ウルフ・アワー
過去の出来事がきっかけに引きこもり生活をしてる作家が、何者かが押してくる自宅のブザーに怯える話。何かが起こりそうなスリラー的雰囲気はあるものの、特に何も起こらない単なるヒューマンドラマ。ネタバレあり。
―2019年製作 英=米 99分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ナオミ・ワッツ主演のスリラー。ニューヨークの女流作家ジューンは、輝かしいキャリアを築きながらも、ある事件をきっかけに筆を折って以来、自宅に閉じこもる生活を送っていた。だがある日、自宅のブザーが突然鳴り響き、彼女にとっての地獄が幕を開ける。共演は「ポップスター」のジェニファー・イーリー、「KILLERMAN/キラーマン」のエモリー・コーエン。(KINENOTE)
あらすじ:記録的な猛暑となったニューヨーク。治安の悪化により、暴徒と化した市民が至るところで略奪を繰り返し、さらに女性ばかりを狙う連続殺人鬼の出現が、街に暗い影を落としていた。ブロンクスに暮らす女流作家ジューンは、カウンターカルチャーの旗手として輝かしいキャリアを築いてきたが、ある事件をきっかけで筆を折って以来、外界と隔絶し、自宅に閉じこもっていた。そんなある日、ジューンが暮らすアパートのブザーがけたたましく鳴り響く。一体、訪ねてきたのは誰なのか? だがそのブザーは、彼女を待ち受ける地獄の始まりにすぎなかった……。(KINENOTE)
監督・脚本:アリステア・バンクス・グリフィン
製作総指揮:ナオミ・ワッツ
出演:ナオミ・ワッツ
ネタバレ感想
Unextで鑑賞。冒頭から連続殺人鬼の存在を知らせるシーンなどがあるし、主人公のジューンの自宅のブザーをピンポンダッシュ(厳密にはダッシュして逃げていく奴がいるわけではないが)する奴の存在などで、ホラーかスリラー的な雰囲気を醸してくる作品だが、実際の所は全然そうではないので、上記のようなことを期待した人は、ガッカリしちゃうだろうね。
引用した解説やあらすじを読んでも、「彼女にとっての地獄が幕を開ける」「彼女を待ち受ける地獄の始まりにすぎなかった…」なんて書いてあると、まさかのヒューマンドラマ的な展開は予想しにくいだろうし、上記の引用以外の作品紹介を見ても、受ける印象は同じ。
ところがどっこい、この話は過去、自分の書いた作品を世に出したことで家族との絆を失ってしまい、その出来事がトラウマになって自宅から外に出れなくなった一人の女性が、再びまともな社会生活をするまでに至る過程を描いたヒューマンドラマなのである。
であるから、殺人鬼は存在がほのめかされるだけで、彼女と直接かかわることはない。そして、謎のブザーは最後まで誰が押してたのかわからないまま。ちなみに、前者の殺人鬼さわぎは、物語の舞台となってる1977年のニューヨークで実際に起きた事件の話らしい。この当時のニューヨークは治安がかなり悪くなってて、この物語で描写されるようなエリアだったみたい。で、物語終盤で起きた停電なんかも実際の出来事のようだ。
つまり何というか、こうした物語内でのニューヨークの不穏な感じというのは、当時をそのまま再現しているのであって、そういう時代にその街のよろしくない地域に生きてた女性が、何人かの人と関わる中で、自分の人生を取り戻していく姿が描かれるのだ。
取り戻していくとは言え、それが起きるのは男娼と彼女が一夜を共にして、その男娼から「このブザーは君が外へ出ていくことを示しているのだ」的なことを言われて後に、唐突に彼女の気持ちが変わったようにしか俺には見えなかったので、それまでの彼女はただただ、うだつの上がらない生活をしているダメ人間にしか見えない。
それに、彼女がどうして男娼との一夜の後に、いきなり作家としての活動を再開するべく、作品を書き始められるようになったのか、その心境の変化も俺にはようわからんかった。つまり何が言いたいかというと、ヒューマンドラマ的な物語としても全然面白くなかったのである。
そもそも、この主人公は自分の体験を基にしたことを書いておきながら、それを指摘されて、しかも、それが自分の家族を崩壊させることになったことに傷ついていたようだが、そんなもん、世に出す前に覚悟しとけよって思っちゃう。自分の書いたもんが家族の迷惑になるだろうことを予測できないとか、自分の作品に対する自覚が薄すぎだろ。バカなの?
バカと言えば、いくら何でも運び屋みたいな兄ちゃんに1部しかない原稿を託すところもどうかしている。コピーが取れないのはわかるけど、人生賭けた作品なんだから、もう1部くらい写筆するとか何らかの工夫はできると思うんだが。しかも結局、あの兄ちゃんが無事に出版社に作品を届けてくれたのかどうかを描かずに、それが世に出て売れちゃってる形のラストにしちゃってるのも不親切だよなぁ。
あの兄ちゃんの顛末を描かないと、彼との関わりや彼がけっきょくどういう人間だったのか不明瞭なまま。それなりに彼との意味深な会話劇もあったわけだし、その辺は説明すべきだろ。
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