ナイトライド 時間は嗤う
麻薬稼業で飯食ってた男が、恋人と一緒に足を洗って堅気になることを決意。その資金を手に入れるため、最後の大口取引に臨むんだが、そんなにことがうまく運ぶわけがなく、ジタバタする話。基本、主人公が車に乗って電話をかけているだけなのに、緊張感が持続できているところがすごい。ネタバレあり。
―2021年製作 英=仏=米 97分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:94分間ワンショットで撮影したクライムスリラー。ドラッグ・ディーラーのバッジは麻薬密売から足を洗うために最後の大口取引を画策し、闇金のジョーから10万ポンドを借りる。しかし、ブツを積んだバンが何者かに乗り去られ、買い手にも逃げられてしまう。監督は北アイルランド出身の俊英スティーヴン・フィングルトン。出演は、「スパルタン 皆殺しの戦場」のモー・ダンフォード、「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」のジョアナ・リベイロ。2021年度トロント国際映画祭インダストリー・セレクト出品、2021年度インド国際映画祭ワールド・パノラマ・セクション出品、2022年度ダブリン国際映画祭ガラ&スペシャル・プレゼンテーション出品、2022年度IFTA映画&ドラマ賞最優秀主演男優賞受賞。(KINENOTE)
あらすじ:バッジ(モー・ダンフォード)は長年、麻薬の密売に手を染めてきたドラッグ・ディーラーだったが、恋人ソフィア(ジョアナ・リベイロ)と共に裏社会から足を洗おうと決意する。最後にウクライナ人プッシャーから50キロのブツを仕入れ、倍の値段で売り抜けるという大口取引を画策したバッジは、裏社会でも一目置かれる闇金のジョー(スティーヴン・レイ)から10万ポンドを借りる羽目となるが、売り手も確保し、ことは順調に進んでいるように思えた。しかし、弟分の不手際によってブツを積んだバンが何者かに乗り去られ、買い手にも逃げられてしまう。返済期限が迫るなか、事態を収拾しなければバッジの人生計画は狂い、ジョーは見せしめに彼を消すことになるだろう。彼が買い手を失ったことを知ったジョーは、窮地に立たされたバッジのもとに、すでに手下を差し向けていた……。(KINENOTE)
監督:スティーヴン・フィングルトン
出演:モー・ダンフォード/ジョアナ・リベイロ/ジェラルド・ジョーダン/キアラン・フリン/スティーヴン・レイ
ネタバレ感想
レンタルで鑑賞。冒頭に書いたように、主人公のバッジは物語のほぼ8割近くは車に乗って電話をかけてるだけなのに、その展開がスリリングでけっこう楽しめる。なんで楽しめるのかというと、当初計画してた薬の取引がそんなに綿密に建てられたものではなく、ただ尾行されてるというだけでバッジ自身が現場に向かえなくなっちゃって、イレギュラーがたくさん起こっちゃうから。
で、バッジは方々に電話をかけるなどして何とか取引を成立させようと躍起になる。堅気の仕事を一緒にしようとしてる友人や、これまでに麻薬取引に使ってた部下や、恋人や薬の売人などを駆使してその場ごとに起きる難題をなんとかクリアしようするなど、そのジタバタ加減が車中で淡々と進むだけなのに、緊張感があるのだ。
そのバッジの身に起こった一連の出来事を、おそらくワンカットと思われる長回しで描写する手法もなかなかに物語を面白くさせている要因だと思われる。
最終的にバッジは足を洗って堅気の仕事に就くための資金を手に入れる。その結果だけ見れば、ハッピーエンドであり、バッジはイレギュラーにも冷静に対応できるスゴイ奴だなと思えなくもないんだが、だがしかし、そもそもの計画がザルすぎてうまいこと進められていないわけだから、彼の成功は運によるものだと言えなくもない。
だって、尾行されることに気付けるってことは、そういうことも想定内なんだろうから、事前に尾行された場合の策も考えてそうなんもだが、その対応に使った部下たちがヘマしたおかげで話がややこしくなっているんであり、恋人は度胸もあって有能だし、彼女はとても信頼できる人間であることをラストのほうでこれでもかと見せつけてくるんだから、最初から彼女に頼ってたほうがうまいこと自体を処理できたんではないかと思わなくもない。
もちろん、彼女を危険に巻き込みたくなかったからこその部下の利用だったわけだが、部下のヘマで消えたバンが偶然発見できたのは、単なる運であり、それを見つけてくれたのが自分の娘だか妹だったってのが出来すぎーーと腐したくなる部分もあるものの、なかなか楽しめる作品であった。
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