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映画 ザリガニの鳴くところ ネタバレ感想 湿地帯殺人の犯人と外側に生きる人

ザリガニの鳴くところ
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ザリガニの鳴くところ

ノースカロライナの湿地帯で金持ち家庭のドラ息子の死体が発見される。容疑者は湿地の中で孤独に暮らす女性、カイアだった。果たして彼女は本当に犯人か、そしてなぜ湿地の中で暮らしているのかーー。鑑賞者の興味は殺人犯が誰かってことだけども、それとは異なる何かを描いた作品。ネタバレあり。

―2022年公開 米 125分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:全世界で累計1500万部を超える大ベストセラーを映画化したミステリー。1969年、ノースカロライナ州。裕福な家庭の青年の変死体が湿地帯で発見される。容疑者はその湿地帯の中、たった1人で育った少女カイア。事件の裏に隠された衝撃の真実とは? 出演は『ふつうの人々』でゴールデン・グローブ賞候補となったデイジー・エドガー=ジョーンズ、「シャドウ・イン・クラウド」のテイラー・ジョン・スミス。原作にほれ込んだリース・ウィザースプーンが製作を務め、テイラー・スウィフトが楽曲を書き下ろしている。(KINENOTE)

あらすじ:1969年、ノースカロライナ州。裕福な家庭で育ち、将来を期待されていた青年の変死体が湿地帯で発見される。容疑者は、“ザリガニが鳴く”と言われるその湿地帯で、たった1人で育った無垢な少女カイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)。彼女は6歳の時に両親に見捨てられ、学校にも通わず、花、草木、魚、鳥など、湿地の自然から生きる術を学び、1人で生き抜いてきたのだった。そんな彼女の世界に迷い込んだ心優しき1人の青年。彼との出会いをきっかけに、すべての歯車が狂い始める……。法廷で徐々に明らかになる想像を絶するカイアの半生。浮かび上がる殺人の動機と、一向に見つからない決定的証拠。事件の裏に隠された真実とは……。(KINENOTE)

監督:オリヴィア・ニューマン
出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ/テイラー・ジョン・スミス/ハリス・ディキンソン/マイケル・ハイアット/スターリング・メイサー・Jr./ジョジョ・レジーナ/ギャレット・ディラハント/アナ・オライリー/ヴィッド・ストラザーン

ネタバレ感想

湿地帯がキレイ

公開当時から気になってたのを、アマゾンプライムで配信開始されたのでようやく鑑賞。気になってたのにスルーしてたのは、抽象的でアーティスティックな表現の作品で、なんだか俺には理解し難い話なんじゃないかなぁと思ってたから。

でも、鑑賞してみたらそういうこともなく、普通に観られた。印象的なのは、物語の舞台が湿地帯の割にあまりジメッっとした感じがしなくてそれなりに過ごしやすそうに見えちゃうところ。でも、風景がキレイ。とはいえ、ワニが生息してるエリアであんなに呑気にくつろいだ生活できるんかいね(笑)。

ついでに言うと、主人公のカイアは出版で売れる前は貝を売るくらいしか仕事してないのに、着てる服はそれなりに整ってるし清潔感があるところはちょっと違和感あったなぁ。

カイアは自然の中に生きる

でまぁ、この作品は街のドラ息子、チェイスを殺した犯人は本当にカイアなのかという裁判劇と平行してカイアが過去から現在まで、湿地帯でどんな暮らしをしてたのかということが描かれる。それが終盤、裁判の判決内容に関わってくるのだ。

その過程の中で、カイアはいかなる人物だったのかというのが明らかになっていく。個人的な感想で言うと、カイアという女性は沼地の中でしか生きられない、普通の人とは異なる価値観で生きている人物だったように思う。

タイトルの「ザリガニの鳴くところ」ってぇのは恐らく、カイアの暮らす湿地帯であり、沼地のこと。そこで安寧な暮らしを得るためには動物と同じく、自然の摂理を重視して生きるべきということが昆虫の生態などを紹介するセリフなどで示される。

カイアはチェイスを殺した犯人か

で、カイアはその摂理の中で生きることを選んでいる人間であるから、彼女にとっては、チェイス殺害における人間的な価値観での罪の意識はたとえあったにせよ、さほど重要なことではない。人間界の道徳的観念よりもザリガニの鳴くところの摂理のほうが重要なのだから、無罪か死刑か、裁判で望むのはそのどちらかでしかない。

であるから、無罪を勝ち取って幸せな暮らしをしたカイアは、自然の摂理の中でテイトとともに生き、天寿を全うする。そして、年老いたテイトがカイアの遺品から首飾りを見つける。あれはチェイス殺害の証拠となるわけだから、殺したのはカイアということなんだろう。

人間界の外でザリガニが鳴く

ではどうやって殺したのかってところが描かれないのは結構不満。でも、この作品はカイアが犯人か否かという物語軸で興味を惹かせながらも、伝えんとしていることは、その彼女がどんな人たちと関わってどんな目に遭い、その中で自分がどんな人生観を形成し、どういう生き方を選んでいったのかということなのだ。

その過程で示されたのは要するに、カイアは人間界の外の存在だったということ。人間の文明的暮らしが自然に対するものだと考えるなら、彼女はどちらかと言えば自然の中で生きることを選んだのである。であるからおそらく、「ザリガニの鳴くところ」とはさらに深掘りして考えるに、文明の外側、境界を出た先にある場所ということだろう。

とは言っても、カイアは物語中で恋もするし、エンジンのついたボートにも乗ってるし、出版活動もしちゃっているし、完全に自然の中の人間ってわけではないところは、実に人間くさい。特に、人と接する機会の少ない彼女は異性と接する体験も少ないために、チェイスのようなドラ息子の本質を見抜けずにDVされちゃってるところなんて、これまた人間的と言えそうだ。

そのように、自然を選んだ人物として描いておきながらも、人間社会に迫害されるほどには社会の中で生きていることもあったのだ。しかし、そういう生き方を拒絶したいからこそ、裁判後は完全に自然と一体化した生活を選択したということだろう。

彼女にとって人間界というか、俗世間は生きるに値しない場所であり、それと自分をつなぐのはテイトだけでよかったのである。しかしそのテイトすら、ラストで首飾りを見て驚愕していた具合を見る限り、カイアの世界観を真には理解できていなかったのかもしれない。

てなことで、突っ込みどころも多々あるんだけども、けっこう楽しめる作品だったな。

善悪を超えた言葉を獲得するために、みんが人間であることを止めよう。

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