モンストラム/消失世界
バスジャックにあったバスが、異世界に飛ばされてまう。その世界には謎の殺人砂嵐が吹き荒れ、灰色のヘンテコな化け物がいる始末。残されたバスの乗員たちは生き残ることができるのか。それなりに面白い設定なのにそれが活かされておらず、モンスターが作り物のCG感丸出しな残念作品。ネタバレあり。
―2018年製作 中 83分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:砂漠に取り残された6人と怪物の戦いを描いたSFパニック。バスジャックされた通勤バスが、ワームホールに飲み込まれて砂漠に飛ばされる。そこで待ち受けていたのは…(KINENOTE)
街を走る通勤バスが、トンネルの中で消失した。車内では乗員乗客すべての人間が失神。彼らが目を覚ますと、そこは荒涼とした砂漠のど真ん中。おまけに彼らは記憶を失っており、混乱は増すばかりだ。パニック陥った彼らはバスの外に逃げ出すが、今度は砂嵐が彼らを襲う。しかも、その砂嵐に巻き込まれた人間の身体はバラバラに!生き残ったのは5人の男と1人の少女。更に、砂漠に蠢く何かが、彼らをじっとみつめていた・・・。(Amazon)
監督:ダイ・ジンルアン
出演:ヤン・スー/ジェン・ミン/ハン・ヤンボ/ルー・イェ/チェン・サンム
ネタバレ感想
アマゾンプライムで鑑賞。いろいろ説明不足感があるし、モンスターのチープさが萎える駄作。もちろん、それをわかりきったうえでの鑑賞なので、別に怒りとかは湧かない。
物語の大筋は、犯罪者と刑事と一般人と少女が異世界に連れ込まれ、そこで砂嵐やモンスターに襲われジタバタするというもの。
ポイントは登場人物全員が記憶を失っているところだ。であるから、犯罪者も刑事も少女も自分が誰なのかもわからずに異世界で生き残りをかけて戦うことになる。仮に記憶を失くしていない場合、彼らがいがみ合うことは避けて通れないわけで、謎の地帯で共闘を始めるのにもそれなりに時間がかかったであろうから、なかなかに気の利いた設定だと思わなくもない。
実際に、5人の男は記憶を失くしているからこそ、もしかしたら自分の娘かもしれない少女に感情移入し、自らを犠牲にして彼女を守ろうと頑張るようになる。自分の命が大切そうにしてたやつも、最終的には彼女のために犠牲を払うようになる心変わりの早さは笑えるが、まぁでも、それなりに物語に興を与えていた設定ではあると思う。
しかし、この記憶とやらは、異世界にいるうちにだんだん蘇ってくるとか言われてた割に、死ぬ間際に記憶が戻る奴もいれば、戻らないまま死んじまう奴もいるし、なんだかよくわからん。少女に至っては現実世界に戻ってからも、母親を母親と認識できてなかったみたいだし。あの描写っているだろうか。記憶取り戻しておけばよくね?
突っ込みどころは他にも満載で、主人公たる刑事がラストバトルで2体のモンスターと戦うくだり。ナイフを駆使してモンスターと喧嘩を始めるも、2対1では分が悪く重傷を負うことになるんだが、彼に襲い掛かっているのは1体だけで、もう1体はマゴマゴして襲い掛かってこないのはなぜなのか。
モンスターの他にも脅威があって、それが砂嵐だ。どういう時に襲ってくるかわからんのはいいとしても、最初に乗客のほぼ全員が一瞬で殺されるシーンでは、ものすごい威力を誇ってたように見えるのに、その後のシーンでは、バスの中にいれば凌げちゃってるからね。
他にもいろいろある。そのなかで一番寒い演出だなぁと思ったのは、西遊記設定を入れているところ。少女は5人の男たちをそれぞれ西遊記の登場人物になぞらえて慕うようになってて、男たちもその少女の呼び名を採用して行動するようになる。見てるこっちが恥ずかしくなってしまう。俺が子を持つ親ではないからだろうか?
で、主人公の男が一番頼れるから、孫悟空と名付けられたのは良しとして、怪物に襲われているクライマックスのときに、主人公は「オッス、オラ悟空」とか孫悟空のフリしたセリフを言うんだけど、この字幕はおかしいだろ。そのセリフはアニメ版のドラゴンボールの孫悟空の使う挨拶であって、西遊記の悟空はオッスとか言わないと思うんだが(笑)。字幕付けた人も投げやりに仕事やってたんかねぇ。
じゃあ製作者たちは投げやりにこの仕事をしたかと思うと、そうでもなくて、ラストのエンドロールを見る限り、みんな真面目に、しかもけっこう苦労しながら撮影していた様子がうかがえた。しかし、一生懸命つくったものが面白いとは限らないってのは、悲しいもんですなぁ。
あと、登場人物たち5人が少女を祝ってあげる謎シーンはダサすぎで笑えるんだが、なんであんなシーンを流したのかは意味不明。
ちなみに、この作品を観てたら大林宣彦監督の『漂流教室』を思い出してしまった。同じように異世界に飛ばされちゃう話だからだろう。あの作品は一度、地上波で観たことがあって、当時は子どもだったために、非常に怖がってみた記憶があるトラウマ映画の一つだ。あれ以来、鑑賞したこと一回もないのに、大筋はほぼ覚えてる。どうやらDVD化はされてないようだが、どっかで配信とかしないのかね。
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