ドッグマン
犬のトリミングを仕事にしてる冴えない男が、大人版ジャイアンみたいな友人にたぶらかされて道を踏み外して行く話。自分の意志を働かせられない男の悲哀が垣間見える内容だ。ネタバレあり。
―2019年公開 伊=仏 103分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:「ゴモラ」のマッテオ・ガローネによるサスペンス。イタリアのさびれた海辺の町で、“ドッグマン”という犬のトリミングサロンを経営するマルチェロは、娘と犬を愛する温厚な男だった。だがある日、暴力的な友人シモーネの儲け話を断れず、片棒を担ぐ羽目に。第71回カンヌ国際映画祭主演男優賞、パルム・ドッグ賞受賞。ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞作品賞、監督賞を含む9部門受賞。(KINENOTE)
あらすじ:イタリアのさびれた海辺の町で、質素ながらも“ドッグマン”という犬のトリミングサロンを経営するマルチェロ(マルチェロ・フォンテ)は、娘と犬をこよなく愛する温厚で小心者で、気のおけない仲間との食事やサッカーを楽しむ日々を送っている。だが一方で、暴力的な友人シモーネ(エドアルド・ペッシェ)との従属的な関係から抜け出せず、利用されていた。ある日、シモーネから持ち掛けられた儲け話を断り切れず、片棒を担いだために、仲間たちの信用とサロンの顧客を失ってしまう。娘とも自由に会えなくなったマルチェロは、元の平穏だった日常を取り戻すためにある行動に出るが……。(KINENOTE)
監督:マッテオ・ガローネ
出演:マルチェロ・フォンテ/エドアルド・ペッシェ/アリダ・バルダリ・カラブリア
ネタバレ感想
主人公のマルチェロがシモーネに流されっぱなしでイライラしてくる。なんでこんなバカなんだろって思っちゃうのだ。でも、子どもの頃ってああいう奴いたよな。俺自身も、もしかすると、部分的にはあんな感じの男だったかも。
マルチェロは、仕事は一生懸命やってるし近所付き合いもよく、奥さんとは離婚してるみたいだけど、愛する娘とは会わせてもらっているわけで、慎ましくも幸福に生きている。
ただ一つの問題がシモーネの存在だ。シモーネはジャイアンがそのまま大人になったような男で、ジャイアンほど情もないクズ人間。であるから近所の人間たちもすごく迷惑してる。あんなめちゃくちゃな男がなぜ逮捕されないのか疑問だが、ともかく、マルチェロの友人たちもシモーネの迷惑&暴力行為をなんとかしたいと思ってた。そういうタイミングだったのに、あんな2秒でバレそうな犯罪に手を貸すマルチェロはアホすぎて、見てて悲しくなってくる。
しかも逮捕後、彼は口を割らないのだ。口を割ったら自分の分け前がもらえないからってのが大きな理由っぽいけど、分け前を貰えると思ってるところが、めでたすぎる。今まで散々、搾取されてきたのに。
で、出所後はそれなりに心境も変わって少し成長した彼は、シモーネへの復讐を行うわけだ。その計画もだいぶお粗末で、結局はシモーネを殺すことに。で、そのあと思い出したかのように友人たちに奴を始末したアピールをしようとする。
なんもかも後手にまわってる。ムショに入る前に、友人たちに助けを求めてればあんなことにならんかったはずなのに、彼の思考回路ではそういう発想は出てこないようだ。気の毒。てなことで、何とも悲しい哀れな結末をマルチェロは迎えることになるわけだ。
ただ、彼はシモーネの暴力怖さだけですべてに従っていたのではないようにも思える。口を割らなかったのはシモーネが怖いからってのもあるかもだが、それ以上に、分け前が欲しかったからだろう。彼は犯罪してでもいいから、金を手に入れて街から抜けだしたいという下心があったんだと思う。そういう解釈すると、マルチェロもけっこうなクズ人間なのだ。
イタリアの貧民街みたいな町の雰囲気がよく、犬も可愛いので、観て損はない作品。にしても、イタリアの人ってでかい犬好きなんかな? でかすぎる犬がたくさん出てきて驚き。
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