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映画 ボーダー二つの世界 ネタバレ感想 トロールの赤ちゃん

ボーダー二つの世界
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ボーダー二つの世界

容姿が醜いティーナは、人の感情を読み取れる特殊能力がある。ある日、ヴォーレと名乗る旅人と出会い、関わりを持つようになったことで、彼女の出自が徐々に明らかになっていく。果たして彼女は何者なのか。この作品に込められたメッセージとは? ネタバレあり。

―2019年公開 瑞=丁 110分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:第71回カンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリを受賞したミステリー・ファンタジー。違法な物を持ち込む人を嗅ぎ分ける能力を持ちながら醜い容貌のせいで孤独な日々を送る税関職員ティーナは、謎の男の出会いにより人生を変えるような事件に巻き込まれる。新鋭アリ・アッバシ監督が「ぼくのエリ 200歳の少女」の原作者ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストによる短編を映画化。ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストは脚本にも参加した。出演は「ヒプノティスト-催眠-」のエヴァ・メランデル、「オリ・マキの人生で最も幸せな日」(第29回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にて上映)のエーロ・ミロノフほか。第91回アカデミー賞外国語映画賞スウェーデン代表作品に選出され、アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた。(KINENOTE)

あらすじ:スウェーデンの税関に勤めるティーナ(エヴァ・メランデル)は、違法な物を持ち込む人間を嗅ぎ分ける人並外れた能力を持つ反面、生まれつきの醜い容姿に悩まされ孤独な人生を送っている。ある日、怪しい旅行者ヴォーレ(エーロ・ミロノフ)と出会うものの、特に証拠は出ず、入国審査をパスしてしまう。それでもヴォーレに本能的に何かを感じたティーナは、後日、彼を自宅に招いて離れを宿泊先として提供。次第にヴォーレに惹かれていくが、彼にはティーナの出生にも関わる大きな秘密があり……。(KINENOTE)

監督:アリ・アッバシ
出演:エヴァ・メランデル/エーロ・ミロノフ/ヨルゲン・トーション

ネタバレ感想

人の感情を読み取れる

アマゾンプライムで見つけて鑑賞。ホラー映画かと思ってたら、全然違った(笑)。序盤から中盤にかけては淡々とした展開で結構退屈だけど、中盤以降、主人公のティーナが何者なのかが判明し始めてからは、そこまでに散りばめられていた謎が解消されつつ、しかもその内容が驚きなので、楽しめた。

ティーナは容姿がほかの人間とは異なっており、はっきり言うと、異形の人に見える。これは染色体異常によるものらしく、子どもも産めない体のようだ。親は父だけが生きていて、彼の姿かたちと比べても、ティーナは似ても似つかない。

彼女はフェリーが発着する港の税関で働いていて、妙に鼻がきく。であるから、乗客が不審物を所持しているのを見抜く能力がある。で、その能力ってのは実は、人の感情を読み取ることができるというものなのだ。

ある意味では悟りの化け物みたいな人であるティーナはこの能力を使って、ある児童ポルノ事件を捜査中の警察に協力することになる。一方で彼女のプライベートには、闘犬? を育成してる男がいて、彼は彼女に愛情を持っていないようだ。二人には会話がなく、男はティーナの持ち家に寄生するような生活をしている。

ティーナは彼が自分に愛情を抱いてないことを知っているが、孤独であることを紛らせたいがために、彼を住まわせてやっている。セックスはティーナが拒否するので、してない。

しかしある時、税関で自分の容姿に似たヴォーレという謎の旅人と出会ったことで、彼女は自分がなぜ異形のものであるのか、そのマイノリティの秘密を知ることになっていく。

その中で、児童ポルノ事件とティーナの出自、そしてヴォーレの存在がリンクしてラストに向かっていく構成が秀逸。全然予想してなかった結末を迎え、そしてお話的にもスッキリと劇終。

ティーナはトロール

てなことで、ネタバレしちゃうと、なんと彼女は、北欧で伝承されている妖精、トロールだったのである。それをヴォーレから明かされた彼女は、自分が野性的な本能で自然の中にいるときに心が落ち着くことや、虫が食べたいと思う衝動や、野生動物に懐かれることや、自分が人の感情を読める能力が、トロールという種であったからだということに気付く。

そして、ヴォーレは実は人間から見ると、生殖能力的には女性で、ティーナが男性の役割を果たすことも知る。おそらく、ラスト、ヴォーレから送られた赤ちゃんは、二人が性交をしたことで授かった子なのではなかろうか。

ヴォーレは児童ポルノ夫妻を影で操ってて、子どもをさらっては、自分が産み落としたトロールの抜け殻みたいな子どもとチェンジリング(取り替え子)するという、人間社会でいう犯罪行為をしていた。ヴォーレが人間の子どもとすり替えるトロールは、卵の入ってない存在なのだが、ティーナと性交したことによって生み出した子には、当然卵が入っていたことになるのであり、であるから、ラスト、彼女に贈られた子どもは二人の性交した証ということだと思われる。

にしても、特殊メイクをしたティーナとヴォーレの役どころの人は人間から見たらやっぱり異形なのであり、二人の性交や虫を食うシーンなどは、はっきり言ってキモイ。

作品からのメッセージ

ということで、この作品は、異なる種族から見られた人間の醜悪性(児童ポルノ)などを描きつつ、主人公は自身の肉体や出自が他の人間とは隔たっているというマイノリティ性に悩み、孤独に苛まれている様を描きつつ、ラストに赤子を得て生きる理由と存在価値と幸福感を見出していく。

その中で感じるのは、あらゆるマイノリティへに対して、肯定的な評価を与えているように思われることだ。

ティーナはヴォーレの誘いに乗って、トロールとして生きることもできた。しかし、彼女は人間の感情というか倫理観を守って生きていくことを決める。その境界を行き来しつつ、彼女は生きていくわけだが、一方のヴォーレはトロールとして、人間に復讐を続けていくのだと思われる。それは人間から見れば許されざる行為であるが、ヴォーレやトロールに対して人間がしてきた仕打ちを考えるに、同じ穴の貉ともいえる。

いずれにしても、ヴォーレは人間の倫理観でどうこう言える存在ではなく、人間の法で裁くのは、ある意味で人間側の暴力ともいえる。とはいえ、ヴォーレが自分の価値観で人間に復讐するのも、トロールの人間に対する暴力ではあるのだが。

要するに、姿かたちや生殖の法則が異なる種族同士は、同じ価値観を共有するのは難しいのである。しかしそれは、人間の中にある性差や性癖や肉体的欠損などなど、そうしたマイノリティの人との価値観の共有が難しいということも示しているのではないか。なんとなく、本作からはそういうメッセージを感じた。

ということで、何度も繰り返してみたい作品ではないが、一見の価値はある映画でしたな。

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