ダーク・アンド・ウィケッド

父の病状が悪くなったので、それぞれ実家に帰ってきた姉弟。しかし、母親はそんな二人を歓迎してくれない。なぜなのか。しかも、母の言動はどうもおかしい。そして二人の周囲で奇妙な出来事が起こり始めーーなんとも不気味な展開なのに、説明のあまりない雰囲気ホラー。ネタバレあり。

―2020年製作　米　95分―

解説とあらすじ・スタッフとキャスト
ネタバレ感想
1. 関連

解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:「ストレンジャーズ／戦慄の訪問者」のブライアン・ベルティノが放つ戦慄のホラー・ムービー。父の最期を看取るため帰郷した姉弟は突然母の死に見舞われる。母の日記に記された恐ろしい体験、家畜たちの大量の死骸。姉弟は次々と血も凍るような恐怖に見舞われてゆく。主演は「アイリッシュマン」「最後の追跡」の女優マリン・アイルランドと、「ディック・ロングはなぜ死んだのか？」のマイケル・アボット・Jr。シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀女優賞、撮影賞の２部門を受賞。(KINENOTE)

あらすじ:両親から離れてそれぞれ暮らすルイーズとマイケルの姉弟は、父の病状が悪化したとの報せを聞き、久方ぶりに生家であるテキサスの人里離れた農場を訪れる。父はそこで母に見守られ、ひっそりと最期を迎えようとしていた。ところが母は「来るなと言ったのに――」と彼らを突き放す。やがて彼らは両親の様子がおかしいことに気づく。そしてその夜、母が首を吊って亡くなった。それは彼らを待ち受ける想像を絶する恐怖の幕開けにすぎなかった。(KINENOTE)

監督・脚本:ブライアン・ベルティノ
出演:マリン・アイルランド/マイケル・アボット・Jr

ネタバレ感想

Amazonプライムで見つけて鑑賞。父親の病状が悪くなったため実家に帰省した姉と弟。久しぶりの帰省なのに、母親はまったく歓迎してくれたにどころか「なんで来たんだバカヤロー」てな感じでけんもほろろ。

姉のルイーズは母親とほとんどコミュニケーションを取らずに煙草を吸ってうなだれてばかり。弟のマイケルは「むかし、母親がすべてだった」らしいが、今は自分の妻子のほうが大事。要するに、二人は両親を長い間ほったらかしにしてたらしい。

母は父親の介護に明け暮れる日々で、だいぶお疲れの模様。精神すら病んでいるのではないか。一方の父親は要介護で寝たきりの老人。たまに看護師だかヘルパーみたいな人が面倒を見てくれてる。要するに、田舎に閉じ込められて息詰まるような生活を両親はしているわけだ。

んで、そういう実家の惨状を知らんぷりしてたのか、繰り返しになるけど、姉弟はまったく帰省をしていなかったらしい。母親は孤独の中で狂気に走っていったようで、二人が訪ねて行った後、首吊って死んじまう。

衝撃を受ける二人。この辺までは、介護で疲れた人間のリアルを描いているように見えるが、それ以降、二人はおかしな幻覚を見るようになる。死んだはずの母が現れたり、その他いろいろ。なんだか二人もノイローゼ気味。これは長く両親をほったらかしたことによる、良心の呵責による幻覚なのか。

そのように見せておいて、中盤以降は悪魔みたいな存在が登場する。悪魔は人の寂しさにつけこみ、幻覚を見せ、心身共に疲れ果てた人間を操っては、自殺に追い込んでいくようだ。

であるから母親は、悪魔に殺されたのである。そして、そこに至ってしまうまでの罪は、姉と弟にあるのだ。母親の孤独を知らずにいたからだ。

母親が二人の帰省を拒んだのは、すでに自分が悪魔にとりつかれていることを知っていたにもかかわらず、無神論者であるがゆえに真実を伝えられず、しかし二人の子どもたちを守ろうという気持ちはあったのだろう。だが、それすらもコミュニケーション不全の双方においては、その危機に対する伝達方法がなく、母親は「帰ってこなくていい」しか言葉を持たないのである。

そして一家は全員、悪魔によって身を滅ぼしていく。要するに、両親のことはなるべく気にかけるべきであり、寂しい思いをさせないようにすべきであり、コミュニケーションを豊かにしておかないと、大変なことになるぞってな教訓映画であり、比喩として悪魔を登場させてホラー作品として描いたってことなんだろうと思われる。あくまでも私見だが。

なかなか切実な話ではあったが、特段面白い作品ではなかったなぁ（笑）。