岬の兄妹
―2019年公開 日 89分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:生活のため犯罪に手を出す障碍を持つ兄妹を描き、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018国内コンペティション長編部門優秀作品賞・観客賞をW受賞した人間ドラマ。仕事を干され生活が困窮する中、兄は罪悪感を抱きながら自閉症の妹への売春斡旋を始める。「はなちゃんのみそ汁」など数々の作品で助監督を務めてきた片山慎三が、家族の本質に切り込んでいく。足に障碍を持つ兄・良夫を「ローリング」の松浦祐也が、自閉症の妹・真理子を「菊とギロチン」の和田光沙が、産婦人科医を多くの日活ロマンポルノ作品に出演した風祭ゆきが演じる。(KIENOTE)
あらすじ:ある港町で暮らす良夫と自閉症の妹・真理子。良夫は仕事を干され生活が困窮。そんな中、真理子が町の男と寝て金銭を受け取っていることを知る。罪悪感を持ちつつ、良夫は生活のために真理子への売春の斡旋を開始。それまで理解しようのなかった真理子の本当の感情に直面し、戸惑う日々。やがて、妹の心と体に変化が起こりはじめる。(KINENOTE)
監督・脚本:片山慎三
出演:松浦祐也/和田光沙
ネタバレ感想
公開時から鑑賞したかったんだけど、縁がなく行けなかったのでレンタルで観た。内容についてはさほどショッキングとも思えず、なんというか、田舎の閉塞感みたいなのはすごく出ててよかったなと思う。最近の邦画はいろいろな形で田舎町でも都会でもいいんだけど、そこで生きることの閉塞感を感じさせるようなものが多い。あと、そこに貧困生活だったり、子どもが健全に育てないような劣悪な環境での生活の描写を加えているような。そういう作品の中で何度も書いたけど、それって今の日本の現実なんだよなぁ。
で、今作の主人公、兄貴の良夫はなぜかわからんが片足に障害があり、妹の真理子は知能に障害がある。この二人が福祉的な援助をうけずに自力で生活していく姿が描かれる。自力といっても良夫はリストラにあってからは妹の売春を斡旋するポン引きみたいなことをしてるだけで、働いているとは言い難い。まぁでも、ビラつくってポスティングとかしているわけだから、マネージャー的な働きをしているとも言えるんだが。彼にはそれくらいしかできなくて、あとは妹に頼らざるを得なくなっていく。今まで面倒を見ていた相手だったのに。だから彼ができるのはうんこを投げるくらいだ(笑)。
俺はこの二名が必死こいて生きていく中で、なんとなく成長していく話が描かれるんかなと思ってたけど、良夫のほうは特に成長しない。妹に対する接し方というか、向き合い方みたいなのは変わるんだけど。例えば鎖でつなぐようなことはしないとかね。
一方の真理子のほうは、他人と没交渉だった過去と比べるとイキイキと生きているように見える。老人だろうが、ヤクザだろうが、小人症の人だろうが、相手に求められていることに喜びを感じているように見えるし、そもそもセックスが好きな自分に気付いたのかもしらん。
ともかく、対価は得ているとは言え、自分が求められているのだから承認欲求は得られるわけで、優しく扱ってくれる小人症の人のことなんかは、好きになっちゃうのだ。まぁいままで母親と兄貴くらいしかまとも接してきた他人がいないんだろうから、好きになっちゃうのもわからんでもない。
兄貴のほうは真理子の妊娠を知って、彼女のことを思ってでもあるし、自分が彼女の面倒をみずに済むかもしれないという打算もあって、小人症の人に妹との結婚を迫るわけだが、事はそんなにうまくは運ばない。けっきょくは堕胎させることになる。さすがに子どもまで育てられるわけないんだからあの判断は仕方ないといえば仕方ないが、クズであるのも事実で、彼はともかく、物語を通じてさほど成長はしない。
ラスト、真理子のほうは何かが変わっている。何かはわからない。兄貴の良夫はそれに気付いていないようだ。あの兄妹はあのまま元のような関係で生きていけるのか、よく分らない。
この作品で一番いいシーンは、テイクアウトしてきたマックのハンバーガーやポテトを2人が貪るように食すシーンだ。俺も食べたくなった(笑)。
コメント