オクジャ OKJA
オクジャが豚ではなくて、どうしてもカバに思えてしまう。豚も規格外に育つと肌がゾウやカバみたくなってまうのだろうか。というのはどうでもいい感想。頭がよくてミジャになついているオクジャは可愛いし、ところどころのコメディな演出もよい。が、さほどの衝撃は味わえず。ネタバレなし
―2017年製作 米=韓 121分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:「グエムル 漢江の怪物」、「スノーピアサー」のポン・ジュノ監督による冒険ファンタジー作品。ネットフリックスとプランBエンターテインメント共同製作、ネットフリックスで配信。第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門参加。(KINENOTE)
あらすじ:韓国の山奥の村で、少女ミジャは、大きな動物オクジャを育てていた。オクジャは体は大きいがおとなしく、ミジャに懐いており、平穏な日々を送っていた。しかし、ある時、アメリカの巨大企業ミランド社によってオクジャがニューヨークに連れ去られてしまう……。(KINENOTE)
監督・脚本:ポン・ジュノ
出演:ティルダ・スウィントン/ポール・ダノ/アン・ソヒョン/ピョン・ヒボン/スティーヴン・ユァン/ジャンカルロ・エスポジート/ジェイク・ギレンホール
感想
ポン・ジュノ監督は『母なる証明』がいい
ポン・ジュノ作品を全部鑑賞したわけではないんだが、『母なる証明』は好き。あと『殺人の追憶』。『スノー・ピアサー』はあんま面白くなかったなぁ。で、本作は『スノー・ピアサー』よりは面白かったけど、個人的には後々まで心に残り続ける作品てな感じではなかった。
冒頭の生活描写は楽しそうでいい
で、物語の話に入ると、冒頭は自然の中で暮らすミジャとオクジャの交流が描かれる。この生活描写は映像的に観ると、なかなか優雅で楽しそうに感じる、いいシーンだ。ご飯もおいしそうだし。でも、実際あの生活を自分ができるかと言えば、容易ではないと思うが。
本作が皮肉っているものは何か
この作品は資本主義社会における企業の営利主義をディスるというか皮肉っている部分が多分にあるように思う。そして、そいつらのサービスを享受している俺らに対しても。原型をとどめていない加工された動物たちの肉を日々食っている立場として、この映画の描いていることはなかなかエグイ。
だが、そうだからと言って、動物を食うことを止めようと思うかって言われると、なかなかそうはできないわな。事実、俺はこの映画を観たその数時間後に豚シャブを食べた。とても美味しく食べた。
菜食主義になれって言っているわけではない
この映画の主人公のミジャは、オクジャを家族と思っている。家族は食べたくないよね。そらそうだ。でも、オクジャは豚であり、人間の食料としてつくられた人造生物なのである。
解体の仕方が残酷かつ容赦ないのでショッキングではあるが、俺らが日々食べている生き物は、あのようにラインに乗せられて俺らの目に届かないところでバラバラにされている。
もちろんそれはショッキングであるから、菜食主義に走る人もいるのかもしれん。それはそれでいいことだ。だが、菜食主義は生き物の命をとってないかというとそんなことはなく、植物も生きてるわけで、それが種族的に自分とは遠いからあまり身近に感じはしないけど、生命であることは確かではあるまいか。
殺した動物を食らい尽くす文化
人間てのは他の命を残酷に殺して血肉をいただかなくては生きていけない。であるから古来より、生き物を殺して食っている事実をきちんと自覚したうえで、殺した命を全てありがたくいただくという考え方があるのだ。
例えば、漁で獲った魚は、肉だけでなく骨も内臓も皮も、食べれるところは食べる。そういう食文化が日本にも、他の国にもあったと思う。あまさず食べるということが、ある意味では贖罪なわけだ。
それは魚以外の獣を食べることにおいても同じだ。毛皮や角を嗜好品みたく扱ってしまう部分はあるものの、皮や骨を衣服や生活の何かにまで使用すること。狩猟をして暮らしてきた昔の人間は、殺した動物の全てを血肉としていただき、その骨皮をも有意義に利用する文化を築いてきた。
恥じているだけでは意味がないような
しかし現代を生きる俺は、愛玩動物として犬や猫を愛でておきながら、食用の生き物に対しては自分の手を汚してまで血を見ることはできず、自分に代わって誰かが手を汚し、加工された生き物を消費している。
本作はその行為について、皮肉を投げかけているのだろうか。
ではどうすればいいのか。この作品を受け取った人間は、何を選べばいいのか。自分の手を汚さず血肉を食らって生きることを恥じればいいのか。しかし、それだけでは何の贖罪にもならぬと言われているような気もするし、なんだか俺にはよくわからんのである。
この作品はネットフリックスで観賞できます。
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