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映画 i新聞記者ドキュメント ネタバレ感想

映画 i 新聞記者 ドキュメント
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i新聞記者ドキュメント

―2019年公開 日 113分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:話題作「新聞記者」のプロデューサー、河村光庸が「A」の森達也を監督に迎え、東京新聞社会部記者・望月衣塑子の姿を通して日本社会の問題点に迫るドキュメンタリー。報道の問題点、ジャーナリズムの地盤沈下、日本社会が内包する同調圧力や忖度の正体とは?(KINENOTE)

あらすじ:官房長官の記者会見で質問を重ねる東京新聞社会部の記者・望月衣塑子。「同じ質問を何度もするな」と官邸スタッフから咎められた際、彼女は「納得できる答えをいただいていないので繰り返しています」と即答した。望月記者はなぜこれほど目立つのか。周囲と何が違うのか。なぜその言葉が残るのか。なぜ彼女は特異点になってしまうのか。その姿を追う中から、あるべきメディアとジャーナリズムの姿が見えてくる。(KINENOTE)

監督:森達也
出演:望月衣塑子

ネタバレ感想

2019年に公開した『新聞記者』がけっこう面白かったので、こちらの森達也監督のドキュメンタリーもかなり楽しみにしていた。いろいろあって劇場では観られず、ネットフリックスで見つけて鑑賞。今の世の中に対してすごく暗い気持ちになっちゃうけど、それでも、鑑賞して良かったと思ったのである。

森達也監督作と言えば、俺は『FAKE』を劇場で観たことがあって、もともと佐村河内守氏の問題には関心があったので、鑑賞してみたらすげぇ面白かった。なんとなく作品全体にユーモアもありつつ、佐村河内氏の人間性に迫ってる感じで、最終的に彼の所業はなんだったのかよくわからんのだけども、それでもラストの曲は魅力に感じたし、あれがヤラセだったかどうかなんて、どうでもよいと思えるくらいに、楽しめた。

そんな感じで今作も期待を込めての鑑賞であったが、やっぱり面白い。今回は新聞記者の望月衣塑子氏の仕事ぶりを追うことで、現状のジャーナリズムのあり方やメディアの報道姿勢に対して一石を投じつつ、現政権に対しての怒りというか腐敗ぶりを目の当たりにできるような内容になっている。

望月氏がなぜ題材になっているかというと、彼女の新聞記者としての姿勢が、まっとうであるからだ。彼女はまじめに記者としての本分を果たそうと奮闘している。それなのに、官房長官の会見の席であんなに邪険に扱われてること自体がおかしいのだ。彼女が奮闘すればするほど、他のメディアやジャーナリストたちの権力に対する忖度具合や癒着ぶりや、自分の仕事に対する誇りも何もなく、日々に埋没していることがわかるのであり、その異常性を明らかにしているのである。

森監督自身が、外国人記者と語る望月氏とのシーンで、自分の意見として、「望月氏を撮り続けること自体が本来はおかしいこと」というような趣旨のことを言う。なぜかというに、外国人記者たちが望月氏を評価するように、海外では彼女の仕事に対する姿勢こそが当たり前であるからだ。しかし、その当たり前が当たり前でなくなっているからこそ、森監督は彼女を題材にして作品を撮ったのである。

菅官房長官の望月氏の質問に対してのあの表情、マジで精気も覇気もなく、子どもが逆ギレしてるような感じの質問への答え方。どうしてこんな頼りになりそうもない奴が政治家やってんだろうかと思っちゃうくらいのクソさ加減。マジで。もう一人、一度だけ登場する麻生大臣は、高圧的でフテブテしい受け答えで、これがまた腹立つ。マジで。

しかも、両人ともに、質問に答える気なんてさらさらないところがさらにムカつくのである。現政権の奴らは国会の答弁でもだいたいがふざけた意味のない受け答えしかしないし、それが平常化しちまってて、それはまぁ、トップがあんな感じだから…。

とかそんな政権批判しても仕方ないのでもうやめておくけど、何でこの国ってこんなディストピアになっちまったんだろうなと思わなくもない。俺が子どもの頃はユートピアだったのだとかアホなことは思わないけども、さすがにここ最近は…とかもうやめる(笑)。

まぁでも、メディアが権力とグルになってるように思われるこの世の中、森監督は作品のラストのほうで独白をする。「集団の中ではなく、一人称単数、つまり個人として考え、行動することが大事なのだ」というようなことを。

そして最後に望月氏が立っているシーンが流れ、タイトルの「i」が表示される。ここでようやく俺はタイトルの意味を知った。そして、この作品に出てくる望月氏の立ち居振る舞いのすべてがリアルであるかどうか、森監督の仕掛けた演出もあるのではないか――ということはおいといて、監督自身の伝えようとしたことには共感を覚えたのである。

人間は個人です。個人を大事にするから、集団というものも大事にできるんだと思う。そもそも、人間はすべて孤独であり、共通の隣人を持たない孤絶した存在なわけだし。しかし意外にもこの感覚、共感しない人もこの世にたくさんいることが不思議。そういう意味でもみんな、個別の存在ってことだな。

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