ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!
―1999年製作 米 103分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:高校の生徒会長選挙をブラックな視点で描いた青春コメディ。教師・ジムは生徒・トレイシーを生徒会長にさせないため、あらゆる手段で妨害を開始する。(KINENOTE)
あらすじ:ネブラスカ州オマハのある高校が舞台。学校一優秀な女学生トレイシー。彼女は優秀な成績を上げて一番になることに執着しており、今度は生徒会長になるために選挙活動に全力投球。しかし彼女は以前、教師と恋仲になり、その教師が退職に追い込まれるという過去があった。彼女が当選したら、誘惑されてしまうかも…という考えに取り付かれた教師・ジムはなんとか彼女の当選を阻止しようとする。 (wikipedia)
監督・脚本:アレクサンダー・ペイン
出演:マシュー・ブロデリック/リース・ウィザースプーン/クリス・クライン/ジェシカ・キャンベル
ネタバレ感想
アレクサンダーペイン監督と言えば、今でこそけっこう有名な監督だけど、これがデビュー作みたい。けっこう面白いコメディ作品。登場人物のほとんどに感情移入ができないものの、そいつらが繰り広げるドタバタ劇が笑えるのだ。
主人公の一人である教師のジムが、序盤でゴミの処理をしないことがけっこうな伏線になってて、そうした細かい部分が結末につながっていく様には感心する。
で、感情移入できない筆頭戦士が、もう一人の主人公であるトレイシーだ。これが本当にムカつく奴で、ジム目線で彼女を紹介するシーンで、画面がストップし、彼女の顔面が崩れたまま解説が進むのは、もちろん意図的にされていて、この作り手の悪意のある演出が笑える。
結末を迎えても彼女には何の共感もわかないし、成長した感じもないし、あのままのスタンスで人生を送り続けるんだろうなと思われる。友人のいない寂しい生活っぽいが、成功への道はたどっているわけで、なかなか世の中ってのは不条理なもんである。
一方のジムは、何がおもしろいのか教師生活にやりがいを感じていたらしく、それなりに周囲の評価も受けていた模様。ところが、結婚生活は倦怠期に入ってて、元友人の奥さんと不倫したいと思っているのだ。この相手が悪いけど非常にブサイクなオバサンで、奥さんのほうがまだマシに見えるんだけども、それも意図的な配役だろうか。
この作品では、倫理と道徳の違いについて、ジムが授業で質問するシーンがある。けっきょくそれは、作品中では答えとしてきちんと示されないのだが、この物語をみるうえでのカギになっているような気はする。
ちなみに、俺は倫理と道徳が具体的にどう違うのかはよく知らん。で、どっちも似たようなもんだという前提で話を進めるけども、ジムはおそらく教師だけあって、倫理と道徳についての回答を持っているのだろう。しかし、自分はプライベートで不倫をするし、トレイシーを会長にさせたくないので、投票数をごまかす。
これは普通に考えれば倫理道徳に反しているわけだが、トレイシーを会長にさせたくない気持ちはわからんもないこともないので、これについては不問にしてやりたくなる鑑賞者もいるだろうが、この作品はけっこう冷徹で、そうはならないのだ。
結果としてジムは教師生活から足を洗わざるを得なくなり、引っ越し先で博物館のガイドみたいな仕事をするようになる。
奥さんとは離婚することになるんだけども、新生活でまたあたらしい彼女ができている。そういう意味では、彼も完全に不幸にはなっていないーーというか、ジムの同僚だった教師はけっこう悲惨ぽかったが、この作品の主要な登場人物は、最終的にそれぞれがそれぞれの人生に楽しみを見出せるようになっているのである。
つまり、結末だけ言えば、みんなハッピーエンドとも言える。だがしかし、その過程では、人々の悪意や善意がいろいろ渦巻いていて、偶然にもイイ目に遭う奴もいれば、不幸な目に遭う奴もいて、それは因果応報というよりは、単なる運に左右されているように見える。
ということで、けっきょく何が言いたい映画なのかとかはよくわからんのだけど、おもしろい作品なのでおススメ。邦題は何とかしてほしかったが(笑)。
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