15時17分、パリ行き
主演の3人に、事件の当事者を起用したという作品。近年のクリント・イーストウッド監督は実話をもとにした作品が多く、これもその中の一つ。鑑賞し終えると元気が出てくる好い作品だなと思いました。ネタバレあり
―2018年公開 米 94分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:クリント・イーストウッドが、2005年にパリ行きの特急列車内で起きた“タリス銃乱射事件”を映画化。8月21日、高速列車内でイスラム過激派の男が突如、自動小銃を発砲。混乱の中、犯人に立ち向かったのは、旅行中のアメリカ人の若者3人だった。主人公の若者3人組を本人が演じ、事件が起きた場所で撮影を行なうというリアリティへのこだわりが見もの。(KINENOTE)
あらすじ:2015年8月21日。アムステルダムからパリに向けて高速列車タリスが発車。列車は順調に走行を続け、やがてフランス国内へ。ところが、そこで事件が発生する。乗客に紛れ込んでいたイスラム過激派の男が、自動小銃を発砲したのだ。突然の事態に怯え、混乱をきたす500名以上の乗客たち。その時、犯人に立ち向かったのは、ヨーロッパ旅行中のアメリカ人の若者3人組だった。なぜ彼らは、死の恐怖に直面しながらも、困難な事態に立ち向かうことができたのか……?(KINENOTE)
監督:クリント・イーストウッド
出演:アンソニー・サドラー/アレク・スカラトス/スペンサー・ストーン
ネタバレ感想
旅行が楽しそう
今作のクライマックスと言える、アメリカ人が3名+イギリス人のおじさん(確か)と、過激派の男1名の戦いが描かれるシーンは、賞味15分くらいなもんだろう。長くてその程度の時間の中で、事件に居合わせた人たちがどう行動をしたかが焦点になっている。
そこに至るまでは、主要人物たるアメリカ人3人の幼少期から青年になり、事件の当事者になる数日前の旅行シーンに大半が費やされる。俺はその過程の話をすごく楽しめたので、作品全体に好感を持った。
特にいいのが、幼馴染3人が大人になってヨーロッパのイタリアやドイツやオランダを旅行するロードムービー的な部分。ただ淡々と、旧友との再会を楽しみながらアメリカ人たちが旅行を楽しんでいるだけ。でもその旅行が、とても楽しそうなのだ。うらやましくなるくらい楽しそうだ。
そして、旅行中に脇役的に登場する女性がみんな美人なのもいい。特に、イタリアで出会うアジア系の顔立ちをしたリサという女性はいい。そして、ドイツでアレクが再会するドイツ人女性。ついでパリ行きの列車で出てくる売り子の女性。この3人は物語で大きな役割を果たすわけではなく、ただ単に主要3人の人生にほんの一瞬だけ入り込んでくる単なる端役にすぎない。すぎないんだけども、この物語にとてもよい彩を与えている。それは彼らが日常から離れた異国で出会った、思い出に残る女性たちであるからだろう。
繰り返しになる日常を繰り返すな
で、本作を鑑賞し終えて感じたことがある。
人生を過ごすにあたり、特に目標を持たずに漫然と過ごす日々を面白いと思っている人もいるだろうし、何か自分の願望を果たすために目的をもって邁進し、それを果たすことによって満足を得る人もいるだろう。
そして、その両方を中途半端に行き来しつつ悶々と日々を消費している俺のような人間もいる。
なんで自分が中途半端なのかと考えるに、何かを成し遂げようと、何に満足を得ようとも、意味はないと考えてしまう人間であるくせに、それでも何かをしたいと考えて、けっきょくどっちつかずな日々を送っているように感じるからだ。
そういう日々を繰り返してきた。そして、これからも繰り返すような気がする。
しかし、繰り返さないこともできる。そのためには、日常の行動の些末なことでもかまわないから、何かを変えようとすることが必要だ。
ところが、変えたことを継続してそれが日常になると、何も変わっていない自分に幻滅するときがくる。であるから、変化が繰り返しになることがわかっていても、繰り返しになることを恐れずに、それを乗り越え、常に自分を刷新し続けなければならない。
だからこそ、この作品のスペンサーのように何かに挫折しても、次の目標を見つけてその達成に向けて努力をし、繰り返しになる日常から逃れて、次の繰り返しの場を探す彼に、好感を持つのである。
クリント・イーストウッドは俺が10代の頃に地上波の洋画劇場で主演作の『ダーティ・ハリー』シリーズやらなんやらを見てたころから好きで、監督作としては『許されざる者』『ミスティック・リバー』『ミリオンダラー・ベイビー』『チェンジ・リング』が好き。本作はそれらと比較すると少し物足りなさもあるが、満足できる良作でありました。
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