ダークサイド・セオリー
アフガニスタン難民の青年の消息を捜してほしいと依頼された私立探偵が捜査を進めてみたら、バチャ・バジという風習の存在を知り、事件の裏にあった出来事に戦慄する話。短くまとまっている中でいろいろな問題が込められててなかなかの作品。ネタバレあり。
―2020年製作 米 78分―
あらすじ・スタッフとキャスト
あらすじ:アメリカ・ニュージャージー州の私立探偵ジミーのもとに、4日前から行方不明になった22歳の息子カリドを探してほしいと、両親からの依頼が入る。カリドはアフガニスタン難民で、12歳の時にターナー夫妻の養子になっていた。成績は優秀で、大学では薬学を専攻。寮生活を送っていたが、無口で友人はほとんどいなかった。かつて刑事だったジミーも、幼い我が子が行方不明になり、それが原因で停職処分になった過去があり、困惑しながらも依頼を受けることに。そんな彼に、かつての同僚アルベス刑事から情報が入る。アフガニスタン人の男が殺され、ほぼ同時刻にカリドも消えていたことが判明。その夜、またもや別のアフガニスタン人が殺害される事件が発生。そのどちらにも同じ筋弛緩剤ベクロニウム臭化物が使用されていて…。
監督:サロ・ヴァルジャベディアン
出演:モンテ・ベゼル
ネタバレ感想
短い時間にまとまっているので気楽に観られるなぁとか思って鑑賞してみたら、内容は結構重い感じ。まぁでもそういう作風は嫌いじゃないので、観てよかったかなぁ。
この作品には、アフガニスタンにおけるタリバン討伐の戦争に参加した現地の兵士や、そこに暮らしていた住民が、その後難民としてアメリカに移住しているという背景がある。
んで、ここから先はネタバレ。
アフガニスタンの権力者たちの間にはバチャ・バジという、少年を女装させて性奴隷として扱う風習があるそうで、その習慣の持ち主たる人物たちが移住先のアメリカでもそれを続けていて、その犠牲となった経験のある青年(カリド)は、復讐のために忌まわしい風習を続けている輩に裁きを与えるべく殺人を犯していたーーというのが事の真相になっている。
殺人はいけないとは思いつつ、カリドが復讐をしたくなる気持ちがわかるところがこの物語の辛いところであり、しかし、彼を養子として養ってた両親たちは彼に戻ってきてほしいのであるから、主人公のジミーは事の真相にたどり着いた時に、何とかカリドがこれ以上、罪を重ねないように説得を試みる。
のであるが、カリドにまさにライブでいたぶられていたデブ警官のアミール(こいつもバチャ・ハジで楽しんでた一人)は、現場に駆けつけてきた元警官のジミーの忘れたい過去を知っているので、そこをつつくことで怒りを買い、ジミーの手によって射殺されることになるのだった。
ジミーはミイラ取りがミイラになったような結末を迎えるが、彼の息子の失踪事件の真相は分からずじまい。アミールを射殺したが起訴はされずに済んだので、ラストでは別の土地に引っ越していく姿が描かれて物語は終わる。
繰り返すが、短い時間の中に難民やそこに関わる性的虐待の話など複雑かつ人間の糞さ加減を知らされる要素が込められている社会派な内容になっているところがなかなかよろしい。
ジミーの息子の消息がわからないという設定を活かして、作品のテイストは維持したままその真相にいずれジミーが近づけるようになるような展開で、1話完結型ドラマシリーズにしてみたら面白いんじゃないかなぁと思った。
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