スティーブン・キング 痩せゆく男
太りすぎピザ野郎な弁護士のビリーが、自分が起こした事故を揉み消しにかかったら、被害者の遺族から呪いをかけられちゃって、みるみるうちに痩せてっちゃう。果たして呪いは解けるのか。登場人物がけっこうなクズばっかりで、なかなか笑わせてくれるホラーです。ネタバレあり。
―1995年製作 米 102分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ダイエットに挫折した弁護士が、事故で轢き殺してしまったジプシーの呪いによってみるみる痩せていく恐怖を描いた恐怖映画。人気ホラー作家のスティーヴン・キングの小説『痩せゆく男』(邦訳・扶桑社文庫)の映画化。監督は「チャイルド・プレイ」のトム・ホランド。脚本は「ビートルジュース」のマイケル・マクドウェル。 135キロから55キロまで痩せていく特殊メイクはマイケル・ジャクソンのMTV『スリラー』のグレック・キャノンが担当。製作はリチャード・P・ルービンスタイン、ミッチェル・ガリン。撮影はキース・ファン・ウーストラム。音楽はダニエル・ライト。美術はローレンス・ベネット。編集はマーク・ラウブ。主演は「ロボコップ3」のロバート・ジョン・バーク。共演は「アンカーウーマン」のジョー・モントーニャ、「マイ・ライフ」のマイケル・コンスタンティン、「シェイド」のカリ・ウーラーほか。スティーヴン・キングもドラッグストアの主人役で姿を見せる。(KINENOTE)
あらすじ:肥満に悩んでいた弁護士のビリー(ロバート・ジョン・バーク)はある夜、酔って車を運転し、ジプシーの老女(カリー・ワーラー)を轢き殺してしまう。ビリーは身の保全を図るため旧知の警察署長と判事に頼んで事故を揉み消した。ジプシーの長老のレキム(マイケル・コンスタンティン)がビリーの頬をなでて「痩せていく」という言葉を残すと、ビリーは翌日から痩せ始めた。最初はダイエットが成功したと思い込むが、いくら食べても体重は減り続けた。事故を揉み消した判事はトカゲのような鱗に覆われ、署長も顔が醜く変貌しそれぞれ自殺した。それがジプシーの呪いと知ったビリーはレキムの行方を探した。しかしレキムは呪いを解かない。ビリーはマフィアのジネリ(ジョー・モントーニャ)に頼んでジプシーたちに復讐を始める。レキムは取引に応じ、ビリーに呪いを解くパイを渡す。それを誰か殺したい人に食べさせなければならない。妻のハイディが医師のマイクと浮気をしたと思い込んだビリーはそれを彼女に食べさせた。翌朝ハイディはベッドの中でいちごパイ状の死体と化していた。呪いは解けた。しかし愛する娘もそのパイを食べてしまったことを知りビリーは愕然とする。ビリーがパイを食べて死のうとした時、マイクが訪ねて来た。ビリーは彼にもパイを勧める。(KINENOTE)
監督:トム・ホランド
出演:ロバート・ジョン・バーク/ジョー・マンテーニャ/カリ・ウーラー/ルシンダ・ジェニー/マイケル・コンスタンチン/ジョン・ホートン/サム・フリード/スティーヴン・キング
ネタバレ感想
適当すぎるあらすじ
弁護士のビリーはある晩、車を運転中に奥さんにフェ〇をしてもらってたら、ジプシーのお婆さんを轢き殺しちゃう。もともとジプシーに対して差別的な見解を持っていたビリー。何とか事件をもみ消したい。そこで卑怯にも、知り合いの判事と警察署長に揉み消しの手伝いをしてもらうことにした。
判事と警察署長はもともと知り合いなので、ビリーの提案を快諾。果たして彼は無罪を勝ち取ることに成功するのだ。ところがこの判決を不服と思ったものが当然いる。お婆さんの肉親であるジプシー一家だ。特にお婆さんの旦那かつ、一団の長老でもあるレキムはビリーを許すことができぬ。
そこで、彼に呪いをかけることにするのだ。どうやって呪うのかというと、ビリーの頬に手を触れて小声でささやくだけ。「お前は痩せていく」と。意に介しないビリー。でも、ダイエットがうまくいかなくて全然落ちなかった体重が、毎日のように減っていく。
最初は気にしてなかったようだが、日に1万2000カロリー近い食料を摂取しても、体重が減っていくのだ。さすがにこれはおかしい。もしかしたら本当にレキムの呪い!? 不安になったビリーは判事に相談しようとしたが、なんと彼は体が爬虫類のウロコに覆われていく奇病に罹っていることが判明。さらには警察署長も顔がドロドロに焼けただれたみたいな変な症状に悩まされていた。いずれもレキムから何かを言われたらしい。そして2名はその後、この世を去った。
何とかレキムに呪いを解いてもらおうと頼み込むが、それを拒否されたビリーは、以前、裁判で救ってあげたことで貸しをつくっていた、マフィアの男に助けを求めるのであった。果たしてどうなっちまうのかーーというのが途中までの適当なあらすじ。
ビリー周辺はクズ人間
以前から存在は知ってたんだけども、鑑賞したことがなかったので、レンタルしてみた。レキムの呪いの原理とかは特に説明がないが、そんなものを説明なんてできるわけないので、その辺はスルーするしかないんだけど、スゴイ力だよね。
だって、言葉をかけるだけで、人を痩せ続けさせちゃうんだよ。他にも、人の肌を爬虫類のウロコみたいにできるとか、超人すぎるだろ。
でまぁ、このジプシー集団は白人たちの迫害の対象みたくなってるみたいで、ビリーなんかはあからさまに差別的な目線で見てるし、そうした態度を取ってて、ともかく嫌な奴なんだよね。
だから、彼が痩せていく自分を何とかしようとジタバタしてる様は、「ざまぁみろ」という感情しか湧かないんであって、別にホラー的な怖さはあまり感じないんである。むしろ、笑える。
奥さんも、ビリーの知り合いと浮気をしているっぽくて、そんな奴のフェ〇が原因でこの災難に遭ったと思うビリーにとっては、まさに憎き妻なわけで、ラストは彼女を犠牲に自分の呪いを解こうとする鬼畜ぶり。
しかも、その報いとして娘を失うことになっても、さほど意気消沈する様子もなく、それなりにすぐに立ち直って、奥さんの浮気相手も殺すことにして、ラストを迎える。
序盤から嫌な奴であったことには変わらないが、最後になるにつれて狂気すら感じさせられるビリーは、呪いを受け入れて死に至ることを回避する代わりに、人としての何かを失っていく。
つまり、呪いは痩せていくことだけではなかったのかもしれない。とは言え、彼はある意味では公に罪を認めることなく生き延びたわけで、この作品の中では勝ち組という見方もできなくもない。
ちなみに、本作でビリーの呪いは解けるわけだが、仮にあのまま痩せ続けたら、彼の描写はどんな感じになったんだろうね? 骨と皮だけとかになって、そのあととか…。その辺を描いてくれたら、それはそれで面白かったような気も。どんなビジュアルになっていたのか気になる(笑)。
マフィアのジネリ=ジョーイザザ(笑)
ちなみに、こうしたクズみたいな白人がいっぱい出てくる中で、実は一番まともな人間に見えちゃうのが、マフィアのジネリってところがなかなかの皮肉。
ビリーに支援を頼まれた彼は、裏社会の手法でもってジプシー集団と対決する。やっていることは犯罪なんだけど、他の白人どもと比べれば、義理堅い男であるという見方もできる。しかも有能。
彼の活躍によってレキムは家族をさらに亡くすことになり、これ以上の血を見ることを避けるため、呪いを解く方法をビリーに教えざるを得なくなるのだ。
このジネリを演じてるのが、ジョー・マンテーニャってところがまたいい。彼は『ゴッドファーザーpartⅢ』でヴィンセント・コルレオーネ(アンディガルシア)と対立するジョーイ・ザザ役だった人。であるから、今作のジネリもマフィアってことで、俺の中ではジョーイザザが再登場したような感覚で鑑賞してしまった(笑)。
コメント