サイレンス・ゾーン
―2018年製作 墨 96分―
あらすじ・スタッフとキャスト
あらすじ:メキシコの“バミューダ・トライアングル”と言われるサイレンス・ゾーン。昔、その地でアナの祖父は、力を持つ石を手に入れた。アナは息子の命を救うため、何としてもその石を見つけなければならない。石の在りかを突き止めようとしたことで、過去の真相が明かされ、ある人物の正体を知ることになる。(Filmarks)
監督・脚本:Lorena Villarreal
出演:メリーナ・マシューズ/ルパート・グレイヴス/ジョン・ノーブル
ネタバレ感想
タイムリープ、オカルト、親子愛などいろいろな要素がまざった作品。初めて知ったんだけど、メキシコにもバミューダトライアングルみたいなエリアがあって、それが本作の題にもなっているサイレンスゾーンなのだ。ここにアメリカ軍のミサイルがコースを離れて墜落したってのはどうも本当にあったことなのかどうかはよく知らんが、そのエピソードを基にしたフィクションがこの映画なんである。
でまぁ、アナの息子を拉致した青年を操ってるのが誰かってのは、物語中盤に至る前に何となく予想がついてまう。そもそも登場人物の少ない作品なので、その中で怪しいのはアナの協力者たる青年か、アナの祖父の研究助手だったピーターくらいしかいない。
で、黒幕はピーターなんである。序盤にピーターは自分の先輩だったアナの祖父さんに早く会いたがってて、アナの連絡をほしがっているのに、いざ、アナが彼に会いに行く段にあっては、そのことについて何も言及しない。この時点でもう彼が石を狙っていることは想像がついちゃう。
ピーターが石が欲しかったのは、病気で死んだ自分の娘を生き返らす(厳密には生き返るわけではない)ためだったのだ。つまり、事件に巻き込まれたとはいえ、目的は息子を救いたいアナと同じ。
この、石を欲しがる理由が娘のためって展開は、そうくるかと思った。俺はもっと悪用を考えてるのかと思っちゃってたのだ。バカ映画の見過ぎだろうか(笑)。にしても、普段はまじめな学者さんなのに、自分の望みをかなえるためにあれだけ冷静に人を殺せる殺し屋ぶりには笑ったw
で、いろいろありつつも、アナが彼に石を譲ることになったのは、ピーターが戻りたい過去に行って娘を病気で亡くさなければ、石の争奪戦は始まらないからアナの息子も協力者の青年も死なないことになるからである。祖父さんも間接的に殺されることもなくなるはずなので死なないはず。ラストで彼がいないのは、寿命で死んだってことなんだろうと思われる。たぶん。
だからまぁ、ラストは一応のハッピーエンドだ。ピーターの遺言書によると、あの石の力は、同じ時間軸の過去に戻るというよりは、自分のやり直したい過去の並行世界に戻れるということらしい。つまり、アナは息子の生き続ける別の可能世界に移ったんだと思われる。それをピーターは「アナの人生が修正される」というふうに述べていた。この修正されるってのは、生きている次元が修正されたってことなんかね?
いずれにせよ、よくよく考えてみると、そもそもの世界のアナの息子は生き返っていなくて、死んでいるのだ。祖父さんもピーターも物語冒頭で、一度別の並行世界に移動しているから祖父の最初の世界のアナはやはり、死んでいるのだ。祖父が移動した先のアナ=本作の主人公は別のアナなのである。端的に別人だ。ピーターは自分が過去に戻れば殺しを不問にできると思っているので平然と複数人を射殺してたが、あの罪は消えない。なぜなら、あの人たちはピーターが戻ろうとしてる過去とは別次元の人なのだから、単に死んだという事実が残るだけで生き返ることはないからだ。
上記は作品の質を腐したいのではなく、単に俺の私的な疑問だ。並行世界に移る話を題材にした作品って、このことについては言及しないんだよね。なんでなんだろうか。たぶん、俺の言っていることを疑問に思う人のほうが少ないからなんだと思う。そして、繰り返しになるけど、この疑問は本作の良し悪しをどうこう言うためのものではない。ちなみに、これに似た感想を述べてる作品をいくつか、下に紹介しておくので興味がある方は読んでください。
作品そのものは短くまとまってて、それなりに楽しめた。あ、でも、あの霊視みたいなんができる青年は、なぜそんなことができるようになったんか、なぜ石を媒介に過去の人と話せるのかとか、その辺の謎を不問にしてるのは突っ込んでおきたい(笑)。
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