ゴー・ファースト 潜入捜査官
潜入捜査物だからか、そこそこ緊迫感はあるので最後まで飽きずに観られた。ただし、ド派手なアクションは期待しないほうがいいです。いたって地味な描写が続くので。ネタバレあり。
―2009年公開 仏 89分―
解説・スタッフとキャスト
解説:麻薬組織と潜入捜査を行う捜査官の攻防を描くクライムアクション。ポルシェ・カイエン、BMW、プジョー、アウディなどの車が繰り広げるハイウェイでのカーチェイスが見どころ。主演は「デイズ・オブ・グローリー」でカンヌ映画祭最優秀男優賞受賞のロシュディ・ゼム。製作は「トランスポーター」シリーズのヨーロッパ・コープ。(KINENOTE)
監督:オリヴィエ・ヴァン・ホーフスタッド
出演:ロシュディ・ゼム/オリヴィエ・グルメ/ジャン=ミシェル・フェト/ジル・ミラン/カタリーナ・ドゥニ
あらすじ
優秀な刑事のマレクは世話になっていた先輩刑事と仲間をチンピラ組織のリーダーのリュシアンとその部下、ンジャイに射殺されてしまう。
なんとか復讐してやりたいと思っていたところ、モロッコで生成された麻薬をスペインのマラガ経由でパリに運ぶ密輸ルートを持つ組織を摘発するため、麻薬の運び屋として組織に潜入して捜査を支援する役割を担うことに。
で、その麻薬をドライバーとして運ぶことになったマレクだが、組織の運び屋チームには憎きリュシアンとンジャイの姿が――。
初見の印象
というのが大雑把ならあらすじ。ちなみに、90分くらいの映画で上記のあらすじの最後の部分にいたるまでに、恐らく70分以上かかっている(笑)。カーチェイスを売りにした映画らしいんだけども、さほど目を見張るシーンもないし、派手な銃撃戦があるわけでもない、至って地味な作品です。ただ、潜入捜査物であるせいか、物語全体にある程度の緊迫感は漂っているので最後まで飽きずに観れたのは確かだ。と言っても、全編通しての印象はいたって普通。
見どころ
それでもよかったところを挙げておくと、主人公のマレクを務めた役者さんの、味のある顔つきと、敵側にいるグラディス(だったと思う)を演じるカタリーナ・ドゥニって女優さんがキレイなところかな。
あとは、訓練を終えるまでの前半部分。これからどんな過酷な潜入捜査が始まるのかと期待はさせてくれます。
ということで、ここから先はネタバレありつつ、本作を腐していく(笑)。
突っ込みどころ
あの訓練意味なくないか?
まず、過酷な潜入捜査を予感していたのに、実際はさして過酷には見えない。しかも、訓練したことが後半で全く活かされないのである。
かなりの時間を割いて訓練シーンが描かれていたのに、そこで培ったスキルが役立っているように見えないので、なんのためにあんなに訓練シーンに時間をかけたのかよくわからんのである。
例えば、マレクは訓練前は金槌で泳げなかったのに(笑)、訓練で何とか泳げるように。そういう描写をするなら、泳げるようになったおかげで窮地を脱する場面とか入れるべきだと思うんだけど、ない。
潜入後はよく意味がわからん
満を持しての潜入後は、マレクの凄腕感がちっとも伝わってこないし、何をやってんだかよくわからん。
その最たるグダグダエピソードは、最初の運びのシーンだろう。マレクが運転する車の、先導役兼斥候を務める組織の女性、グラディスがガソリンスタンドで襲われる。そこで、「ウィリアンがどうたらこうたら」とか人の名前が出てくるんだけど、ウィリアン(名前違うかも)って誰だっけ?
んで、そもそもあの運びはパリに行くのではなかったの? 違うの? グラディスを襲った相手はどうも知り合いらしく、裏切ったの何だのとグラディスはギャアギャアわめく。そして、マレクと助手席で彼に指示を出していた男が到着して、グラディスを助けるんだが、何が起こっているのか、状況がさっぱり飲み込めなかった。
あの男は結局何なんだよ
そのシーンでマレクは、倒した男を殺さずにアジトへ連れて帰り、情報を吐かせるべきだと主張する。あれって何でなんだ? そして、マレクに指示を出していた助手席の男は、なぜかその主張に従うのである。何で?
で、アジトに帰ってきたら、雇い主のボスに、連れ帰った男を殺せと命じられ、マレクは何とか殺さずに済まそうとするんだけど、あれって結局殺したの? 殺してないの? マレクはトランクに押し込められてたその男の顔に、消音用なのかクッションをかぶせて銃を撃つ。あれで一応殺したと認められたらしく事なきを得たわけだが、けっきょくあの男は死んだのだろうか。マレクが男にささやいていたように、殺さずに逃がしてやれたのだろうか? 手を洗ってたから殺したのか?
ダーティ・ハリー気取り(笑)
と今書いていて思ったのだが、マレクはあの男が、もう一人の潜入だと思ってかばっていたのかもしれぬ。マレクは潜入前に警察側のボスから、敵組織に協力者であるアメリカ人の潜入捜査官がいると教えられていた。そして、そいつとお互いを確かめ合うための合い言葉が、「ダーティー・ハリー気取りか?」というものだ。
それを思いだしてみると、マレクがどうしてあいつを殺したくなかったのかが分かるような気がする。
つまり、あの男を潜入だと思っていたと。でも、ごまかしきれずに殺したのか、描写はないものの、逃がしてやっていたということだ。描写がないから、やはりどっちだかわからないんだけども。
というか、潜入だと思ったんなら、合い言葉試すシーン入れろよと思いますね。ないんです。だから、いつまで経っても誰がもう一人の潜入なんかよくわからない。
んで、最後の10分くらいでようやく、それが誰だかわかる。なんと、グラディスなのだ。
オイオイオイオイ
マレクは「だったら言ってくれよ」とグラディスに文句を言うんだが、おまんもだろ、それ(笑)。グラディスはグラディスで、「それはダメよ。ルールだから♡」とか抜かす。わけがわからんよ、君たち。
ラストはラストで2人が恋人になりそうな雰囲気漂わせてるし。何なんだお前らは、ちくしょう。
てなことで、もっとハードボイルドで男くさい話を勝手に期待していただけに、後半の展開にはガッカリであった。ただ、冒頭に述べたように飽きずに観られたのは確かである。
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