スプリー
ソーシャルメディアでフォロワーを増やしたい青年が、Uber Taxiみたいなサービスを開始。仕事風景を撮影しながら乗客を殺すことでバズりを狙うのだが…。登場人物のほぼ全員がバカかサイコ野郎で、誰にも感情移入できない作品。SNSサービスにのめり込む人々の風刺にはなっているが、面白くはない。ネタバレあり。
―2020年製作 米 93分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説ドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のジョー・キーリー主演のスリラー。SNSで注目を浴びてスターになることを夢見るカートは、ライドシェアアプリの運転手の仕事をしながら、乗客を殺害する様子を生配信するというアイデアを思いつくが……。監督・脚本は、ウクライナ出身の新鋭、ユージーン・コトリャレンコ。出演は、『サタデー・ナイト・ライブ』のサシーア・ザメイタ、「スクリーム」シリーズのデヴィッド・アークエット、「ブリグズビー・ベア」のカイル・ムーニー、ドラマ『The O.C.』のミーシャ・バートン。(KINENOTE)
あらすじ:母親と二人暮らしのカート・カンクル(ジョー・キーリー)の夢は、ソーシャルメディアで注目を浴びてスターになること。だが、現実はうまくいかず、ぱっとしない生活を送っている。カートはスプリーというライドシェアアプリで運転手の仕事をしながら、ライブストリーミングで注目を集めようと、“ザ・レッスン”という生配信を思いつく。それは、乗客を殺害してその様子を配信するというおぞましいアイデアだった。カートは客を乗せると、仕込んであった毒入りの水で殺害することに成功するが、配信はまったくバズらない。もっと過激な映像で視聴者を見返してやろうと意気込んだ矢先、有名コメディアンでフォロワーを多数抱えるジェシー・アダムス(サシーア・ザメイタ)が客として乗車してくる。カートは拡散を依頼するが、常識外れな相談に同意するはずもなく、ジェシーは憤慨して途中下車してしまう。日が暮れて、イケイケのパーティーピープル3人を乗せると、カートは思惑通り派手に殺害する。しかし、配信は盛り上がらず、退屈だというネガティブな反応にカートは憤りを隠せない。すると、昼間乗せたジェシーが数百万人視聴するライブストリーミングに出演することを知り、配信ジャックを画策する。道中で、ライブストリーミングをシェアさせて拡散を依頼していたインフルエンサー、ボビーの元を訪れると、協力する気のないボビーを口論の末に銃で殺害する。しかし、ライブストリーミングを開始していたボビーの方がバズり、カートに対しては下らないフェイクだと誹謗中傷が殺到する。カートは乗客のみならず、拡散に協力しないインフルエンサーや視聴者にまで怒りの矛先を向ける。カートは追跡を逃れながら、ジェシーの元へと車を走らせる……。(KINENOTE)
監督:ユージーン・コトリャレンコ
出演:ジョー・キーリー/サシーア・ザメイタ/デヴィッド・アークエット
ネタバレ感想
アマゾンプライムで見つけて鑑賞。冒頭に書いたように、出てくる登場人物が全員クソ野郎。唯一、コメディアンの女性は主人公のカートのイカれぶりに接したことで自分の人気インフルエンサーとしての立場を顧みて、いったんはSNSを放棄することを決意する。でも、ラストでカートを葬ったことにより結局はSNSの世界に戻ることになり、大人気を博すようになって物語が終わるという皮肉な結末。
カートは10年もソーシャルメディアのいろんなアプリを使ってインフルエンサーになることを目標としてるんだが、何をやっても彼の企画は人気を博すことができない。
よくあんな活動を10年もできるなぁと関心はするが、どんだけ承認欲求強いんだよと思わざるをえない。で、彼は旧知の仲であるボビーという少年がインフルエンサーであることを利用して、自分の殺人動画をタグ付けすることでバズろうと試みる。
だが、彼の殺人動画はさして人気を得られない。で、結局はボビーや女性コメディアンのフォロワーたちをジャックして人気を得ようとするんだが、それも失敗。だんだんと狂気に満ちた男になっていく。
もともとサイコ野郎なん男が、後戻りできないほどに狂暴になっていくことが描かれる今作、さっきも書いたように、人気を博すインフルエンサーとそれを支えるフォロワーたちのクソさ加減を描くことで、それらを風刺しているんだろうけど、いかんせんあんま面白くないんだよな。
あと、Uber Taxiみたいなサービスの危険性にも言及してる。要するに、会社に所属しない個人が行うサービスには、法人の提供するものよりも危険性があるってことだ。カートみたいなサイコ野郎に遭遇する確率も高まるだろうからね。
まぁともかく、カートが乗せる客も、ろくでもない奴ばかりなんで、殺されても哀れとは思えない。ともかく出てくる奴らの命が軽い。
カートは殺人動画でバズったら、その先はどうするつもりだったのか。逮捕されるのを覚悟で人気者になりたかったってことなのか? たぶんそうなんだろうねぇ。
彼は女性コメディアンに抹殺されたことで、その存在を知られることになり、死んだ後に彼の動画を他のネット民がかき集めて、今回の作品が出来上がったというオチがエンドロールでついていた。
そのオチは、ネット社会の闇というか、恐ろしさを示すことには成功しているので、そこはいいと思う。
この作品での肝は、女性コメディアンが舞台でまじめに、自身がSNSを通じてやってたことの酷さやバカさ加減に気付いたと述べるセリフの中にある。
彼女の言っていることがわかる人は、ある程度、良心的な配信者であるだろう。しかし、彼女自身はその後、カートに襲われる恐怖を味わったせいもあってか、自分の気付きを裏切って、またSNSの世界に戻っていくのだ。そして、そういう彼女がさらなる人気を博してるってところに恐ろしさがある。
ということで、繰り返しになるけども、SNSやらインフルエンサーやらフォロワーやら、その辺の使い方によってはとんでもないことが起こっちゃうってことを風刺することには成功していて、そこには共感できた。
そういう意味では、若い世代の人の教材として鑑賞できるようにすれば、多少の意味はあるかもしれない。少なくとも、自動車の免許更新時見せられる、「事故を起こすと悲惨なことになっちゃうよ」ドラマよりは楽しめるからね(笑)。
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