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映画 負け犬の美学 ネタバレ感想 父と娘の成長物語

映画 負け犬の美学
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負け犬の美学

うだつの上がらない中年ボクサーが、家族の生活と娘の夢を応援するために世界戦を控えたスーパーボクサーのスパーリング相手になって頑張るヒューマンドラマ。ネタバレあり。

―2018年公開 仏 95分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:「アメリ」のマチュー・カソヴィッツ主演の人間ドラマ。40代半ばのボクサー、スティーブは、たまに声のかかる試合とバイトで家族をなんとか養っていた。しかし、娘の夢を叶えるため、誰もが敬遠する欧州チャンピオンのスパーリングパートナーを引き受ける。出演は、ミュージシャンのオリヴィア・メリラティ、元WBA世界王者のソレイマヌ・ムバイエ。監督・脚本は、本作が監督デビュー作となる俳優サミュエル・ジュイ。(KINENOTE)

あらすじ:40代半ばを迎え、盛りを過ぎた中年ボクサーのスティーブ(マチュー・カソヴィッツ)は、たまに声のかかる試合とバイトで家族をなんとか養っていた。しかし、ピアノを習ってパリの学校に行きたいという娘の夢を叶えるため、誰もが敬遠する欧州チャンピオン、タレク(ソレイマヌ・ムバイエ)のスパーリングパートナーになることを決意する。スティーブはボロボロになりながらも何度も立ち上がり、スパーリングパートナーをやり遂げる。すると、チャンピオンからある提案が舞い込んでくる。家族のため、そして自身の引き際のために最後の大勝負に出たスティーブが、引退試合のリングで娘に伝えたかった思いとは……。(KINENOTE)

監督・脚本:サミュエル・ジュイ
出演:マチュー・カソヴィッツ/オリヴィア・メリラティ/ソレイマヌ・ムバイエ/ビリー・ブレイン

ネタバレ感想

この作品は、見る人によっては眠るだろう。描写が静かだし、動きの少ない長回しのシーンなども多いからだ。実は俺もところどころ眠かったが尺の短さにも助けられて最後まで鑑賞できた。で、全編通して鑑賞した感想として、これはダメボクサーが奮起を図る『ロッキー』みたいな展開ではなく、あくまで父と娘の関係を軸とした家族ドラマであったということで、その中で主人公である親父のスティーブと、その娘が成長していく話というように読み取れた。

確かに、ダメボクサーが奮起して…などという話では『ロッキー』の2番煎じみたいなもんだし、本作はフランス映画であるからやはりハリウッドとは違うストーリー展開になるのも当然と言えば当然だ。

スティーブは万年4回戦みたいな感じのボクサーで、50戦近いキャリアの中で13勝しかしてない。でも、中年になった今でもボクシングを続けている。ボクシングが好きだからだ。だから、いくら殴られてボロボロになろうが、引退しない。あることがきっかけで、スティーブは世界戦を控える欧州王者のタレクのスパーリングパートナーを務めることに。

もちろんまったく歯が立たないので一回のスパーでお役御免になるところだったが、スティーブはタレクにスパー相手を継続させてもらえるように直訴する。それは娘にピアノを買ってやるためでもあり、自分自身のためでもあっただろう。

スティーブの引退試合でわかることだが、彼はタレクのようなボクシングスタイルが好きだし、憧れていたようだ。それは踊るように戦うスタイルだ。憧れのスタイルだからこそ、タレクの強みがそこであると知っていて、中央で打ち合うスタイルで世界戦を戦おうとプランを練っているタレク陣営のトレーナーに苦言を呈するのである。

だから、タレクと二人になったときにも、いつものスタイルで戦うよう進言するのだ。けっきょく、タレクの世界戦はどうなったのかは描かれない。この作品ではその描写が省かれている。なぜかというに、表現すべきは父と娘の関係であるからだろう。メッセージ性を強めるために他のエピソードはいらないという判断なのかもしらん。

ということで、スティーブは50戦のキャリアの中で、タレクのようなファイトスタイルを一度も使用しなかったのか、それとも途中で封印したのかわからんが、ともかくラストファイトではフットワークを使ったアウトボクシングで戦いぬいた。

これについても勝敗は曖昧にぼかされている。娘に勝ったの? と聞かれても微笑むだけ。どっちだかわからないが、そのシーンにおいて、娘と父は心が通じ合っていたようだ。それを表現すればよいのであり、やはり勝敗については触れる必要がないという判断のように思われる。

ラストシーンは娘のピアノの発表会で終わる。なぜかホール内の席に座らずに廊下みたいなところで娘の弾く『ノクターン』を聴くスティーブ。そして演奏終了後、そっと会場を去る。娘はそれを知っていたのか知らなかったのか、その辺はよくわからんが、満面の笑みを浮かべる。そして物語は終了する。なかなか印象的なシーンだ。

この娘役の女の子は非常に可愛い子で、特にラストシーンの笑顔は素晴らしいのであった。ボクシングが好きで、ボクシングを愛した男は、ボクシングには愛されなかった。しかしそれでも、己の道を追求する姿を通して、娘に何かを教えたのである。

ーーと、なかなか感動的なんだけど、タバコを吸っちゃうのはいかがなもんかね。冒頭からあれを見せられると、スティーブがそこまでボクシング愛のあるやつには見えなくて、そこが何だか残念だった。最後まで禁煙してないし(笑)。

あと、細かいしどうでもいいけど、スティーブはミドルが適性でスーパーミドルだと無理やり体重増やしてた感じだけど、体格的にもう少し軽い階級に設定しなかったのはなんでだろうか。タレク役の人はリアルの元世界チャンプのソレイマヌ・ムバイエで、彼は現実だとスーパーライト級とかウェルターの選手だったみたいだし。まぁいいか。

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