ロスト・ストレイト
―2018年製作 伊 95分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
あらすじ:1988年7月12日。イラン革命防衛隊第27師団のほとんどの大隊は、休暇で家族らが待つテヘランに戻る途中にあった。アマル大隊のマジードと友人のハッサン、子どもが病気にかかったアジーズらはつかの間、安心していたが、そこへ数時間前にイラク軍が国境を越えてきたので、そこへ急げという命令が下る。国境に近づくほど逃げる民間人が増え、敵軍が化学兵器まで使うという大混乱の中、アマル大隊は敵軍の猛攻撃を受け……。(WOWOWオンライン)
解説:イラン・イラク戦争終結直前の実話に基づく戦争ドラマ。休暇のためにテヘランへ向かっていたイラン第27師団アマル大隊に前線行きの命令が下る。前線行きのトラック乗り込んだ若き兵士たちを待っていたのは、想像を超える悲惨な光景だった。(KINENOTE)
監督・脚本:バラム・タヴァコリ
出演:ジャバド・エザッティ/アミール・ヤジジ/ハミド・レザ・アザラン/アリ・ソレイマニ
ネタバレ感想
イラン映画なんて久しぶりに観た。しかも戦争映画は初だな。この地域の映画ってのはなかなか観る機会がなくて、そういう意味では動画配信ってのの果たしている役割は大きいような気がする。
ということで、何の前知識もなく鑑賞してみた。実際のイラン・イラク戦争を題材にした内容なわけだが、なんでこの両国が戦争したのかってのは昔々、世界史で勉強したことなどはあるものの、背景が複雑でよくわからん。
まあでも、そこはおぼろげな知識でもこの映画は大丈夫。ともかく、戦争ってものが有している悲惨さをガッツリと示してくれているので、なかなかキツイし、為政者どもに対する怒りなんかも湧かせる内容になっている佳作だ。
物語はイラン側の話。ある4人の兵士が、休暇を取って家族の元へ帰ろうとしている。しかし、イラク軍が国境を越えて侵攻してきたことが判明し、彼らも戦地へ向かうことになるのだ。作品内に、イラク兵は出てこない。戦車などの兵器や、銃弾しか出てこない。人間が出てこない。
イラン側の兵士は、戦っているというより、敵の猛攻撃にさらされて逃げ惑うというかジタバタしているようにしか見えない。反撃するシーンはごくわずか。そして、敵の化学兵器によって被害を受けた民間人の姿などが描写される。容赦ないイラク側の攻撃に、バタバタと人が倒れていく。
主要人物たる4人の兵士のうちの金髪の人は、俺が気付く間もなく犠牲になっていたらしく、登場人物たちのセリフによって、俺は彼が死んだことを知った。そういう意味では、人の見分けがつきづらい内容であるが、ともかく、どういう効果があってかなのかはわからぬものの、これまで俺が見てきた戦争映画の中で、なぜかこの作品が、戦場の悲惨さを真に迫る勢いで伝えてくれているように感じた。
ラストに救いがあるとしたら、戦争のなんたるかがよくわかっていない少年兵が、4人に守られながら兵士として成長した姿が見られるところだろうか。しかしまぁ、それを救いと取ってしまうと、あの少年はイラク兵を4人の仇と感じ、憎み続けるのだろうから、戦争に参加する人間には何の益もないのだということだ。
いみじくもこの作品では、主人公たちの一人が戦争とは何たるかに言及するシーンがあって、「戦争で儲かるのは、武器商人だけだ」と言っている。確かに、武器商人は儲かる。『ロードオブウォー』を見ればわかる。そして、そういう武器の売買には、アメリカなどの大国も絡んでいるのだ。ほんと糞だな。
あとは、「戦争に勝つために戦うのではない。祖国と家族を守るために戦うのだ」というセリフも出てくる。これまた、現場に出てる兵士たちの心情をよく捉えているセリフに感じる。彼らを戦地に向かわせている権力者どもには、わかるまい。彼らが守ろうとしてる民間人もたくさん犠牲にしてるんだぞ、糞が。
てなことで、こうした戦争映画を観てると、戦争をおっぱじめた張本人たちが戦場に出てこないことに、激しい憤りを感じるのだ。そう考えると、昔々の戦(いくさ)の時代には、部隊を率いて王様や殿様が戦地に出てたケースが多々あったことを考えると、それは大将として当然の役割であったのだろうと思わせる。
ともかく、戦争するなら為政者も戦地に行けよな、マジで。頼むから。絶対に行かないだろうけど…。
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