リビング・デッド サバイバー
―2018年製作 仏 93分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ゾンビ化した世界に取り残された男女の戦いを描いたサバイバルアクション。サムは私物を取り返すため、元カノのパーティーに参加する。人が苦手なサムは、部屋の奥で眠りに落ちてしまう。すると翌朝、サム以外の人間は全員ゾンビとなっていた。(KINENOTE)
あらすじ:非社交的なサムは、元カノから私物を取り返すため彼女のパーティに渋々参加することに。人が苦手なサムは、奥の部屋に逃げ込みいつの間にか眠りに落ちてしまった。翌朝、彼が目覚めると壁は血で染められ、生きている人間の姿はなく、サム以外の人間は全員ゾンビとなってしまっていた。ゾンビに囲まれた建物に立て籠り、予測不可能なゾンビの襲来や日に日に減る食料と水に決死のサバイバルを繰り広げながら、他に生き延びた者がいないか捜索する孤独な毎日。そんな絶望的な状態の中、やっと出会えた生存者のサラ。サムは、この終末世界を彼女と共に戦い抜くことはできるのか―。(amazon)
監督:ドミニク・ロッシャー
出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー/ゴルシフテ・ファラハニ/ドニ・ラヴァン
ネタバレ感想
フランス産のゾンビ映画。引用した解説にあるサバイバルアクションて紹介はちょっと大げさ。非常に静かなゾンビ映画で、派手なシーンはほぼないと言っていい。
あまり社交的ではない青年のサムが、元カノに貸してたカセットを返してもらいたくて家に訪ねて行ったら、大勢人が集まる自宅パーティの真っ最中。元カノはかなり社交的な人だったみたい。で、そういう場所が苦手なサムは、落ち着いて話すなどしたいみたいだが、元カノは邪険。「カセットは部屋の奥に置いてあるから勝手に持って帰ってよ」てな感じで取りつく島もない。
仕方なくサムは一人で酒を飲んで暇をつぶし、部屋の奥に向かったら、酒のせいか眠くなって寝てしまった。んで、起きたら翌日。カセットを持って部屋を出ようとしたら、様子がおかしい。壁に血のりがついてるし、誰かに荒らされたみたいに散らかってるのだ。
恐る恐る外に出ようとして見たら、変な人間が襲い掛かってきた。ドアを閉めて、窓の外を見ると(元カノの家はマンションみたいな感じ)、外はゾンビであふれかえっていたのだ! どうするサム。果たして彼は無事に屋外へ脱出し、生きている人間に会うことができるのだろうかーーみたいに思わせるのが冒頭の雑なあらすじ。
で、その後サムはどうするかというと、マンションの中を恐る恐る散策し、食料やら使えそうな道具などを集め始める。そこは理解できる。できるんだが、そこから彼は趣味の世界に入っちゃうのだ。どうやら音楽が好きなようで、音楽を楽しめる環境づくりをし、たまたま見つけたドラムセットで演奏まで始めちゃう。楽しそう。
要するにこいつ、非社交的引きこもり体質なんだな。であるから、急いで外に出ようとか、生き残りを探すことよりも、自分の生活が平穏に過ごせるようにすることを優先しているように見える。まぁでも、その気持ちはわからんでもない。俺も若い頃はクラブとか行ったけど、さほど面白いとも思わなかったし、欧米の映画でよくある知らない人もたくさんいる大規模な家パーティとか何がおもしろいのか見てて理解できなかったし(笑)。
てなことで、ドラム叩いたり音楽聞いたりして、集めた食料で食いつなぐというそれなりの生活をサムはしばらく続けるのだ。しかし、水道が届かなくなったのかシャワーが使えなくなるし、やっぱり外はゾンビだらけ。状況はよくならない。ある日サムはエレベーターで見つけた老ゾンビを殺そうと思うんだけどヤッパリやめて、アルベルトと名前を付けて一方的な会話をするようになる。
さらに、外を歩いていた猫を見つけると、餌でおびき寄せようとしてもうまくいかないので、リスクを犯してマンションの外に出ちゃう。けっきょくそれはゾンビに襲われて未遂に終わっちまうわけだが、彼が何を欲しているかというと、会話のできる他人だ。
さすがの引きこもり体質も、だんだんと喋り相手のいない孤独に耐えがたくなってくるのである。しかし、外に誰かを捜しにはいかない。やっぱり生活は変えないのである。
そしたらある日、就寝中にドアの向こうで物音が。ゾンビと思ったサムは、ドア越しにショットガンを発砲。外が静かになったので様子を見に行くと、なんとそこには女性が倒れているではないか!
せっかく出会った生き残りを自分の手で撃ってしまったサムは動揺しつつも必死で彼女の怪我の手当てをする。すると彼女は何とか回復して、会話ができるようになった。話し相手ができたサムだが、特に生活を変えるつもりはない。しかし、彼女=サラは、屋根づたいに移動を続け、ひとの集まる場所を探しているのだという。そこに希望を見出せないサムは、出ていこうとする彼女に同意ができないため、軽く口論になってしまう。それでサムはいろいろ考えた結果、彼女と一緒にいるほうが孤独でないわけだし、この場を去る決意をするのだ。で、サラにそのことを告げようと彼女の元に行くわけだが、実は、彼女は死んでいたのである。つまり、サムが発砲したときに彼女は死んでいて、サムは妄想の中で死んだはずのサラと会話をしていたのである。
孤独に耐えきれずに自分がおかしくなってきたことを自覚したサムは、元カノの部屋から回収したテープ(昔の自分が親と会話している内容が録音されている)を燃やし、過去の自分と決別することを決意。サラの意志を継いで(正しくは自分の考えなんだが)、外界へ旅立っていくのであった。
ーーというのがラストまでの話。最後は遥か彼方まで屋根づたいに移動ができそうな建物が続いていて希望を感じさせる描写で劇終。
これはゾンビシチュエーションを借りた、青年の成長物語だったわけだな。あとは、孤独に生きることの難しさを表現しているのかと。サバイバーて邦題は盛りすぎだろと思うので、原題をそのまま使っておけばいいのになと思っちゃう。煽って不評を買うよりは、ちゃんとこの作品を正当に評価した宣伝すればいいのにって思うんだが、どうしてこうなっちゃうんだろ。仕方ないのかね。
とかいろいろ思うことはあるものの、短くまとまってるし、亜流のゾンビ映画としてはそこそこ楽しめた。
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