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映画 対峙 ネタバレ感想 緊張感のある実話さながらの会話劇

対峙
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対峙

高校で起きた銃乱射事件の被害者と加害者の両親が対面で事件の起きた背景などを告白し合うヒューマンドラマ。主要登場人物4人の演技がスゴい、なかなか深刻なお話。ネタバレあり。

―2023年公開 米 111分―

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ネタバレ感想

解説:高校で起きた生徒による銃乱射事件の被害者家族と加害者家族の対話を描くドラマ。事件から6年後、息子の死をいまだに受け入れられないジェイとゲイルは、セラピストの勧めで、事件後にそのまま校内で自ら命を絶った加害者の両親と会って話をする機会を得る。「キャビン」の俳優フラン・クランツによる初脚本・初監督作品。出演は、ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のリード・バーニー、「ヘレディタリー/継承」のアン・ダウド、「ハリー・ポッター」シリーズのジェイソン・アイザックス、「グーニーズ」のマーサ・プリンプトン。英国アカデミー賞をはじめ各国の映画賞81部門でノミネート、釜山国際映画祭フラッシュフォワード部門観客賞をはじめ43映画賞を受賞。(KINENOTE)

あらすじ:アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が発生する。多くの生徒が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。6年後、ジェイ(ジェイソン・アイザックス)とゲイル(マーサ・プリンプトン)の夫妻はいまだに息子の死を受け入れられず、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆はなかったのかという思いを募らせていた。夫妻はセラピストの勧めで、加害者の両親であるリチャード(リード・バーニー)とリンダ(アン・ダウド)に会って話をする機会を得る。教会の奥の小さな個室で、立会人もなく顔を合わせた4人はぎこちなく挨拶を交わす。そして、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉から、誰も結末が予測できない対話が始まる……。(KINENOTE)

監督・脚本フラン・クランツ
出演:リード・バーニー/アン・ダウド/ジェイソン・アイザックス/マーサ・プリンプトン

ネタバレ感想

レンタル配信で鑑賞。アメリカではこうした事件の被害者と加害者が対面で話すというケースが本当にあるんだろうか。いずれにせよなかなかこれは、どちらにとっても難しいシチュエーションでありますな。

リチャードとリンダの息子、ヘイデンはある日、学校で銃の乱射騒ぎを起こし、ジェイとゲイル夫妻の息子であるエヴァン他、数名の生徒の命を奪った後に自殺するという騒ぎを起こした。それから6年後、両夫妻はある教会で対面になって向き合い、話し合うことになる。

他の被害者家族はこうした場を設けずにいて、なぜジェイとゲイルはそれをすることにしたのか、その辺は謎。しかしまぁ、被害者家族と加害者家族が向き合ったらふつう、被害者側が一方的に攻め立てて、加害者の側は平身低頭するかしないと想像しちゃうんだけども、実は加害者側は加害者側で、マスコミの過剰報道から始まり、一般大衆により中傷を受け続けているわけで、なかなかに厳しい6年を過ごしてきたことがわかる。

ところどころで双方ともに感情的になるシーンがあって、まぁそれはそうなるだろうなというのはわかる。むしろ被害者側はよく感情を抑えているなぁと感心するし、とはいえ、加害者側にも言い分があるのはよく伝わってくるので第三者たる鑑賞者としてはどちらがどうとか、断罪したり評価をしたりする気にはなれない会話劇が繰り広げられる。

これは脚本や演出、そして何より、演じている4人の役者の緊張感のある演技がすごいから感じさせられることなわけで、そこがこの作品のすごいところだ。

ジェイとゲイルはエヴァンがなぜ殺されたのか、背景にはどんな理由があったのか、それを知りたがる。なぜ、息子は死ななければならなかったのかーー。そこに何がしかの意味というか、納得したものが欲しかったからだろう。

ではそれは、リチャードとリンダの育児のせいなのか、銃が簡単に手に入ってしまう世の中だからなのか、銃で人を殺して遊ぶゲームのせいなのか、学校の教育や運営体制のせいなのか、エヴァンがもともとサイコパスだったからなのか。さまざまな論点が出はするものの、もちろん何かに限定はできないのである。

最終的に、ゲイルがリチャードとリンダを「赦す」と口に出したことで、双方の緊張感のあるコミュニケーションは終わりを迎える。なぜそこまでの過程を経てゲイルが二人に対して「赦す」という言葉を言えるようになったのか、その辺の心理を理解するのは俺には難しい。亡き息子との思い出を口にして喋ることができたからなのか、それともほかに何かがあったのか。

いずれにしても、その後、双方はいずれ再会することを口にしつつ、別れを告げることになる。本当に会うことがあるのかどうか、多分ないんじゃないかと俺は思ったんだが、その辺もどうなるのかは当然わからない。

しかし、話はそれだけでは終わらない。教会に残っていたジェイとゲイルのもとに、リンダだけが戻ってくる。そして、リチャードがいなかった夜に起きた、ヘイデンとの会話について告白するのだ。そのセリフには、ヘイデンがいずれ人殺しをしてしまうのではないかと思わせるだけの暴力性があった。だが、リンダはそのときに息子と向き合えずに、「自分を殺しなさい」と言えずに逃げてしまったのだと言う。

その後、二人の母親は抱き合って別れる。何となく感じたのは、この二人の母親は心の距離を近づけたのではないかということだ。逆に、父親の二人はどうだろうか。それが直接に伝わってくるような描写はない。

この作品との向き合い方として第三者が考えるべきは、先述したようにどちらが悪いとかどうとかではなく、こうした事件が起きてしまう社会のありようについてであり、どうすればそれが起きる可能性の少ない社会をつくれるかということであろう。

なぜなら、いずれ人の親になるかもしれない人や、すでになっている人たちにとって、この作品と似たような経験をしてしまうことになる可能性はゼロではないからだ。人間社会とはそのようにできているし、世の中とは不合理かつ不条理なものなのだから。

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