7 Wish /セブン・ウィッシュ
ホラー映画のつもりで鑑賞したのに、まさか多元宇宙ものの作品だったことには驚いた。驚いたが、それ以外には驚きのない展開。サクッと観るには悪くない作品だけど、特別面白いわけではない。ネタバレあり。
―2018年公開 米 90分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:「アナベル 死霊館の人形」のジョン・R・レオネッティが、「死霊館」のジョーイ・キングを主演に贈るホラー。“七つの願いが叶う”と書かれた古いオルゴールを発見したクレアは、同級生のダーシーからイジメを受け、思わず願いをかけてしまうが……。共演は「父親たちの星条旗」、「リンカーン弁護士」のライアン・フィリップ。(KINENOTE)
あらすじ:幼少期の母親の自殺をトラウマとして抱えるクレア(ジョーイ・キング)は、クラスの人気者で美人のダーシーからイジメを受ける日々が続いていた。そんなある日、クレアの父親が古いオルゴールを発見。よく見ると、そこには“七つの願いが叶う”と書かれていた。それを気にも留めないクレアだったが、再びダーシーの嫌がらせに遭ったことから、思わず“ダーシーなんか腐ってしまえ!”と願う。すると翌朝、クレアの望み通り、鏡を覗いたダーシーの目に映ったのは、腐り始めた自分の顔だった。しかし、望みが叶うと同時に、クレアの愛犬が死体となって発見され……。(KINENOTE)
監督:ジョン・R・レオネッティ
出演:ジョーイ・キング/ライアン・フィリップ
ネタバレ感想
適当なあらすじ
貧乏でいじめられっこのクレアは冴えない毎日を送っている。ある日、ゴミ漁りで生計を立てる彼女の親父が、町のゴミ箱の中に捨てられていた中国製の箱を彼女にプレゼント(よく考えてみると、めちゃくちゃな親父だな)。
箱を手にして願いごとをつぶやくと、それが現実のものとなることを知ったクレアは、いじめっこの魔の手から逃れ、貧乏脱出、意中の男と恋仲になるのだが、それには代償があった。
なんと、願いが叶うごとに、自分に関係のある人物が一人、また一人と命を落としていくのである。クレアは箱の呪いを解いて、無事元の生活に戻れるのか--というのが適当なあらすじ。
キッチンディスポーザー怖すぎ
サクッと観るには悪くない作品だけど、別に面白いわけでもない。『ファイナルデスティネーション』を意識した感のあるシーンが散見されるが、あのシリーズと比べるとだいぶ地味だ。
とりえあず、先に、よかったと思えるところ。それは近所のオバサンがキッチンディスポーザーと行うジタバタ劇からの死亡シーンだ。間抜けすぎる死で気の毒だが、ディスポーザーに手を突っ込んでいるシーンとか何かが起こりそうで起こらない、この映画で唯一、ハラハラドキドキさせられる場面である。
というか、キッチンディスポーザーとか怖すぎ。殺人家電だろ、あれ。あんなもんついてる家だと、子育てとか大変そう。いつ子どもが事故るか気が気じゃないと思うんだが――というのは作品とは関係ない話だ。
主人公がクズ
この映画の残念なところは、主人公のキャラがクズなところだろう。叶える願いはすべて自己中なうえ、その願いが叶ってからの立ち居振る舞いにまったく共感できない。そもそも、自分が密かに惚れていた男が、自分をいじめていた女の仲間ってところが、この主人公の外面ばかりに目を取られる浅い性格を示している。
金が手に入れば散在するだけ、意中の男を自分のものとすると、自分をいじめていた仲間のグループと行動するとか、その芯のなさに呆れてまうのだ。ティーンの女子だからこんなもんかと思わなくもないが、ちょっとこれでは感情移入はしづらい。
もともともの友人たちがいい奴らなだけに、主人公のバカ娘のおかげで不幸に巻き込まれるのが気の毒である。中国系の男の子もしかり。
父親の掘り下げが少ない
残念ポイントはほかにもある。父親や親戚のオッサンがいかなる人間なのかの掘り下げが少なすぎる。父親が彼をディスるようなセリフがあるので、おそらくあのオッサンは、クレアの母親の兄弟だと思われる。と多少は想像で補えるからいいとしても、親父のほうがね…。何でゴミ漁りをするまでに落ちぶれたのか、よくわからない。
母親がオルゴールで願いを叶えていたのなら、もう少しマシな生活になっててもよさそうなもんだが。ともかく何でサックスが吹けるのにゴミ漁りしかしてないのか、意味がわからない。ライアン・フィリップスの無駄づかいとしか思えない配役であった。
多元宇宙、並行世界ものの作品だった
この作品は多元宇宙、並行世界のある次元でのお話になっている。中国系の男の子との会話が伏線になっているように、ラストでクレアは願いをご破算にして、箱を手に入れた時点まで戻る選択をする。その世界に移動した彼女は、中国男と別世界で体験した出来事を話し、アプローチを仕かける。
あの描写は、彼女が別世界への移動に成功したことを意味する。つまり、もともと彼女のいた世界は、悲惨な状況のままなのだ。このオチによって、この物語は何がなんだかわからなくなる。新しい世界に本筋のクレア(A)が移動できたのはいいとしても、では、移動先の世界にもともといたはずのクレア(B)はどこに消えたんだ? 本筋の世界のほうではクレア(A)がいなくなっているので、クレアという人間が存在しない世界になっているのか、それともクレア(A)から分裂した(C)がいるのだろうか…?
さっぱりわからん。この疑問については作品とはあまり関係ない私的疑問なので、あまり腐しても意味がないから、この話については終わる。
母親の行動も謎が残る…
ただ、母親も箱を使って願いを叶えていたようで、そのことが彼女の自殺の要因となっているようだったが、自殺した時点の彼女は、願いを全てかなえた世界にいたのか、それとも、全てをご破算にして戻ってきた世界にいるのか、なんだかよくわからない。その辺の説明はもうちょっとしっかりあってもよかったような…。俺が理解してないだけという可能性もあるが。
ラストはお決まりのパターン
ホラー映画のつもりで鑑賞したのに、まさか多元宇宙ものの作品だったことには驚いた。驚いたが、それ以外には驚きのない展開の内容だった。クレアが死ぬのも、箱がまた利用されるであろうことが示唆されて劇終するのも、この手の映画のお決まりのラストである。
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