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映画 ポゼッサー ネタバレ感想 暴力美 クローネンバーグの息子

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他人の人格を乗っ取って操り、標的を暗殺するという特殊な仕事をしているタシャは、ある依頼で乗っ取った人格から脱出できなくなり、ジタバタする話。ディストピア感のある物語舞台で主人公の深層心理が暴かれていく、そこそこ楽しめる作品です。ネタバレあり。

―2022年公開 加=英 103分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:鬼才デヴィッド・クローネンバーグの遺伝子を受け継いだ息子ブランドン・クローネンバーグが「アンチヴァイラル」以来8年ぶりに発表した監督第二作。遠隔で人をコントロールし暗殺を実行する女と、人格を乗っ取られる男の攻防を鮮烈なビジュアルで映し出す。出演は「ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷」のアンドレア・ライズボロー、「ピアッシング」のクリストファー・アボット、「ヘイトフル・エイト」のジェニファー・ジェイソン・リー。(KINENOTE)

あらすじ:殺人を請け負う企業に勤務するベテラン暗殺者のタシャ(アンドレア・ライズボロー)。上司の指令のもと、特殊なデバイスを使って標的に近しい人物の意識に入り込んだタシャは、その人格を乗っ取り、ターゲットを仕留めることに成功。その後、ホストを自殺に追い込んで“離脱”する。この完全無欠の遠隔殺人システムは、すべてが速やかに完遂されていた。しかし、あるミッションを機にタシャの中の何かが狂い始める……。(KINENOTE)

監督・脚本:ブランドン・クローネンバーグ
出演:アンドレア・ライズボロー/クリストファー・アボット/ジェニファー・ジェイソン・リー/ショーン・ビーン/ガブリエル・グラハム/ロッシフ・サザーランド

ネタバレ感想

この監督、クローネンバーグの息子なんだってね。今作を見てみると、確かにそんな感があって親父のグロ趣味な部分を踏襲してるとこがけっこう散見された。

で、その内容なわけだが、他人の意識を乗っ取って操り、その人間を使ってターゲットの暗殺を行う暗殺者の話。なんとも回りくどい暗殺方法ではあるが、これが企業のサービスとして成り立っちゃってるところが何ともディストピア。

この殺人請負業者は殺すべき対象の生活圏に近い人間を操る対象に選んでいるようで、しかもその選ばれる人間はどちらかというと、上級市民というよりは下層にいる人だったり、社会的地位の低い人のようだ。

で、暗殺を依頼してくるほうは、それなりに金を持ってる人たちで、その金持ちたちが、別の金持ちを抹殺してくれるように頼んでいるって感じ。

このように書いているだけで、非常に殺伐とした近未来社会だなってのがわかっちゃうねぇ。自分の手を汚さずに邪魔な存在を消しちゃうのが金の力で成立しちゃうってのは、別にこの作品に始まった話じゃないにしても、リアルな社会でも現実のものになりそうだし、もうなっているのかも。

それこそ、商売繁盛で競合他社が続出するような事態になっちゃうと、サービス価格が低下して庶民にも気軽に利用できるものになり、SNSで簡単に他人を誹謗中傷しちゃうような輩が蔓延る現代においては、安易に殺しの仕事を注文する人もたくさんいるだろうから、本当に恐ろしい世の中でありんすな。

とかそんなんはどうでもよくて、この話の主人公は依頼者の希望を完遂する暗殺者。ところが、ある依頼で人格を乗っ取って操ってた男が、なぜか操り切れなくなっちゃって、男の人格とタシャの人格が入れ替わり立ち代わりすることで、話がこんがらがっていく。

そんで、そのややこしい出来事がラストでどう結末を迎えるかってのが、この作品の肝でありますな。

白眉だなって感じられたのは、タシャが操っていたはずのコリンの意識に取り込まれてっちゃうシーン。冒頭の画像はそのシーンの一部であるわけだが、これを観ちゃうと、クローネンバーグ監督の息子だってのも納得しちゃいますな。

でまぁ、いろいろあって、タシャの意識を救うために彼女の上司が別の人間を操ってる姿で現れたりするんだが、コリンは最終的に、自分を脅かしたタシャを屈服させるため(?)に、彼女の旦那と息子を狙うのである。

で、どうなっちゃうのかと固唾をのんで見守ってたら、なんと、タシャは愛する旦那と息子を自らの手で殺しちまうのである。コワッ。

どうしてそんなことするのかというと、実はこの女性、殺人鬼的気質のある人で、家族を持ったことによる罪悪感でその気質を抑えるようにしていたんだが、今回の一連の事件のドサクサで、その抑圧してた思いを吹っ切って、殺人鬼方面の自分に舵を切っちゃうのである。

旦那と、息子という最も愛する対象を亡きものにした彼女には、もはや他者を殺すことに罪悪感はなくなり、完璧な暗殺者への道を歩みだすことになるだろうことを思わせて、物語は終わる。

何とも奇抜な設定で人間の暴力性を暴露するラスト。考えてみたら、この作品は上級国民と貧乏人とかコリンとその彼女の関係性とか、その彼女の親父、ジョンとコリンとの関係性とか、血を流さない暴力がそこかしこに観られるわけで、それはタシャの所属する暗殺請負企業もそうだし、ジョンの経営する企業にも、単純作業を強いる労働者搾取の暴力がある。

つまり、暴力暴力暴力な暴力映画だったんであるなぁ。さすが、クローネンバーグ監督の息子。そのさまざまな暴力を美的な描写に魅せちゃうようなところも本当に似てるね。

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