フロッグ
少年の失踪事件を捜査する刑事の自宅で、なぜか不可解な出来事がたくさん起こる。しかもその町では、15年前にも少年誘拐殺害事件が起きていた。その事件と今回の事件の関連性は? そして刑事一家で起こる謎の出来事の正体とは。前後半を異なるグループの視点で描いた、楽しめる伏線回収スリラー。ネタバレあり。
―2021年公開 米 109分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ヘレン・ハント主演のサスペンス。ある街で、少年の失踪事件が2件連続して発生。現場から、以前起きた連続少年誘拐殺人事件と同様の遺留品が見つかるが、その犯人は既に逮捕済み。捜査が難航する中、ハーパー刑事の自宅で、次々と不可解な現象が発生し……。共演は『Major Crimes ~重大犯罪課』のジョン・テニー、「サマー・オブ・84」のジュダ・ルイス。未体験ゾーンの映画たち2021にて上映(KINENOTE)
あらすじ:その街である日、10歳と9歳の少年が立て続けに失踪する。現場には、かつて世間を騒がせた連続少年誘拐殺人事件と同じ緑色のナイフが残されていた。しかし、既に当時の犯人は逮捕されており、捜査は難航。一方、事件を担当する刑事ハーパーの自宅では、次々と不可解な出来事が起こり始める。誰もいないのに閉まる扉。誰も触っていないはずのテレビは、突然事件のニュースを流し始める。この街に、この家に、一体何が潜んでいるのか。そして、一家の一人息子コナーの元に届く不可解なメッセージ。その意味が明らかになる時、事態は予想もしなかった結末へと動き始める……。(KINENOTE)
監督:アダム・ランドール
出演:ヘレン・ハント/ジョン・テニー/ジュダ・ルイス/オーウェン・ティーグ/リーベ・バラール
ネタバレ感想
いくつかのミスリード
ホラーかと思わせる
レンタルで出回り始めて、たぶん面白くないB級感あふれる猟奇殺人的スリラーだと思って鑑賞したら、これがけっこうおもしろい。
序盤、少年が乗っていた自転車から落ちちゃう描写や、グレッグ刑事の家で起こる不可解な出来事を、見えない何者かが起こしている謎の現象のように見せる描写が、この作品をホラー的展開の作品の線もあるかのようにミスリードさせる。
ところが、そのミスリードはグレッグ一家の視点から、フロッキングという、豪邸に不法侵入して家主たちに悟られないように数日を過ごすゲームに興じる、ミンディとアレックに視点が変えて描かれることで解消され、実は家の中に侵入者がいたことが判明するという1回目の大きなネタバレが繰り広げられる。
不倫相手殺し
ここまででも、なかなか楽しめるんだが、さらにもう2回、この話には大きなネタバレがある。その一つが、グレッグの奥さんであるジャッキーの不倫相手のトッドを殺したのは誰なのかということ。これもミスリードではグレッグとジャッキーの息子、コナーという線。これは鑑賞者というよりはむしろ、作品中のジャッキーがそのように思ってて、グレッグは本当はそうでないことを知ってるというなかなか複雑な展開。一方の鑑賞者は恐らくアレックが殺したんだろうと予想するんだけども、実はグレッグだったという。
グレッグとジャッキーはトッドを秘密裏に埋葬しちゃうので、俺はこの死体遺棄の行動をこの先どうやって乗り切るんだろうか、言い逃れできるんだろうかといろいろ考えていた。つまり、完全にグレッグに感情移入して鑑賞していたのである。であるから、ミンディとアレックの視点から語られるグレッグによるトッド殺しには驚かされた。
少年誘拐犯は誰か
さらに、それでも俺はこの物語の最大の謎である、少年を誘拐した犯人は誰なのか問題について、ほかに犯人がいるのかと思っていたら、あろうことかそれはグレッグであることが判明したシーンにまたもや驚かされた(笑)。て考えると、完全に騙されながら伏線回収されていく物語展開をかなり楽しんでいたので、作り手たちの策略にまんまとハマっていたのであり、とてもいい鑑賞者だったということだろう(笑)。
最終的に、グレッグは15年前の事件の真犯人だったことがわかり、それは少年を誘拐しては弄り倒して殺しちゃうという恐ろしいことをしていたということだ。これを踏まえて仮に2回目を鑑賞したら、彼が息子のコナーと接している場面は、単に親としての愛情での接し方を超えた何かすら想像させられてゾッとせずにはいられないだろう。
疑問はなくもないが、楽しめた
どうしてアレックは15年前にグレッグの姿を認めていたのに、彼が犯人であることを世間に公表しなかったのか、それともできなかったのか。あとは、偶然フロッキングをミンディと共にすることにならなかったら、今回の復讐みたいのをする気はなかったのだろうか。などと疑問に思う点はある。
ついでに言うなら、そもそもグレッグは何で少年を誘拐しちゃうような人間だったのかとか、ジャックは何で不倫してたのかとか、ミンディとアレックの関係性がよくわからないところとか、その辺の説明がちょっとはあってもよかったと思わなくもない。
だが、そこまで細かく描写するとこの作品は2時間超えるだろうし、視点を変えただけで同じシーンを繰り返すことも多いこの作品においては、意図的にそうした説明を避けたのだと考えることもできる。
いずれにしても、期待値が低かったことに反して、なかなか楽しめる作品でありました。
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