、これだけでも、先が見えてしまう。それでも彼は、その行動に賭ける。そして、その行動が引き金になって、転落していくことになるのだ。そして、その転落を防ごうとする行き当たりばったりの対策が、すべて小物のそれなのだ。

犯罪は一人でやるべき

この主人公のバカさ加減が俺にとって面白いのは、俺が「犯罪は一人でやるべき」という持論を持っているからだ。犯罪者は、仲間をつくってはいけないし、恋人も家族を持ってもいけない。仮に持ったとしても、それらをすべて捨てる覚悟がなければならない。財を築いても、それをすべて捨てる覚悟がなければならない。さもないと、刑務所いきか、死である。

今作の主人公は、俺の持論の逆を行く行動しかしてなくて、そこが面白いのである。だから、他の人がこれを鑑賞して面白いと思うかは、わからん(笑)。

ちなみに、「犯罪は一人でやるべき」について興味があれば、下に紹介する記事をどうぞ。

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